③放電プラズマ焼結法の問題点について

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放電プラズマ焼結法の問題点について解説します。

技術解説 ~ 株式会社菅製作所 ~

SPS焼結法は、従来焼結法ではできなかった焼結体が作製できること、短時間で焼結できるので生産コスト低減が可能であること、粉末冶金の経験・ノウハウがなくても目的とする性能・特性を持った焼結体を作製できる等々多くの特長を持っています。

しかし、従来焼結法にはなかった問題点も存在します。

(1)短時間昇温のため、特に大形の焼結体では、均質性が保てない場合がある。

(2)焼結条件のパラメーターが多く、広範囲な焼結条件があり、焼結条件を変えると焼結体特性が変わる。

(3)小径の焼結体と大径の焼結体では同じ焼結条件でも焼結体の性能・特性が変化する。

一般的には、上記3点が問題点として挙げられます。項目ごとに現象を説明していきます。

(1)短時間昇温のため、特に大形の焼結体では、均質性が保てない場合がある。

(1)の均質性が保てない。これは焼結法として、材料製造法として大問題です。

従来の焼結法では、温度によるこの問題を避けるため、炉全体が均熱になるように炉の断熱構造を工夫し、均熱に必要な熱容量を有した炉内で、ゆっくりと温度を上げて、保持時間を長くして、焼結体の中心部と外周部、厚み方向の中央部と両端部の温度差をなくし、焼結体の均熱性を確保する手法をとっています。

これに比べて、SPS焼結法では、焼結型が多少の保温の役割はあるといっても、焼結体の均熱を保てる熱容量ではありません。

さらに昇温速度は従来の電気炉の1 – 5℃/min. の20 -100倍の昇温速度である50-100℃/min. 以上の昇温速度を用いています。そして、通電加熱ですので、抵抗値の違いは発熱の違いとなって現れます。

このように説明すると、SPS焼結法では均熱焼結は困難なように見えますが、通電焼結のため抵抗値で発熱が変わることを応用して、温度の低い部分の抵抗を高くするあるいは逆の温度の高い部分の抵抗を少なくすることで積極的に温度の均質化を図ることが可能です。

焼結体各部の温度を計測し、その温度分布に合わせて型、スペーサー等の抵抗値を変えること(寸法による変化、抵抗率の違う型材質の選択等々の手法)により焼結体の温度の均質化が可能です。

さらには、型構造設計、焼結条件(昇温速度等々)を変えることでも温度分布は変わりますので、ゆっくり、じっくりと時間をかけて均熱するのではなく、積極的にダイナミックに温度の均質化を図ることができます。

特に大形の焼結体では焼結体の熱の不均質は発生しやすいので、多点温度測定による温度分布の測定や、平均温度、最高温度、最低温度を用いた温度制御を行う多点温度計測温度選択制御方式(MMCS方式 / Multi-temperature Measurement system with Temperature selection / average temperature calculation Control System) を使用した温度制御を提案しています。

(2)焼結条件のパラメーターが多く、広範囲な焼結条件があり、焼結条件を変えると焼結体特性が変わる。

(2)の焼結条件のパラメーターが多く、焼結条件を変えると焼結体特性が変わってしまうのは焼結条件を決定するのが難しく、試験数量が増えて大変であることは問題点といえるのですが、実はSPS焼結法の最大のメリットかもしれません。

従来焼結法では、昇温速度は使用する炉で決まっており、昇温速度がゆっくりですので、保持時間を変化させるのはあまり意味がなく、十分な保持時間をとっています。

(例えば、5℃/min.の炉で1200℃に昇温するには240min.=4時間ですので、降温時間も同程度必要ですから保持時間を30min. / 60min. にするのは全体の時間を考えるとあまり変化の意味がなく、60min. あるいは120min.の保持時間のいずれかひとつを選択します。つまり保持時間はパラメーターにはなりません。)

加圧力も焼結型の強度で決まりますので、2条件くらい、焼結温度を2条件として最大4条件程度です。ですので、焼結条件を変えると言ってもあまり幅がなく、出発原料粉末を変えることが一般的です。

密度を向上させるために、焼結をし易くする助剤を加える、粒成長が大きくなるような場合は、粒成長抑制剤、この結果として硬度の低下が起きれば、硬度が低下しないような添加剤、さらには強度をより向上させるための添加剤を加えて、 、 、と焼結体の性能・特性をよくしていくわけですが、このときに選択する添加剤の種類、分量をどうするか?どんな組み合わせにしたら必要な性能・特性が得られるか?あるいは、低下させてしまうのか?これらは粉末冶金の高度な知識と経験がなければわかりません。やみくもにいろんな組み合わせで実験しようとすると長い焼結時間ですから大変な時間と労力です。

このことから従来焼結法では必要な焼結体を作製するには粉末冶金の高度な知識と経験が必要とされています。

一方で、SPS焼結法では、焼結温度以外に昇温速度5 – 200℃/min. の範囲からの選択、昇温速度が大きいので、保持時間の選択も重要です。加圧力を変化させても、ON/OFFパルス比によっても焼結体の特性が変わります。昇温速度3条件、温度2条件、保持時間2条件、加圧力2条件、ON/OFFパルス比5条件としたら120通りの焼結条件があります。

その中から代表的な焼結条件の2-5条件で焼結し、焼結条件が変わると性能・特性が変わるのですから焼結体の性能・特性を調査・分析し、必要な性能・特性に近い焼結条件を絞り込んで、調査・分析を繰り返すことで、必要な性能・特性の焼結体を得られることが多く、このことがSPS焼結法を用いた焼結体/材料の開発の数多くの論文・特許を生み出す大きな原因の一つといえます。

(3)小径の焼結体と大径の焼結体では同じ焼結条件でも焼結体の性能・特性が変化する。

(3)の小径の焼結体の作製条件で大径焼結体を焼結しても同じ結果が得られない場合が多いということですが、従来焼結法では、炉の熱容量が大きく、焼結体の小径・大径の熱容量の違いは微々たるもので、時間をかけた昇温と保持時間で焼結体の大小にかかわらず均熱化が図れました。

SPS焼結法の場合、焼結型の大きさが変わるということは炉が変わるということですので、それぞれの炉の熱容量に合わせて昇温速度等の焼結条件により温度分布が生じます。

(2)で述べた小径/大径で焼結条件を適正なものに選択する、型構造・電気抵抗・焼結体の温度分布による熱均質化を図る方法により、それぞれの大きさでの焼結体にあった焼結条件・型構成を選択しなければ、おなじ性能・特性の均質な焼結体を得ることはできません。

換言すれば(2)の手法を用いることで、焼結体の大きさが変わっても必要な性能・特性の均質な焼結体を作製することが可能です。

SPS焼結法は従来焼結法に比べて再現性が高いということもあってすでに生産・量産手法として用いられていますが、今後ますます生産手法として、材料製造方法として、工業界で採用され、一般市場で流通する焼結商品の広がりが期待されています。

放電プラズマ焼結装置(SPS)

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北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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