半導体ウエハーとは | 役割・原料・製造プロセスを解説

半導体ウエハー(wafer)とは、とても薄くて平らな板のことで、半導体の製造過程では、多くの場合、シリコンの単結晶から作られています。非常に薄くて小さな板で、量産されているシリコンウエハーの直径は一般的に8インチ(200mm)や12インチ(300mm)です。

ちなみに研究用ではもっぱら4インチ(100mm)以下の直径が採用されています。弊社の成膜装置は4インチ(100mm)が基本です。

半導体ウエハーは、現代の電子機器や情報技術に欠かせない重要な役割を果たしています。これらの薄い円盤状の基板は、半導体デバイスの製造において基盤として機能し、高度な電子回路が構築される土台となります。その製造工程や特性、そして産業への貢献について、詳しく掘り下げてみましょう。

半導体ウエハーが必要な理由

半導体集積回路(IC)とウェハーは、非常に密接な関係です。

半導体集積回路とは、さまざまな機能を処理して保存するために、多くの素子を1つのチップに集積します。そのためにウエハーが必要となります。薄い基板の上に、数多くの同一回路を作ることで、半導体集積回路が完成するのです。ウエハーは半導体の基盤。たとえるなら、ICが「ピザの具」で、ウエハーは「ピザの生地」です。

半導体ウエハーで使われる主な原料

半導体ウエハーの原料には、シリコン・アルミナ・化合物の3種があります。そのうち約90%がシリコンです。

①シリコン

シリコンウエハーは、半導体の基本素材として重要な役割を果たしています。

シリコンウエハーは、珪石から作られる金属ケイ素を原料としています。珪石は地球上に豊富に存在し、希少性がほとんどなく、また無毒で安全です。加工もしやすく、比較的安価に多くのウエハーを製造できます。

シリコンウエハーの直径は一般的には120mmや200mm、300mmで、厚さは数百マイクロメートルから数ミリメートルです。しかし、より多くの半導体チップを生産するためには、薄くて大きいシリコンウエハーの製造が求められています。

②アルミナ

サファイアウエハーとは、酸化アルミニウム(アルミナ)の結晶から作られた板のことです。アルミナは宝石サファイアの主成分であり、工業製品ではボーキサイトという鉱石から作られます。

サファイアウエハーは、シリコンウエハーと比べて高温に強く、化学的にも安定しています。そのため、LEDの基板や光学部品など、精密な機械や部品に広く使われています。

一方で、製造コストが高くなるというデメリットもあります。

③化合物

化合物半導体ウエハーは、複数の元素から作られた板のことです。シリコンよりも高価で、大きな結晶を育てることが難しいため、これまであまり研究が進んできませんでした。

しかし、化合物半導体ウエハーにはシリコンにはない優れた特性があります。例えば、電子が速く動くため高速動作や低消費電力が可能です。また、光や磁気に敏感で、発光などの特殊な機能も持っています。さらに、高温や高圧にも耐える性質があります。

これらの特性を生かし、化合物半導体ウエハーはLEDや太陽電池、レーザー、マイクロ波などのデバイスに広く使われています。近年では、先端技術の発展に不可欠な素材として、その研究がさらに進んでいます。

半導体ウエハーの製造プロセス

半導体ウエハーの製造工程について、シリコンウエハーを例に説明します。

プロセス①シリコンの純化

最初に珪石からシリコンを精製します。珪石には酸素やアルミニウム、マグネシウムなどが混ざっているため、純粋なシリコンを抽出するための加工や精錬が必要です。半導体用のシリコンは、99.999999999パーセント(イレブン・ナイン)の高い純度が要求されます。

プロセス②スライシング

精製したシリコンを円盤状に切り出します。この工程でウエハーの形や厚みが決まります。この段階では「アズカット・ウエハー」と呼ばれます。

プロセス③ベベリング

ウエハーの外周を面取りして円形に整えます。これにより、ウエハーが接触や衝撃から守られます。

プロセス④研磨

ウエハーの表面を研磨して均一な厚みにします。これにより、ウエハーの製造中に生じた微小な欠陥や不均一さを取り除きます。この段階では「ラップド・ウエハー」と呼ばれます。

プロセス⑤エッチング

研磨後に化学薬品を使って表面を整えます。これにより、ウエハー表面の微細な傷や不純物を取り除きます。この状態のウエハーは「エッチド・ウエハー」と呼ばれます。

プロセス⑥熱処理

ウエハーに熱を加えて電気抵抗を低くし、性能を向上させます。電子がスムーズに流れるため、半導体デバイスの性能が良くなります。

プロセス⑦ポリッシング

ウエハー表面をさらに磨いて平らで光沢のある仕上がりにします。これにより「ポリッシュド・ウエハー」が完成します。

プロセス⑧洗浄・乾燥

ウエハーを純水や化学薬品で洗浄し、清潔な状態にします。これにより、ウエハー表面の不純物や埃を除去します。この工程はクリーンルームで行われ、高い清潔度が求められます。

プロセス⑨品質・特性検査

ウエハーの表面に欠陥や汚れがないかを目視と検査装置でチェックします。また、ウエハーの特性(結晶方位や抵抗率など)も検査します。

まとめ

半導体ウエハーは、現代の電子技術において中心的な役割を果たしています。これらの薄い円盤状の基板は、半導体デバイスの製造に不可欠であり、その進化は高度な情報技術やデジタル化社会の基盤となっています。

これまで、半導体ウエハーの製造技術は急速に進展し、ウエハーの直径や厚みの微細化が進みました。初期のシリコンウエハーから始まり、化合物半導体やサファイアウエハーなど新素材の採用も進んでいます。これにより、より高速でエネルギー効率の良い半導体デバイスが実現され、携帯電話からクラウドコンピューティングまで、幅広い用途に利用されています。

今後は、さらなる微細化と高性能化が求められています。ナノメートルレベルの微細加工技術の開発や、エネルギー効率の向上、さらなる信頼性の確保が重要な課題です。また、人工知能(AI)や自動運転などの先端技術の発展にともない、より高速で信頼性の高い半導体ウエハーの需要が増加しています。

半導体ウエハーの進化は、私たちの日常生活や産業活動において、ますます重要な役割を果たしていくことは間違いありません。

【参考資料】

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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