スマートフォンで手軽に世界中の情報にアクセスしたり、AIスピーカーに話しかけて様々なことをお願いしたり、自動運転車が街中を走る時代になりました。
これらの技術の根底を支えているのが、半導体チップという小さな部品です。
半導体チップは、シリコンなどの半導体材料を基盤とし、微細な回路パターンを形成することで、複雑な電子回路を一体化したものです。トランジスタと呼ばれる素子を無数に集積することで、情報処理や制御といった高度な機能を実現しています。
この記事では、わたしたちにとって身近な存在でありながら、実はあまり知られていない「半導体チップ」について解説します。
半導体チップとは?その特徴について
半導体チップは、シリコンなどの半導体材料を基盤とし、微細な回路パターンを形成することで、複雑な電子回路を一体化したものです。トランジスタと呼ばれる素子を無数に集積することで、情報処理や制御といった高度な機能を実現しています。
私たちの身の回りにあるスマートフォンやパソコン、そして自動車や家電製品など、ほとんど全ての電子機器の中に半導体チップが使われています。
半導体チップの製造技術は、日々進歩しており、トランジスタの数は年々増加しています。この技術革新により、スマートフォンやパソコンなどの電子機器は、ますます小型化・高性能化し、私たちの生活に不可欠な存在となっています。
半導体チップの用途
スマートフォンやタブレット
電話をかける、インターネットで検索する、ゲームをするなど、私たちの日常に欠かせないスマートフォンやタブレット。これらの端末の中には、ディスプレイ表示、カメラ撮影、アプリの処理など、一つ一つの機能を司る無数の半導体チップが搭載されています。
パソコン
仕事や学習、娯楽など、私たちの生活を豊かにするパソコン。CPUと呼ばれる半導体チップが、パソコンの中心的な役割を担い、様々な計算や処理を行っています。
家電製品
テレビで好きな番組を見たり、冷蔵庫で食品を保存したりするのも、半導体チップのおかげです。家電製品は、温度調節、画像処理、動作制御など、様々な機能を半導体チップで実現しています。
自動車
自動車は、もはや単なる移動手段ではなく、私たちの生活をより快適にするための様々な機能を搭載しています。エンジン制御、ブレーキ制御、ナビゲーションシステムなど、これらの機能は、全て半導体チップによって支えられています。
医療機器
MRIやCTスキャンといった医療機器から、ウェアラブルデバイスまで、医療の現場でも半導体チップは欠かせません。患者の診断や治療をサポートし、医療の質の向上に貢献しています。
産業機器
工場での生産ラインや、物流センターでの仕分け作業など、様々な産業において、半導体チップは自動化や効率化に貢献しています。
半導体チップの種類と役割
半導体チップは、種類によって様々な役割を担っており、それぞれが高度な技術の結晶です。
①マイクロプロセッサ(MPU)
コンピューターの「脳」に当たる部分で、全ての計算や制御を行います。パソコンやスマートフォンの動作を支え、複雑な処理を高速で行います。
②マイクロコントローラ(マイコン)
家電製品や自動車など、組み込みシステムでよく使われます。センサーからの情報を元に、モーターを制御したり、温度を調整したりといった、特定の機能に特化した処理を行います。
③GPU(グラフィックスプロセッサ)
画像処理に特化したプロセッサで、ゲームや動画編集など、高画質な映像を扱う際に威力を発揮します。近年では、人工知能の学習にも活用されています。
④DSP(デジタルシグナルプロセッサ)
音声や画像などのデジタル信号を処理するのに特化したプロセッサです。音声認識や画像処理、通信システムなど、様々な分野で利用されています。
⑤FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)
ユーザーが自由に回路を設計できる半導体で、プロトタイプ開発や特定の機能に特化したハードウェアの開発に利用されます。
⑥通信モデムIC
スマートフォンやパソコンをインターネットに接続するために必要なICです。無線通信の際に、デジタルデータを電波に変換したり、その逆の変換を行ったりします。
⑦アナログIC
アナログ信号を処理するICです。音や温度など、連続的に変化する信号をデジタル信号に変換したり、増幅したりします。
⑧電源IC
電子機器に安定した電力を供給するためのICです。バッテリーから得られた電力を、各部品が使えるように調整します。
⑨DRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)
パソコンのメインメモリとして使われることが多いメモリです。一時的にデータを保存し、CPUが頻繁にアクセスするデータの読み書きを行います。
⑩NAND型フラッシュメモリ
スマートフォンやデジタルカメラの内部ストレージとして使われることが多いメモリです。データを長期間保存でき、電源を切ってもデータが消えません。
チップ、半導体、集積回路の違い
いたるところで、「チップ」「半導体」「集積回路」という言葉を目にします。どれもなんとなく意味は通じるのですが、区別が曖昧な方もいるのではないでしょうか。
以下にそれぞれの言葉の意味の違いを紹介します。知っておくとスッキリしますし、半導体を学ぶときにより理解度が深まりますよ。
先に要約すると、次のようになります。
- チップ:電子機器の中にある小さな部品の総称。
- 半導体:チップを作るための材料。
- 集積回路:半導体を使って作られた、たくさんの電子部品が一つに集まった回路。
チップ
チップは、コンピューターやスマートフォンなど、様々な電子機器の心臓部とも呼ばれるものです。非常に小さな基板の上に、たくさんの電子部品がぎゅっと詰まっています。このチップのおかげで、電子機器は複雑な計算や処理を行うことができるのです。
半導体
チップを作るために使われる材料を「半導体」といいます。半導体は、電気を通しやすい導体と、電気を通しにくい絶縁体のちょうど中間のような性質を持っています。この性質を利用して、電気を流したり止めたりすることで、様々な電子回路を作ることができます。
集積回路
集積回路とは、半導体を使って作られた、たくさんの電子部品が一つに集まった回路のことです。つまり、チップは集積回路を載せたもの、と考えてもいいですね。集積回路のおかげで、電子機器は小型化され、高性能になりました。
半導体チップの製造工程
半導体チップは、私たちの身の回りの電子機器に欠かせない小さな部品です。この小さなチップは、どのようにして作られているのでしょうか?
