ダイオードは、電流を一方向にしか流さない半導体素子で、電気の流れをコントロールするのに使います。LED(発光ダイオード)もダイオードの一つです。
ダイオードは、トランジスタやIC(集積回路)と同じ「能動部品」として、電気製品の中でとても重要な役割を果たしています。
この記事では、そんなダイオードの基本的な知識についてまとめました。
目次
ダイオードの仕組み
ダイオードの秘密は「pn接合」です。p型とn型と呼ばれる2種類の半導体材料を接合させたものです。
- P型:正の電荷を持つ「ホール」が多い領域
- N型:負の電荷を持つ「電子」が多い領域
このpn接合には、「バリア」と呼ばれる壁が存在します。このバリアは、まるで水路の段差のように、電子の流れを一方通行に制限します。これが、ダイオードが一方通行の電気の通り道となるのです。
ダイオードの役割
ダイオードは、その整流特性やスイッチング特性を生かして、様々な用途で使用されています。主な用途は以下のとおりです。
- 整流:交流(AC)を直流(DC)に変換する(ACアダプタ、整流器など)
- 過電流保護:回路を過電流から保護する(電源回路など)
- 電圧制御:電圧を一定に保つ(電源回路など)
- 検波:無線信号から音声や映像を取り出す(ラジオ、テレビなど)
- 発光:LED(発光ダイオード)として光を発生させる(照明、ディスプレイなど)
このように、ダイオードは私たちの生活の中で様々な役割を果たしているのです。
ダイオードの種類4つ
①一般整流ダイオード
pn接合を利用したダイオードです。主に電源からの電気を整えるために使われ、たとえば、交流電源(電気がプラスとマイナスに交互に変わる電気)を直流電源(電気が一定方向に流れる電気)に変えるのに役立ちます。商用電源の整流(交流→直流の変換)で活躍し、高耐圧です。
②ファストリカバリダイオード(FRD)
一般整流ダイオードと同じ作りと機能を持っていますが、違いもあります。一般整流ダイオードは普通の周波数(電気の波の振動)で使うのに向いていますが、ファストリカバリダイオードはもっと速い周波数で使うのに向いています。「逆回復時間(trr)」が短い、つまり電流が逆方向に流れる時間がとても短いという性質があるからです。
③ショットキーバリアダイオード(SBD)
高速スイッチングが可能なダイオードで、太陽光発電や電子機器などに使用されます。
普通のダイオード(一般整流ダイオード)は、PN接合と呼ばれる部分でできていますが、ショットキーバリアダイオードは「金属」と「N型半導体」という材料でできています。この違いのおかげで、ショットキーバリアダイオードは次のような特徴を持ちます:
- 高速:電気をとても速く通すことができます。これが大きな特徴で、高周波(短い時間で電気が変わるような電流)にも対応できます。
- 低い電圧降下:電気が通るときの抵抗が小さいので、エネルギーをあまり失わずに電気を通すことができます。
たとえば、コンピュータやスマートフォンなどの電子機器では、電気の流れをとても速く切り替える必要があります。そんなときに、ショットキーバリアダイオードが役立ちます。
簡単に言うと、ショットキーバリアダイオードは、電気を一方向に素早く通すことができる特別なダイオードです。普通のダイオードよりも速くて効率的なので、特定の用途でとても便利に使われます。
④フォトダイオード
光を当てることで電流が流れる仕組みで、カメラの画像センサー・光通信での光信号検出・DVDプレーヤーのピックアップなど、私たちの身の回りで幅広く使われています。PN型、PIN型、APD型などがあり、それぞれ感度や応答速度が異なります。
青色LEDの誕生秘話:ノーベル物理学賞と3人の日本人たち
青色LEDは、私たちの生活を大きく変える発明でした。青色LEDは、世界の電力消費を20%近くも減らす可能性があるとされています。
青色LEDのおかげで、いまではスマートフォンやコンピューターの画面、省エネ電球など、たくさんの製品が登場しました。
2014年には、青色LEDを発明をした3人の日本人科学者がノーベル物理学賞を受賞しました。この賞が実用的な発明に贈られるのは非常に珍しいことだといわれています。
赤色や緑色のLEDは1950年代に作られましたが、青色LEDの開発はとても難しかったため、長い間成功しませんでした。
青色LEDが作られたのは1990年代になってからで、名古屋大学の赤﨑勇氏(現 名城大学教授)と天野浩氏、そして日亜化学工業の中村修二氏(現 カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授)によって独自に開発されました。
LEDは、サンドイッチのように半導体材料の層を重ねた構造をしています。この構造に電圧をかけると、光が出る仕組みになっています。
青色LEDを作るために、科学者たちは窒化ガリウム(GaN)という材料に注目しましたが、この材料はとても扱いが難しいものでした。
赤﨑・天野・中村氏は、この困難な材料にこだわり続け、ついに青色LEDを作り出しました。いまでは青色LEDのおかげで、従来の電球よりも20倍も効率の良い白色LEDが生まれました。
青色LEDの開発には、実は困難な物語もありました。
中村氏は、日亜化学工業で青色LEDを発明した際の報酬が少なすぎるとして会社を訴えました。この裁判は、2005年に日亜化学が中村に8億4000万円を支払うことで和解しました。青色LEDの発明は、科学者たちの強い信念と努力のおかげで実現したのです。
まとめ
ダイオードの仕組みのヒミツは「pn接合」
- 一般整流ダイオード
- ファストリカバリダイオード(FRD)
- ショットキーバリアダイオード(SBD)
- フォトダイオード
- 整流:交流(AC)を直流(DC)に変換する(ACアダプタ、整流器など)
- 過電流保護:回路を過電流から保護する(電源回路など)(FRD)
- 電圧制御:電圧を一定に保つ(電源回路など)
- 検波:無線信号から音声や映像を取り出す(ラジオ、テレビなど)
- 発光:LED(発光ダイオード)として光を発生させる(照明、ディスプレイなど)
ダイオードは、小さく目立たない部品ですが、私たちの生活の中で様々な役割を果たしています。これからも、ダイオードは様々な電気製品で活躍し続けることでしょう。
【参考資料】