【徹底解説】半導体材料シリコン | 産業技術の基盤となる驚異の素材

シリコンは、酸素と結びついて「二酸化ケイ素(シリカ)」として自然に存在しています。ケイ素は地殻に最も多く存在し、酸素に次いで2番目に多い元素といわれています。地球上で酸素の次に多い元素で、多くは土や岩石に含まれていますが、天然の水や植物などにも含まれています。資源量・埋蔵量は非常に多いく、なくなる心配がありません。

そんなシリコンは、古くから半導体の材料として使われてきました。

半導体の材料にシリコンを使う発想は、1950年代の「ベル研究所」にまでさかのぼることができます。当時ベル研究所は、トランジスタの整流を研究しており、その思索のすえに、シリコンデバイスこそ理想であるという結論に至りました。

1959年に、複数のトランジスタを一つのチップに集積したIC(集積回路)が発明され、半導体産業は大きく発展しました。その発展を支えたのが、まさにシリコンだったわけです。

このICの登場により、従来の半導体に比べてはるかに小型化や軽量化が可能となり、さまざまな電気製品で広く利用されるようになりました。1967年には、電子式卓上計算機(電卓)が市場に登場しました。その後、日本国内でも電子機器メーカーが次々と電卓を発表し、激しい「電卓戦争」が展開されました。

みなさんも、アメリカの「シリコンバレー」という地名をご存じでしょう。もともとシリコンバレーは、半導体産業で急成長した場所であり、まさに半導体材料「シリコン」(Silicon)とサンタクララ近郊の「渓谷」(Valley)に由来しているのです。

シリコンは、情報産業になくてはならない存在です。この記事では、そんなシリコンについて基本的な知識を整理し、ご紹介します。

シリコンは主流の半導体材料

半導体を作るとき、まずは「ウエハ」という円盤状の材料を作ります。ウエハには「元素半導体」と「化合物半導体」の2種類があります。ほとんどの半導体製品には元素半導体が使われ、その中でもシリコン(ケイ素)から作る「シリコンウエハ」が主流です。

シリコンは加工しやすくて安定しているうえ、化合物半導体よりもコストが低いという利点もあります。こうした多くの利点があるため、ほとんどの半導体はシリコンを原料として作られています。昔はゲルマニウムが半導体の材料として使われていましたが、今ではシリコンが一般的です。

半導体材料にシリコンが選ばれる理由

1. 豊富に存在する

シリコンは、地球の地殻にたくさん含まれている元素です。岩石や砂、植物、水などに多く含まれていて、地球上で酸素の次に多い元素です。そのため、シリコンは資源が豊富で、なくなる心配がありません。

2. 加工しやすい

シリコンは加工しやすい材料です。形を変えたり、細かい作業をしたりするのが比較的簡単なので、半導体を作るのに適しています。

3. 安定している

シリコンは化学的に安定していて、長い間使っても変質しにくいです。これにより、シリコンで作られた半導体は信頼性が高くなります。

4. コストが低い

シリコンは、ほかの半導体材料と比べてコストが低いです。シリコンが豊富に存在し、加工しやすいため、半導体の製造コストを抑えることができます。

5. 高性能

シリコンは、電気を通す能力や熱に対する耐性が高く、半導体材料としての性能が優れています。これにより、高性能な電子機器を作ることができます。

シリコンを使った半導体の種類

①シリコンダイオード

P型とN型の半導体を結びつけて作られ、一方向にだけ電流を流しやすくする特性があります。この特性により、交流を直流に変換する整流作用が可能です。

シリコンダイオードはIT機器や電化製品に広く使われており、高速スイッチングが可能で低コストです。そのため、さまざまな電子機器において重要な部品となっています。

②シリコントランジスタ

トランジスタは、電気の力を強くしたり、スイッチの役割を果たしたりする部品です。最初のトランジスタは、ゲルマニウムでできていました。

しかし、ゲルマニウムは約80℃で壊れやすいという問題がありました。そのため、今ではほとんどのトランジスタがシリコンで作られています。シリコンは約180℃まで耐えることができます。

③MOSFET

MOSFETは、電界効果トランジスタ(FET)に金属酸化膜半導体(MOS)を組み合わせたもので、一種のトランジスタです。

このトランジスタの基本的な働きは、スイッチのオンとオフ、そして電気信号の増幅です。FETとは電界効果トランジスタのことで、その中でもMOS(金属酸化物半導体)構造を持つものがMOSFETと呼ばれます。

半導体であるシリコンの表面に酸化膜を形成し(SiO2という物質)、その上に金属電極を取り付けた構造をしています。

④IGBT

IGBTもシリコンを使って作られた半導体製品です。MOSFETとバイポーラトランジスタを組み合わせており、それぞれの欠点を補うように設計されました。

IGBTはパワー半導体の一種で、車載用から産業機器、家庭用までいろいろなところで使われています。例えば、電車やHEV(ハイブリッド電気自動車)やEV(電気自動車)などの大きなモーターを制御するためのインバーターや、UPS(無停電電源装置)、工場の電源制御、家庭のIH調理器具などに使われています。

まとめ

  • シリコンは主流の半導体材料
  • 半導体材料にシリコンが選ばれる理由
    1. 豊富に存在する
    2. 加工しやすい
    3. 安定している
    4. コストが低い
    5. 高性能
  • シリコンを使った半導体の種類
    1. シリコンダイオード
    2. シリコントランジスタ
    3. MOSFET
    4. IGBT

シリコン半導体は、その高い信頼性と性能のために現代社会において広範な応用が見られます。デジタル技術の発展やエネルギー革新、産業の効率化、医療の進歩など、様々な分野での革新を支え、私たちの生活をより便利で持続可能なものにしています。今後もシリコン半導体技術の進化が期待され、さらなる社会の進歩に寄与することが期待されています。

【参考資料】

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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