半導体メモリの基礎知識 | 役割と主な種類について解説

半導体メモリ(semiconductor memory)とは、電気を使ってデータを記憶する装置のことです。磁気ディスクや光ディスクと比べると、

  • データの読み書きが速い
  • たくさんのデータを保存できる
  • 消費電力が少ない
  • 振動に強い

といった特徴があります。

半導体メモリの技術は日々進化しており、新しい発見や改良が行われています。それを理解することで、将来の技術や職業にもつながる可能性があります。例えば、エンジニアや研究者として働く場合、半導体メモリの知識が役立つことは間違いありません。

つまり、半導体メモリは私たちの現代社会において欠かせない技術であり、その仕組みや進化について理解することは、技術革新に貢献するだけでなく、個々のキャリアや日常生活にも大きな影響を与える重要な要素です。

この記事では、そんな半導体メモリについて、基本的な知識を整理しました。

半導体メモリの種類

メモリにはさまざまな種類がありますが、大きく分けると揮発性メモリと不揮発性メモリの2つがあります。これらの違いは、電源を切ったときにデータが保存されるかどうかです。揮発性メモリは電源を切るとデータが消え、不揮発性メモリは電源を切ってもデータが残ります。

①RAM(揮発性メモリ)

揮発性メモリの中で代表的なものはRAM(Random Access Memory)です。RAMはデータを自由に書き換えることができますが、電源を切るとデータが消えてしまいます。

DRAM

「DRAM」は、揮発性の半導体メモリの一種で、「Dynamic Random Access Memory」の頭文字を取った名前です。読み方は「ディーラム」です。DRAMは、トランジスタとコンデンサーを使ってデータを記憶します。コンデンサーは電気をためる働きがあり、電気がある状態を「1」、ない状態を「0」としてデータを記録します。このとき、コンデンサーに電気を流すスイッチの役割を果たすのがトランジスタです。

しかし、DRAMは電源が切れた状態でも電気が少しずつ漏れてしまいます。電気が漏れるとデータが正しく読み取れなくなるため、パソコンの電源を切るとメモリのデータが消えてしまいます。そこで、DRAMは動いている間は定期的にデータを書き直す(リフレッシュする)ことで、電気の漏れによるデータ消失を防いでいます。

SRAM

SRAM(Static Random Access Memory)は、DRAMとは違ってデータを保持するためにリフレッシュを必要としないメモリです。そのため、DRAMに比べて消費電力が少なく、データの読み込みも速くできます。しかし、構造が複雑なため、製造コストが高くなります。SRAMはフリップフロップ回路という仕組みを使うことで、リフレッシュなしで低消費電力を実現しています。

②ROM(不揮発性メモリ)

不揮発性メモリであるROMとは、データの書き込みができず、読み出し専用のメモリのことです。ROMは、電源を切っても記憶されたデータが消えずに保持される特徴があります。

PROM

PROM(Programmable Read Only Memory)は、電源を切ってもデータが消えない不揮発メモリの一種です。PROMは、専用の装置を使ってデータを書き込むことができるROMです。出荷時にはデータが入っておらず、フォトマスクの製造を必要としないため、マスクROMと比べて短い納期で使用できます。

PROMには、書き込みが一度しかできないOTPROM(One Time PROM)と、何度も書き込みができるEPROM(Erasable PROM)があります。

UV-EPROM

UV-EPROMは、何度もデータを書き換えられるEPROMの一種です。「UV」は紫外線を意味しており、紫外線を当てることでデータを書き換えます。そのため、専用の紫外線装置が必要です。

以前は、PICのようなマイクロコントローラにUV-EPROMが内蔵されており、これらにはガラス窓が付いていました。しかし、現在では多くの内蔵不揮発性メモリがフラッシュメモリに変わっています。

UV-EPROMのほとんどは製造が中止されていますが、中古品などの在庫はまだ豊富にあり、今でも手に入れることはできます。しかし、新しい製品にはほとんど使われていないため、現在では過去の製品の保守や電子工作に使われることが多いです。

EEPROM

EEPROMは、何度もデータを書き換えられるEPROMの一種です。EEPROMは電気を使ってデータを書き換えます。UV-EPROMと違って、特別な装置がいらないのが便利です。

しかしEEPROMには欠点があり、一部分のデータを変更できないため、データを全部消してから書き直す必要があります。

フラッシュメモリ

フラッシュメモリは、EEPROMの問題点を解決した記憶装置です。データの書き込みや読み出しを行うことができます。主にメモリカードなどの補助記憶装置として使われます。

フラッシュメモリには、回路の形が異なる「NAND型」と「NOR型」があります。NAND型は書き込みが速くて大容量にできる特徴があります。一方、NOR型は読み込みが速く信頼性が高いとされています。

マスクROM

マスクROMは、集積回路の配線によって記憶情報を作り、読み出せる内容が固定されるメモリです。この固定された内容は、半導体製造に使うフォトマスクによって決まります。

一般にはCPUの主なメモリとして使われますが、外部の記憶装置としても使われることがあります。マスクROMは大量生産時にチップの価格を抑えられるので、ゲーム機のソフトや組み込み機器など、多くの製品に使われています。

まとめ

半導体メモリは、デジタル技術の発展において中心的な役割を果たしてきました。これまでの歴史では、初期のDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ)から始まり、メモリの容量や速度が飛躍的に向上しました。1960年代には1ビット当たり数千円という高価な価格から、現在では極めて安価で大容量なメモリが普及しています。

現在、半導体メモリの進化は、さらなる高密度化と低消費電力化に向けて進んでいます。

主要なトレンドとしては、フラッシュメモリのNAND型とNOR型の技術があります。NAND型は大容量でコスト効率が良く、主に補助記憶装置として使用されています。一方、NOR型は高速で信頼性が高く、主にマイクロコントローラや組み込みシステムでの使用が見られます。

将来的には、より高速でエネルギー効率の良いメモリが求められています。さらなるモバイルデバイスの普及や、人工知能(AI)やビッグデータ処理の需要増加に応じて、メモリ技術の革新が進むことが期待されています。特に、3D積層技術や新たな材料の導入により、今後も半導体メモリは急速に進化し、情報技術の発展に貢献していくでしょう。

【参考資料】

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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