皆さん、“TiN(窒化チタン)”って聞いたことがあるでしょうか?
チタニウムナイトライドの略ですが、一般的にティーアイエヌとかチタンナイトライドと呼ばれています。
半導体では主にSiO2等の酸化膜層に直接Cuを成膜すると溶け込んでしまうので、バリア層としてTiNを間に成膜します。
それとは別に、今回は切削工具等の寿命向上を狙ったTiN硬質皮膜についてお話しましょう。
このTiN成膜は高硬度で耐熱性に優れ、焼付け,溶損等を防止し切削工具の寿命を向上することができるそうです。
また、その他として耐摩耗エンジン部品やゴルフヘッドにも用いられるそうです。
膜の硬さが求められますが、同様に数回使ったら膜が剥がれてしまったら困りますから膜の密着力も重要なのでしょうね。
ゴルフヘッドに硬質皮膜のTiN成膜だなんて飛びそうなイメージですが、
どのような効果があるのでしょうね。やはり装飾用なのですかね?
Tiターゲットでアルゴンガスのみでスパッタリングすると想像通り、
銀色の金属色のチタン膜を成膜することができますが、
アルゴンガスに窒素ガスも加えるとあら不思議、
金メッキのように金ピカの非常に硬いTiN膜が成膜されます。
これは反応性スパッタの一つで、スパッタされたチタンが窒化して起こる現象です。
この膜はアルゴンガスに対する窒素ガス分圧比の増減で膜内部の残留応力が変化するのですが、
窒素分圧比が大きいと残留応力も大きくなり、膜硬度も高まる傾向にあります。
しかし、逆に残留応力が大きいと少しの衝撃で膜剥がれが起きてしまいますので、
カット&トライし、目的に合った最適な成膜条件を見つけることが必要となります。
今回は卓上型スパッタ装置 SSP1000 で反応性スパッタ法を使って
窒化チタンを成膜した一例をご紹介します。
成膜中の卓上スパッタ装置 SSP1000の様子です。
この時の条件はこんな感じ
成膜前のシリコンウエハの写真(銀色です)
成膜後のシリコンウエハの写真(金ピカになりました)
最後にマスキング用のテープを剥がしたところです。
しっかり色変化していることがわかりますね。
黒の点々は段差計を使用して膜厚を測定するポイントをマーキングしたものです。
SSP1000 卓上型スパッタ装置
注:本ページはSSP1000を使用した一例を示したものであり
色、硬度等の一切の膜質を保証するものではありません。
2版:2020/11/30
初版:2020/11/09