電池はパソコンやスマートフォンなどを始め、身の回りの至る所で我々の生活を支えてくれています。
皆さんは電池と言われると乾電池や蓄電池が思い浮かぶかもしれません。ですが、電池にはこれら2つ以外にも様々な種類があるのです。
この記事では、様々な種類の電池について解説していきます。
それぞれの電池の特徴や強みについても解説するので、参考にしていただけると幸いです。
それでは早速見ていきましょう。
目次
電池とは?
そもそも電池とは、電気エネルギーを取り出すための装置のことです。
電気を使いたい時に使いたい場所で取り出すために電池が活用されています。
なお、電池の中には電気を蓄えられないものが存在します。
具体的には燃料池や太陽電池。これらは火力発電や水力発電と同様、いわば発電装置として電気を生み出す電池のことです。
電池の種類は化学電池と物理電池に分けられる
次に、電池の種類について解説していきます。
電池は大きく分けて、化学電池と物理電池の2種類に分けられます。
化学電池とは、化学反応により物質の持つ化学エネルギーを電気へ変換する電池のこと。
化学電池は出力電圧が一定なため、搭載された機器へ安定的に電力を供給できます。
一方で物理電池とは、化学反応ではなく熱や太陽光を電気エネルギーに変換する電池のこと。
物理電池の中でも太陽電池は地球へ無尽蔵に降り注ぐ太陽光を利用するため、環境にやさしい再生可能エネルギーの活用例として最近注目を集めています。
それでは、化学電池と物理電池それぞれについて、どのような種類の電池があるか詳しく見ていきましょう。
化学電池
化学電池は
- 一次電池
- 二次電池
- 燃料電池
この3つに分けられます。
それぞれについて一つずつ解説します。
一次電池:貯めた電気を取り出せる電池
一次電池とは、貯めた電気を取り出せる電池のことです。
一度電気を取り出し切ると再び電気を貯めて使用できなくなる、いわば使いきりタイプの電池です。
一次電池の具体例としては
- アルカリ乾電池 (アルカリマンガン乾電池)
- マンガン乾電池
- 酸化銀電池
- リチウム一次電池
これらが挙げられます。
それぞれの電池について、特徴と活用場面を簡単に解説していきます。
アルカリ乾電池 (アルカリマンガン乾電池)
アルカリ乾電池はアルカリマンガン乾電池とも呼ばれ、現在最も知名度のある乾電池です。
容量が大きく大きな電流を取り出せるため、デジタルカメラや電動歯ブラシなど動作時に大きな電力が必要な機器へ搭載されています。
マンガン乾電池
マンガン乾電池は、安価で長持ちする乾電池です。
休ませると容量が回復することから、懐中電灯やリモコンなど、小さい出力を頻繁に要する機器へ主に搭載されています。
酸化銀電池
酸化銀電池は、エネルギー密度の高いボタン型の電池です。
あまり大きな電流を取り出すことはできませんが、容量が大きいため長寿命であり、さらに電池の容量がなくなる直前まで出力電圧が一定なことから、腕時計や精密機器へ使用されています。
リチウム一次電池
リチウム一次電池は、大容量かつ一次電池の中で最も高出力な電池です。
水分を含まない電解質を用いているため氷点下でも使えます。円筒形やボタン型、薄型など様々な形状に設計され、記憶媒体のバックアップ電源や電子手帳など幅広い場面で活用されています。
二次電池:何度も電気を貯めて取り出せる電池
二次電池とは、電気を何度も貯めたり(充電)-取り出したり(放電)できる電池です。
一次電池と違い、二次電池は何度も繰り返し使え、その活躍の場は急速に拡大していっています。
二次電池の具体例としては、
- リチウムイオン電池
- ニッケル水素電池
- 鉛蓄電池
これらが挙げられます。
それぞれについて、特徴と活用場面を一つずつ解説していきます。
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、軽量かつ超寿命、そして現在の二次電池の中で最も高出力な最先端の電池です。
電池に求められる特性を高いレベルで備えていることからパソコンや携帯機器など様々な場面で使われており、現在は電気自動車(EV)への適用が徐々に進みつつあります。
ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、二次電池の中では比較的容量が大きく、環境に有害な物質を含まない電池です。