1. 設計:設計図を作る
まず、半導体チップの設計図を作成します。たとえるなら、建築家が建物の設計図を描くようなものです。設計図には、チップの中にどのような回路を組み込むか、どのくらいの大きさにするかなどが詳細に書かれています。
2. ウエハー作製:半導体の土台を作る
次に、半導体チップの土台となるウエハーを作ります。ウエハーは、シリコンという物質でできた薄い板で、この上に回路が作られます。
3. 回路を印刷する:回路パターンを作る
ウエハーの上に、電子回路の設計図どおりのパターンを印刷していきます。これは、まるで写真を現像するような工程です。
4. 部品を組み立てる:電子部品を組み込む
印刷された回路の上に、トランジスタや抵抗器などの電子部品を組み込んでいきます。この工程は、とても繊細で、小さな部品を正確な位置に配置する必要があります。
5. 検査:完成品をチェックする
組み上がったチップに不良品がないか、しっかりと動作するかを検査します。
6. パッケージング:チップを保護する
検査に合格したチップは、プラスチックなどのケースに封入されます。この工程をパッケージングと言います。
7. 最終検査:製品として出荷
パッケージングされたチップは、もう一度検査を行い、問題がなければ製品として出荷されます。
半導体チップで使われる主な材料
半導体チップの製造工程は「前工程」「後工程」に分かれます。それぞれのプロセスで使われる材料をご紹介します。
前工程:シリコンウエハーに回路をつくる
酸素ガスと水蒸気 | シリコンウエハーの表面に酸化膜を形成し、回路パターンの下地を作ります。まるで、絵を描く前にキャンバスに下地を塗るようなものです。 |
フォトレジストと現像液 | 光に反応するフォトレジストを塗布し、回路パターンを焼き付けます。現像液で不要な部分を洗い流し、回路の原型を作ります。まるで、写真現像のように、見えないものを現実にします。 |
エッチング剤 | 不要な部分を削り取り、回路パターンを明確にします。まるで彫刻刀で不要な部分を削り取るように、繊細な作業です。 |
洗浄用薬液 | 汚れを徹底的に除去し、きれいな状態を保ちます。まるで、手術室のように、清潔な環境が必要です。 |
ドーパント | シリコンに不純物を加え、電気を通しやすくしたり、通しにくくしたりします。まるで、料理に調味料を加えるように、材料の性質を変化させます。 |
後工程:製品として世に出すために仕上げる
リードフレーム | チップを固定するための金属製の枠です。まるで、宝石を飾るための台座のようです。ボンディングワイヤ: チップとリードフレームを電気的に接続する金線などです。まるで、神経のように、チップと外部を繋ぎます。 |
樹脂 | チップを保護するカプセルのようなものです。まるで、鎧をまとって敵から身を守るように、チップを外部の衝撃から守ります。 |
まとめ
半導体チップは、私たちの生活を劇的に変化させ、今後もその進化は止まることを知りません。AI、IoT、自動運転など、様々な分野で革新的な技術を生み出し、私たちの生活をより便利で豊かなものにしていくでしょう。
半導体チップの小型化、高性能化、低消費電力化は、今後も進み続け、より複雑で高度な機能が実現されることが期待されます。そして、それらの技術は、医療、エネルギー、宇宙開発など、様々な分野で新たな可能性を切り開くことでしょう。
【参考】