最近、クリーンで環境にやさしい再生可能エネルギーとして「太陽エネルギー」が注目を集めています。
太陽エネルギーは人類が消費するエネルギー量の一万倍とも言われており、効率的に活用すれば現代社会が抱えるエネルギー問題を一挙に解決する可能性を秘めているのです。
ですが、太陽エネルギーを我々が使える形のエネルギーへ変える「太陽電池」についてはあまり知られていません。
そこでこの記事では、太陽電池について解説します。動作原理や長所、短所などを知りたい方にピッタリな内容です。
それでは早速見ていきましょう。
目次
太陽電池とは?
太陽電池とは、太陽エネルギーを電気エネルギーに変えるシステムのこと。電気を蓄えるリチウムイオン電池などの蓄電池と違い、受けた光を燃料として電気を生み出す”発電装置”というイメージです。
「太陽電池」と聞くと、皆さんは頭の中で”ソーラーパネル”を思い浮かべるかと思います。
ソーラーパネルは、
- 受けた太陽光を吸収し
- 吸収した光を電気エネルギーに変換する
この2段階で電気を生み出しています。
次の章では太陽電池の発電の仕組みについて解説いたします。していきます。
太陽電池の発電の仕組み
太陽電池は、
- n型半導体:電子が多い
- p型半導体:電子の不足している場所(正孔)が多い
という2種類の半導体を貼り合わせた二層構造となっています。
2つの半導体を貼り合わせると、n型半導体からp型半導体へ電子が移動します。その結果、半導体の接合部では電荷の打ち消された「空乏層」という領域が生じるのです。
空乏層に光が当たると、光エネルギーにより空乏層中の電子が励起します。
その電子は空乏層からn型半導体の方へと移動し、空乏層中の正孔はp型半導体の方へ移動します。
これら一連の電荷の動きが太陽電池に起電力をもたらしているのです。
様々な太陽電池
太陽電池には、
- シリコン系
- 化合物系
- 有機系
これら3種類が存在します。それぞれの特徴について一つずつ解説します。
シリコン系
現在日本でもっともよく用いられている太陽電池がシリコン系の太陽電池。低コストで製造でき、製造技術が確立されており、安定した発電性能と耐久性を誇るのです。
シリコン系太陽電池には主に①単結晶型、②多結晶型、そして③アモルファス(非晶質)型の3つが存在します。
それぞれの長所と短所を以下に表で示します。なお、表中の「変換効率」とは”光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率”のことです。
長所 | 短所 | |
単結晶型 | 変換効率が高い耐久性が高い | 製造コストが高い製造時の材料ロスが大きい |
多結晶型 | 製造コストが低い製造時の材料ロスが小さい | 単結晶型より変換効率が低い |
アモルファス型 | 軽い製造コストが低い | 多結晶型より変換効率が低い |
化合物系
化合物系太陽電池はシリコン系と違い、半導体を2種類以上の化合物を組み合わせて作った太陽電池のこと。ガリウムやヒ素、銅とインジウムとセリウムなど、様々な元素を混ぜて作られています。
化合物系太陽電池の特徴は高い発電効率。照射光量が少なくても高い発電効率を発揮することができます。ただし、製造コストが高く、シリコン系太陽電池よりも耐久性に欠ける点が課題です。
有機系
有機系太陽電池は、光吸収層に有機化合物を用いた太陽電池のこと。低コストで製造でき、なおかつ折り曲げたり色を付けられたりするなどデザインに自由度があるのです。
しかし、変換効率や耐久性の低さが課題として挙げられており、他のタイプの太陽電池と比較すると市場シェアは少なくなっています。
太陽電池の長所
太陽電池の長所は以下の3つ。
- ゼロエミッションな発電方法である
- 光熱費の削減・売電による利益を受けられる
- 非常用電源になる
以下で一つずつ解説します。
ゼロエミッションな発電方法である
太陽電池は発電時に太陽光という自然エネルギーを用います。
火力発電と違い、電力を生み出す際に二酸化炭素など温室効果ガスを排出せず、環境にやさしい発電方法です。
光熱費を削減できる・売電による利益を得られる
自宅や工場の屋根に太陽電池を設置すれば、光熱費を下げることができます。使用せず余った電気を電力会社に売ることで利益を得られる場合もあります。
非常用電源になる
震災などでライフラインが寸断されても、自家発電により電気を得続けられます。非常用電源として非常に有力な選択肢となりうるのです。
太陽電池の短所
太陽電池の短所は以下の3つ。
- 季節や気候により発電量が変化する
- 設置費用が高い
- 生態系を破壊するリスクがある
以下で一つずつ解説します。
季節や気候により発電量が変化する
太陽電池は晴天時に最も多くの電気を生み出しますが、雨天時や夜間は発電量が減ったり発電できなかったりします。発電量が不安定なので、太陽電池が生み出した電気を貯蔵する蓄電池が別途必要になるのです。
設置費用が高い
太陽電池は製造や設置に高い費用を要します。設置してから投資費用を回収するのに十年以上かかることがあり、定期的なメンテナンスを要する点も短所として挙げられるのです。
生態系を破壊するリスクがある
郊外へ大規模な太陽光発電施設を建設すると、野生動物の生態系のバランスを壊してしまうおそれがあります。景観の乱れや土砂災害の危険性などその他の影響も考えられ、ソーラーパネル設置の際は環境への影響を考慮することが重要です。
太陽電池の活用例
現在、太陽電池は現代社会の至る所で姿が見られます。中でも代表的な3つの活用例について一つずつ見ていきましょう。
電力の自家発電
太陽電池を家の屋根に設置することで自家発電を行うことができます。
また、余剰の電力は電力会社に売電することができるため、収益を得ることも可能です。一方で、夜間や曇天時は発電量が低下します。そのため、蓄電池を併用することでより高効率に太陽電池を利用できます。
家電製品
携帯電話やタブレット端末用のモバイルバッテリーを始め、太陽電池を搭載した家電製品が数多く開発されています。
こうした製品には蛍光灯の光からでも電気を作れる太陽電池が入っているため、屋内や悪天候時でも使用することができるのです。
航空宇宙産業
宇宙探査機や人工衛星にも太陽電池が使われています。地球と宇宙とでは太陽光のスペクトルが異なっており、電池材料を宇宙用に設計することで長期間劣化しないデザインを実現しているようです。
最後に
太陽電池に関する解説はこれで以上となります。皆様の疑問解消の手助けになれば幸いです。
菅製作所では、太陽電池以外の電池についても多く紹介しています。以下の記事にまとめてありますので、興味をお持ちの方はぜひご覧ください。
参考文献
太陽光発電パネルの種類の違い【シリコン系・化合物系・有機物系】 | 太陽光発電ログ|リース・ローンで格安一括比較見積 (taiyoukouhatudenrogu.com)
「単結晶」と「多結晶」の違いとは?シリコン系太陽電池を徹底比較! | 最安値発掘隊コラム (yhg.co.jp)
太陽光発電は夜でも利用できる?必要性や活用方法|太陽光発電・風力発電・スマートハウスの選び方をリベラルソリューションがご提案。 (liberal-solution.co.jp)