これまでは工作機器など大出力が求められる場面で使用されていましたが、リチウムイオン電池の台頭以降は乾電池の代用としての役割が大きくなっているようです。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は、安価ながら出力電圧が比較的高く、大電流の放電も可能な二次電池です。
リチウムイオン電池の出現以前はEVへ搭載されていましたが、現在は車のバッテリーや非常設備のバックアップ電源など、中型・大型の蓄電装置へ主に使用されています。
燃料電池:ガスの供給により継続的に電気を生み出す電池
燃料電池とは、水素や酸素といった気体の”燃料”を供給し、電池内で生じる化学反応から電気エネルギーを得る電池です。
これまでご紹介した一次電池や二次電池と違って電気を蓄えておくことはできず、継続的にエネルギーを生み出すというのが大きな特徴となっています。
燃料電池は火力発電や水力発電とは異なり、供給した燃料を熱エネルギーや運動エネルギーなどに変換せず電気エネルギーへ直接変換します。
そのため発電効率が非常に高く、エネルギーロスを抑えて電気を得られるのです。
燃料電池の排出物はH₂O。環境に優しい電池です。
現在、家庭用発電装置や車への適用が徐々に進められており、騒音が少ないことから軍需産業でも注目を集めています。
物理電池
物理電池には
- 太陽電池
- 熱電池
- 原子力電池
主にこの3種類の電池があります。
それぞれの電池について、特徴と実用例を解説します。
太陽電池:光を電気に変える電池
太陽電池とは、太陽光や照明など、光を利用して電気エネルギーを生み出す発電タイプの電池のことです。
二種類の異なる半導体を貼り合わせた構造をとっており、光を浴びた際、半導体の接合面で電子と正孔が逆方向へ移動することで電気が生み出されます。
太陽電池の特徴は、太陽光という無尽蔵の資源を発電に用いている所です。
光がある限り無限に電気を作り続けられるため、環境に優しい発電方法として脚光を浴びているのです。
身の回りでは電卓や腕時計などで姿をよく見かけます。
工業的には空き地の有効活用例としてソーラーパネルの設置が普及しています。
熱電池:熱を電気エネルギーに変える電池
熱電池とは、高温を加えられて溶かされた固体電解質(溶融塩)を内蔵した一次電池のことです。
使用するときだけ高温とするため、一次電池ながら乾電池に見られるような自己放電は起こりません。
熱電池は短時間で極めて大きな出力を発揮するのが特徴です。
それに加え、幅広い温度で使用が可能であること、揺れや衝撃に強いことといった強みも備えています。
熱電池はロケットなどに搭載され宇宙空間で用いられるほか、水中用機器や航空機の非常電源など幅広い場面で用いられています。
原子力電池:放射性元素の崩壊時に生じる熱を電気に変える電池
原子力電池とは、炭素14やプルトニウム238など、放射性元素が崩壊するときに生じる放射線が持つ熱をエネルギーに変える電池です。
主に宇宙空間で活用され、高温な放射性物質と低温な宇宙空間の温度差から電力を生み出しています。
放射性物質は長期間放射線を出し続けるため、百年単位の長い寿命を誇るのが大きな特徴。
月面探査機や火星探査機など、簡単に電源を交換できない宇宙用装置の電源として活躍しています。
最後に
様々な種類の電池についての解説はこれで以上となります。
電池に関する疑問を少しでも解消できれば幸いです。
参考文献
しくみ図解シリーズ 電池が一番わかる 京極一樹, 株式会社技術評論社
化学・物理電池について | 一般社団法人 電池工業会 (baj.or.jp)
一次電池・二次電池とは?違いや構造を解説|テクの雑学|TDK Techno Magazine
電池のしくみ – パナソニック エナジー株式会社 (panasonic.com)
ニッケル水素電池の利点は何 リチウム電池より良いのか – TYCORUN ENERGY
電池の活躍の場 | 一般社団法人 電池工業会 (baj.or.jp)
燃料電池とは – 川田研究室 東北大学大学院環境科学研究科/東北大学工学部 Kawada lab., Tohoku University
燃料電池 – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア (nies.go.jp)
電気製鋼Vol.77 No.4 (jst.go.jp)
燃料電池とは | エネファームとは | 家庭用燃料電池(エネファーム) | Panasonic
太陽光発電 – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア (nies.go.jp)