本記事では、反応性スパッタリングについて解説します。どのような場面で使われるかから、特性、近年の研究までわかりやすくお伝えします。また、記事の後半では実際に成膜した例と写真を掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
今現在も活用されているスパッタリング法の一種ですので、薄膜に関心がある方だけでなく、半導体分野に関心をお持ちの方も必見の内容です。
反応性スパッタリングとは
反応性スパッタリングとは、金属ターゲットから金属原子をスパッタリングし、酸素や窒素などの活性なガスと反応させて薄膜を形成する方法です。酸化膜・窒化膜を成膜する際によく使われる方法で、高い融点を持つ薄膜を容易に形成できます。
特に窒化タンタル(TaN)は、安定で抵抗変化が少ない特徴があります。窒化タンタルは陽極酸化によって抵抗値の微調整も可能なため、用いられることが多いです。
反応性スパッタリングの特性
反応性スパッタリングには、以下のようなメリットがあります。
- 高純度化合物薄膜の製造に有利
- 膜の組成の調整により、膜特性を調整できる
- 比較的低い温度で成膜できるため、基板材料の制約が少ない
- 大面積でも均一に成膜可能なため、工業生産に向いている
連続スパッタ装置を使用したとしても、安定した生産が可能であり、大量生産向きな特徴を持ちます。ただし、薄膜推積速度は比較的遅いため注意が必要です。
反応性スパッタリングの最新研究と動向
株式会社ユーパテンターは、山口県産業技術センターと共に、新たな反応性スパッタリング装置を開発しました。
このスパッタ装置は、単結晶に近い窒化アルミニウムをステンレスに成膜可能であり、従来必要であったプロセスを短縮できる特徴を持ちます。これにより、コストダウンが図られるだけでなく、スマートフォンの表面弾性波フィルターへの応用も期待されています。
反応性スパッタの成膜例:窒化チタン(TiN)の成膜
成膜前 | 成膜後 |
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窒化チタンはバリア層としての役割を持つ薄膜です。反応性スパッタを利用して成膜すると、写真のように金色で硬いTiN膜が成膜できます。これは、スパッタされたチタンが窒化して起こる現象です。
窒素分圧比が高いと高い膜硬度を得られるのですが、膜が剥がれやすくなります。カット&トライを繰り返し、目的にあった最適な成膜条件を見つけることが必要です。こういった調整ができるのも、反応性スパッタの強みになります。
今回使用したスパッタ装置は「SSP1000」です。詳しい情報は以下のページにまとめてありますので、あわせてご覧ください。
SSP1000について詳しくみてみるまとめ
反応性スパッタリングは、金属原子と活性なガスを反応させて成膜する方法です。
膜特性の調整がしやすく、比較的低い温度で成膜可能、大面積でも均一に成膜できるなどのメリットを持ちます。大量生産に向いた方法です。
令和の時代に入ってからも、最新式の反応性スパッタ装置が開発されるなど、未だ第一線で使われ続けているスパッタリング法になります。
参考サイト
- https://newswitch.jp/p/39365
- https://www.geomatec.co.jp/column/sputtering.html
- https://www.ulvac.co.jp/wiki/process_g_keyword_reactive/
- https://ja.ikstechnology.com/info/mechanism-and-characteristics-of-reactive-magn-26823848.html
参考書籍
- はじめての薄膜作製技術
- 「薄膜」のキホン原子に迫る超微細・超高密度の世界
- トコトンやさしい薄膜の本