リチウムイオン電池の寿命は?劣化する要因や長持ちさせるコツについて解説します

リチウムイオン電池の寿命は?劣化する要因や長持ちさせるコツについて解説します

リチウムイオン電池は高いエネルギー密度や低い自己放電率、長いサイクル寿命を備えています。

スマートフォンやノートパソコンを始めとした携帯機器へ使用され、私たちの暮らしを見えない所で下支えしてくれているのです。

最近では電気自動車や人工衛星などへ搭載しようとする動きが盛んになっています。

ただし、リチウムイオン電池も無限に使えるわけではなく、他の二次電池と同様に「寿命」が存在するわけです。

この記事では、リチウムイオン電池の寿命について解説します。

リチウムイオン電池を長持ちさせるコツについても説明するので、是非最後までご覧いただければと思います。

それでは早速見ていきましょう。

リチウムイオン電池の寿命は2~3年(300~500サイクル)程度

リチウムイオン電池の寿命は2~3年(300~500サイクル)程度

リチウムイオン電池の寿命は使用条件により異なりますが、スマートフォン用では2〜3年程度と言われています。

満充電-完全放電を一つのサイクルとすると、300回〜500回程度の充放電サイクルを経ると著しく性能が衰えていくのです。

リチウムイオン電池の劣化のサインには以下の4つが挙げられます。

  1. 以前と比べて充電速度が遅くなった
  2. 充電時に電池が極端に熱くなる
  3. 使用時に電池容量がすぐ減少する
  4. 使用時に突然電源が落ちる

こうした状態になったら電池の寿命が近づいている証。バッテリーを交換したり使用条件を変えてみたりする必要があるでしょう。

次に、リチウムイオン電池の寿命を短くしてしまう使い方について解説します。

以下の使い方を回避すれば電池を長持ちさせられます。

リチウムイオン電池の寿命を短くする使い方

リチウムイオン電池の寿命を短くする使い方

リチウムイオン電池は

  1. 高温や低温環境での使用
  2. 過充電や過放電
  3. 満充電状態での長期保管

この3つによって劣化が早まります。

それぞれの要因が電池の寿命に影響する理由を一つずつ解説していきます。

高温や低温環境で使う

一般に、化学反応は温度が上がれば上がるほど反応速度も上がります。

したがって、リチウムイオン電池を高温環境で使用すると充放電反応速度が上がります。

しかし、使用環境が高温であればあるほど電池内で副反応(電解液の分解など)が起こりやすくなるのです。

その結果、電極表面の劣化を招き、リチウムイオンの電極への吸蔵ー脱離反応が起こりにくくなってしまいます。

また、低温環境で使用すると、電池内でリチウムイオンが動きにくくなります。

そのことが電池の内部抵抗を増加させ、電池容量の低下を引き起こしてしまうのです。

過充電や過放電

電池が既に容量100%なのに充電し続けることを「過充電」、逆に容量を使い切った状態で無理やり放電することを「過放電」といいます。

リチウムイオン電池は過充電や過放電により寿命を早めてしまいます。

この2つの状況は電池にとって”極限状態”に置かれているのと同様です。

電極に負担がかかったり副反応が発生してしまったりと電池内の状態が悪くなります。

満充電状態で長期保管する

リチウムイオン電池を100%充電すると、電極間に高い電圧が保たれた状態となります。

このまま長い間使わず保管すれば電極へ負荷がかかったままとなり、保管中に電極が徐々に劣化してしまうのです。

最後に、リチウムイオン電池を長持ちさせるコツについて解説します。

寿命を短くしてしまう使い方を避けつつ、長持ちさせる方法を実践することで、皆さんがお持ちのリチウムイオン電池を長く使っていただけます。

リチウムイオン電池を長持ちさせるコツ

リチウムイオン電池を長持ちさせるコツ

リチウムイオン電池は

  1. 充電しながら使わない
  2. 継ぎ足し充電をする

この2つによって長持ちさせられます。

それぞれについて一つずつ解説していきます。

充電しながら使わない

電池を充電中に使用すると電池に充電反応と放電反応を同時に行わせることとなり、電池へ非常に大きな負荷をかけ続けてしまいます。

充放電反応の同時進行は電池の温度上昇を引き起こし、副反応などによる電極材の劣化を招く可能性があるのです。

リチウムイオン電池を長持ちさせるには、充電しながら使わないことが一つ目のポイントです。

電池は使っていない時に充電を行い、なるべく負担の小さい形で使用してあげましょう。

継ぎ足し充電をする

容量がまだ残っているのに充電をすることを「継ぎ足し充電」といいます。

リチウムイオン電池を充電する際、使い切ってから充電するのではなく継ぎ足し充電すると寿命を延ばすことができます。

前述のように、電池は容量0%や100%といった極端な状態に脆弱です。電池材料へ負荷がかかって劣化を速めてしまいます。

(容量が減ってきたな)と思ったら充電をし、80%程度充電したら充電ケーブルを外して再度お使いになって下さい。

「継ぎ足し充電」と聞くとメモリー効果(電池容量が一次的に減ってしまう現象)が気になってしまうかもしれません。

しかし、リチウムイオン電池にはメモリー効果がありませんから、どうぞ安心して継ぎ足し充電を行って下さい。

最後に

リチウムイオン電池の寿命に関する解説はこれで以上となります。

皆さんの疑問解消の助けになれば幸いです。


参考文献

データに学ぶLiイオン電池の充放電技術 江田信夫, CQ出版社
リチウムイオン電池の劣化診断について(詳報)_No.23|お役立ち情報 (daiwa-can-ens.com)
デジタル生活で活躍するバッテリの劣化はなぜ起こるの? |テクの雑学|TDK Techno Magazine
電池ユーザーのためのリチウムイオン電池の基礎知識 | テクノロジー | 株式会社レフエレクトロニクス (refelectronics.com)
最近注目された「寒冷バッテリー切れ」について_No.20|お役立ち情報 (daiwa-can-ens.com)
第2回 リチウムイオン電池のメリットや充電時の注意点とは?スマホから自動車まで、さまざまなシーンで活用される理由を解説 | 村田製作所 技術記事 (murata.com)
How Long Does A Lithium Ion Battery Last? – Standard Battery (standardbatteryinc.com)

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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