新世代の材料合成法といわれる放電プラズマ焼結法(Spark Plasma Sintering; SPS法)についてご紹介いたします。
技術解説 ~ 株式会社菅製作所 ~
1990年台後半から提唱され、2000年台に使用され始めた放電プラズマ焼結法(SPS; Spark Plasma Sintering)、パルス通電加圧焼結法(PECS; Pulsed Electric Current Sintering) 、電流活性化焼結法(ECAS; Electric Current Activated/Assisted Sintering)とも呼ばれる新世代の焼結法です。
従来の粉末冶金法である1930年頃から始まったホットプレス法、1960年台からのHIPと呼ばれる技術と比較するとまだ歴史が浅いと言えますが、従来焼結法では困難だった、できなかった領域の材料合成が可能となり、超高圧領域への応用や秒単位での焼結等材料合成法として年々進化をし続けています。
一般的な焼結法は外部のヒーター等で試料を加熱しますが、SPS法は試料または試料を充填した型に電流を流すことで、ジュール加熱により昇温することを特徴としています。電流をパルス状にすることで、従来焼結法にはない急速昇温、短時間焼結が可能となり、さらには材料の引張強度、硬度、坑折力等の向上、磁性材料の磁性特性、熱電材料の熱電特性の向上等々について数多くの論文が発表され、材料研究者、技術者たちの注目を浴びてきています。
従来焼結法にはない高性能・高品位の焼結体が合成できる
日本の研究者の発案であり、日本の企業が技術普及・事業を推進してきたSPSではパルス状の電流を通電して加熱いたしますが、パルス電流の通電が一般的な焼結法の『熱』と『加圧』という焼結の駆動力に加えて、SPS特有の電磁場の電気エネルギーや、粒間での放電の際のプラズマ現象の影響・効果があり、従来焼結法にはない高性能・高品位の焼結体が合成できる原因ではと考えられ、どんな現象がSPS焼結中に起きているのかを解明するための研究もおこなわれています。
電磁場による物質移動の促進、スパークプラズマの熱による温度上昇、ON/OFFパルス効果による急速昇温・急速冷却の効果等々、様々なパルス通電による効果が検討・議論され、実証試験を含めて、研究は進んできていますが、SPSのプロセスはこうなっているという結論には至っておりません。
パルス通電による電磁エネルギー的な何らかの効果があるというのが材料の研究者、物理・化学の研究者の中では定説となりつつあります。
まだまだ、未知の領域を含んでいる新世代の材料合成法、これからもどんどん進化をし続けていくのではないかとも考えられています。大きな可能性を秘めたSPS法について、次回はその利点と欠点・問題点について取り上げていこうと思います。