スパッタリング法の勉強は専門的で大変ですよね。専門書は難しく、身近に専門家も少ない場合、学ぶのは難易度が高いと思います。
そこで本記事では、スパッタリング法で重要になるスパッタ率についてわかりやすく解説します。スパッタ率そのものの説明や、左右される原因、確認と計算方法についてもお伝えしているため、成膜分野に関心をお持ちの方はぜひご覧ください。
スパッタ率とは、成膜速度に関係する割合のこと
スパッタ率とは、一個のイオンが何個の原子をスパッタするかという割合です。スパッタリング法は通常、イオンをターゲットにぶつけて原子を剥がし、基板に成膜します。その際、どれだけ効率的にスパッタできているかという指標がスパッタ率です。
スパッタ率が大きいと、少ないイオンの数でたくさんの原子をスパッタ可能です。つまり、省電力で速く成膜できます。
スパッタ率は主に以下の項目により左右されます。
- 入射イオンのエネルギー
- 入射イオンのターゲット材料
- 入射イオンの入射角
- ターゲット表面の結晶構造
通常はイオンをアルゴンにすることが多く、ターゲット材料により左右されることが一般的です。
スパッタ率の確認・計算方法
スパッタ率の確認は、スパッタされた原子の数を、照射されたイオンの数で割ることで求められます。式にすると以下の通りです。
スパッタ率=(スパッタされた原子の数)/(照射されたイオンの数)
スパッタされた原子の数は、ターゲット材料の質量がどれだけ減ったかで判断できます。したがって、照射前と照射後の質量の変化を測定する必要があります。
実際にはSRIMなどの計算ソフトを使用して求めることが多いです。ただし、先述したように入射角などにも左右されるため注意しましょう。
スパッタ率の高いターゲット一覧
ここでは、スパッタ率の高いターゲットを一覧で紹介します。Ar+の300eVを条件として見てみましょう。
ターゲット | スパッタ率(atoms/ion) |
---|---|
Ag | 2.20 |
Au | 1.65 |
Cu | 1.59 |
Pd | 1.41 |
Ni | 0.95 |
Laegeid,Wehner(1961)を基に作成
反対にスパッタ率が低いものは、Be(ベリリウム)で、0.29です。Agと比較すると10倍近く異なることがわかります。
こういったターゲットの選定も、成膜速度に関わってくるため、選定において重要な要素の一つです。
スパッタリングターゲットの選び方や種類・用途については、以下の記事で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
まとめ
スパッタ率は一個のイオンが何個の原子をスパッタするかという割合です。スパッタ率が大きいと、その分素早く効率的に成膜できます。
測定するには「スパッタ率=(スパッタされた原子の数)/(照射されたイオンの数)」で求められます。ただし、スパッタ率はイオンのエネルギー、ターゲット材料、入射角などにより左右される点には注意しましょう。
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参考サイト
- https://www.kochi-tech.ac.jp/library/ron/pdf/2010/03/40/a1110128.pdf
- https://www.ulvac.co.jp/wiki/process_g_keyword_yield/
- https://semi-net.com/word/
参考書籍
- スパッタ技術
- 「薄膜」のキホン
- 絵とき薄膜のきそ