燃料電池とは?仕組みや長所、活用例を解説します

燃料電池とは?仕組みや長所、活用例を解説します

環境にやさしい発電方法として、最近『燃料電池』が注目を集めています。

しかし、燃料電池と聞いてもパッとイメージできる方はもしかしたら少ないかもしれません。

そこでこの記事では、いま徐々に社会へ浸透しつつある燃料電池について解説します。

仕組みや長所、活用例も解説するので、是非最後までご覧いただければ幸いです。

それでは早速見ていきましょう。

仕組み

仕組み

燃料電池とは

燃料電池とは、水素と酸素を使って電気エネルギーを作り出すデバイスのこと。

化学反応によって電気を生み出す「発電装置」というイメージです。

燃料電池は、水素が供給される陽極(燃料極)、酸素を供給する陰極(空気極)、そしてイオンが移動する電解質の3つで構成されています。

水素や酸素を別々の極へ供給すると、燃料電池からは電気が得られ、反応生成物として水や熱が発生します。

従来の発電機との大きな違いは、電気を生み出す際に二酸化炭素や窒素酸化物を排出しないこと。

そのため、環境にやさしい電力源として最近注目されているのです。

種類

燃料電池には電解質の種類によって

  1. 固体高分子型燃料電池(PEFC)
  2. リン酸型燃料電池(PAFC)
  3. アルカリ型燃料電池(AFC)
  4. 溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)
  5. 固体酸化物型燃料電池(SOFC)

の5つに分けられます。それぞれについて一つずつ解説します。

固体高分子型燃料電池(PEFC)

PEFCは電解質に固体高分子膜(イオン交換膜)を用いています。

発電出力は50kW程度。作動温度は常温から約90℃です。

発電効率は30~40%。小型でコンパクトなのが特徴です。

家庭用、自動車、携帯機器など、様々な用途に使用されます。

リン酸型燃料電池(PAFC)

PAFCは電解質にリン酸(H₃PO₄)を用いるのが特徴です。

発電出力は最大でも1000kW程度で、約200℃で発電を行います。

発電効率は30〜40%。比較的小規模での発電が可能です。

病院、ホテル、ビルなど業務用で使用されています。

アルカリ型燃料電池(AFC)

AFCは水酸化カリウム(KOH)などのアルカリ電解質を使用します。

発電出力は数kWから数百kW。作動温度は常温〜150℃です。

発電効率は40〜50%。空気や燃料中の二酸化炭素により劣化してしまうため、定期的にメンテナンスする必要があります。

宇宙船用、潜水艦用など閉鎖空間での使用に適しています。

溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC)

MCFCは炭酸リチウム(Li₂CO₃)や炭酸ナトリウム(Na₂CO₃)を電解質に使用し、燃料として水素のほかに一酸化炭素を用います。

作動温度は約650℃。発電出力は1〜10万kWです。

発電効率は50〜60%。次にご紹介するSOFCと同じく、発電に触媒(白金など)が不要です。

工業用や発電施設など、多様な用途に使用されます。

固体酸化物型燃料電池(SOFC)

SOFCは安定化ジルコニア(ZrO₂+Y₂O₃)を電解質に使用し、燃料として水素のほかに一酸化炭素も使われます。

作動温度は約1000℃、発電出力は1〜10万kWです。

発電効率は40〜65%と比較的高め。家庭用や自動車用など、多彩な用途に使われます。

長所

長所

燃料電池の長所は3つあります。

  1. ゼロエミッション
  2. 高い発電効率
  3. 発電量を自在にコントロール可能

それぞれについて一つずつ解説します。

ゼロエミッション

燃料電池の排出物は水と熱が大半です。電力を生み出す際に二酸化炭素が発生せず、温室効果ガスの排出量がほぼゼロとなっています。

環境負荷が極めて少なく、クリーンなエネルギーとして注目されているわけです。

高い発電効率

火力発電のようにタービンを回すと摩擦熱などでエネルギーロスが生じます。

一方で、燃料電池は化学反応からダイレクトに電気を得られるため、他の発電方法と比較するとかなり高効率です。

また、反応副産物の熱を利用すればさらに効率を高められます。

発電量を自在にコントロール可能

燃料電池は燃料となるガスを極へ供給している間だけ発電ができます。

必要な電気を必要な分だけ安定的に作り出せるのです。

短所

短所

燃料電池の欠点は以下の2つ。

  1. 高コスト
  2. 水素の製造や貯蔵の問題

それぞれについて一つずつ解説します。

高コスト

電極表面へ触媒の担持が必要なタイプ(PEFC、PAFC、AFC)は高価な貴金属を使用します。

したがって、従来の発電機と比較し、燃料電池の製造時に高いコストがかかります。

水素の供給や貯蔵の問題

現在の所、水素は化石燃料の改質や再生可能エネルギーを利用した水電解法などから作り出されています。

しかし、今後、水素を中心とした街づくりをしていくにはまだまだ供給量が不足しているのです。

また、製造した水素を入れたり吸蔵させたりして貯蔵する際、容器の安全性や重量面で技術的に未解決な課題があります。

燃料電池の普及のため克服すべき課題が山積している状況です。

活用例

燃料電池は自動車や家庭への電力供給に使用されています。

以下でそれぞれについて解説します。

燃料電池車

燃料電池車とは、車へ燃料電池を搭載し、電池内の化学反応により生み出された電気を用いて走る車です。

ガソリン車と違ってゼロエミッション、電気自動車と比較して圧倒的に早く充填が完了するといったメリットを備えています。

家庭用発電機

最近ではPanasonicの「エネファーム」をはじめ、家庭用の燃料電池が少しずつ普及しつつあります。

発電効率の高さから光熱費を抑えられ、温室効果ガスを排出しないことから環境負荷の小さな生活が実現します。

最後に

燃料電池に関する解説はこれで以上となります。

皆様の疑問解消の助けになれば幸いです。


参考文献

燃料電池の種類 (tohoku.ac.jp)
燃料電池のしくみ・特徴|中国電力 (energia.co.jp)
燃料電池 – 環境技術解説|環境展望台:国立環境研究所 環境情報メディア (nies.go.jp)
燃料電池とは | エネファームとは | 家庭用燃料電池(エネファーム) | Panasonic
ホンダの新型燃料電池システム、生産性向上でコストを3分の1に | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
次世代エネルギー「水素」、そもそもどうやってつくる?|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
~特集~ 水素社会は本当に実現するのか (smfg.co.jp)

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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