鉛蓄電池って何?仕組みや特徴、寿命などについて分かりやすく解説します

鉛蓄電池って何?仕組みや特徴、寿命などについて分かりやすく解説します

鉛蓄電池は1859年、フランスのガストン・プランテにより開発されました。

それ以来、自動車用バッテリーや電動フォークリフトなど、様々な場面で活用されてきています。

とはいえ、鉛蓄電池について、「名前は聞いたことあるけれどあまりよく知らない」という方が多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、鉛蓄電池について解説していきます。

仕組みや寿命、短所についても解説するので、是非最後までご覧いただければと思います。

それでは早速見ていきましょう。

鉛蓄電池とは?

仕組み

仕組み

鉛蓄電池は、充放電が可能な二次電池の一種。

正極には二酸化鉛 (PbO2)、負極には鉛 (Pb)、電解液には濃度30 %程度の希硫酸 (H2SO4)が用いられます、

充電時には正極で析出した硫酸鉛 (PbSO4)が二酸化鉛となる反応が起こり、負極では硫酸鉛が鉛となる反応が起こります。

  • 正極反応:PbSO4 + 2H2O → PbO2 + H2SO4 + 2H+ + 2e
  • 負極反応:PbSO4 + 2H+ + 2e→ Pb + H2SO4

充電時に硫酸鉛が二酸化鉛と鉛へ変化すると、鉛の酸化数は2価から4価と0価に変わります。

しかし、鉛は2価の状態が最も安定するため、放電時には上記の逆反応が円滑に進行するのです。

  • 正極反応: PbO2 + H2SO4 + 2H+ + 2e → PbSO4 + 2H2O
  • 負極反応:Pb + H2SO4 →PbSO4 + 2H+ + 2e

特徴

特徴

鉛蓄電池は以下3つの特徴を有しています。

  1. 一端子あたりの電圧が比較的高い
  2. 短時間で大きな電流を取り出せる
  3. 安価に製造可能

それぞれについて一つずつ解説します。

一端子あたりの電圧が比較的高い

一端子あたりの電圧は約2Vほど。3V以上の電圧を示すリチウムイオン電池には劣りますが、1.2V程度のニッケル水素電池やニカド電池と比較すれば高い電圧を示します。

高い電圧が必要な場面では、電池を直列に接続することで電圧を稼いでいます。

一端子あたりの電圧が高いほど必要な電池数が少なくて済むため、鉛蓄電池は高い電圧を得たい自動車用バッテリーに重宝されているのです。

安価に製造可能

電極の鉛は安価に入手できる金属です。

電池全体の製造価格が抑えられ、導入コスト面で他の二次電池を大きくリードしています。

リサイクル体制が整っている

1859年の開発から160年以上経過しており、電極のリサイクル体制が既に確立されています。

他の二次電池よりも再利用可能な部品が多く、環境にやさしい二次電池と言えるのです。

寿命

寿命

充放電反応の際に正極から二酸化鉛が剥がれ落ちたり、水が自然蒸発して失われたりすることで徐々に劣化していきます。

鉛蓄電池の寿命は、使用状況にもよりますが、バイクや自動車のバッテリーは3年程度、バックアップ電源としての使用なら20年程度と言われています。

もし過充電や過放電など電池にダメージを与える使い方をすれば、使用可能なサイクル数は減少してしまいます。

電池の寿命を延ばすためには使用頻度や使用状況を見直すことが必要です。

鉛蓄電池の短所

鉛蓄電池の短所は以下の3つ。

  1. 重量や体積が大きい
  2. 破裂時の危険が高い
  3. サルフェーションがある

以下で一つずつ解説していきます。

重量や体積が大きい

電極の鉛板や酸化鉛板が高密度なため、他の二次電池よりも重たいという欠点があります。

また、大電流を流すために電極面積を大きくした結果、それを覆う電池の体積も大きくなっているのです。

破裂時の危険が高い

電解液に硫酸を使用するため、電池の破裂時など液が外部へ流出した際に人体へ危険が生じます。

液漏れを防ぐために頑丈な設計となっていますが、それが鉛蓄電池を重たくする要因にもなっています。

サルフェーションがある

電池を長期間使用しなかったり、十分に充電しないまま使用したりすると、鉛負極の表面に硫酸鉛の結晶が発生して層を形成する「サルフェーション」が起こります。

硫酸鉛の層は電極を覆うため電極表面積を小さくし、充放電時に電気を流しにくくしてしまうのです。

”長期間乗っていなかった車のエンジンがかかりにくい”という場合、電極表面でこのサルフェーションが生じている可能性も。

こうした現象は鉛蓄電池特有であり、サルフェーションが深刻化すれば硫酸鉛層の除去は困難なためバッテリーを交換するしかありません。

活用例

鉛蓄電池の活用例として、まず自動車のエンジン始動時のバッテリーが挙げられます。

他にも非常時や災害時に備えた施設の予備電源として、また再生可能エネルギーを貯蔵する際にも用いられているのです。

私たちの普段の生活で鉛蓄電池を見かけることはあまり多くありません。しかし、このように見えない所で現代社会を下支えしてくれています。

最後に

鉛蓄電池に関する解説はこれで以上となります。

電池に関する様々な疑問を少しでも解消できれば幸いです。


参考文献

鉛蓄電池について<バッテリーの基礎知識>|インフューズ (infuse-net.com)
電池の活躍の場 | 一般社団法人 電池工業会 (baj.or.jp)
3 鉛蓄電池 坪田正温. 電気化学, 59, 9, 746-752 (1991)
鉛のリサイクルプロセス 大石敏雄. まてりあ, 35巻第12号, 1303-1306 (1996)
鉛蓄電池の技術動向 広瀬 義和, 近藤 悟. 電気学会誌, 134巻11号, 758-761 (2014)

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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