バイポーラトランジスタとは?仕組みや特徴、MOSFETとの違いをわかりやすく解説

バイポーラトランジスタとは?仕組みや特徴、MOSFETとの違いをわかりやすく解説

「トランジスタ」という言葉は聞いたことがあっても、それがどんなものか、どんな役割を果たしているのか、詳しく知っている人は少ないかもしれません。

トランジスタは、私たちの身の回りにある様々な電子機器に欠かせない部品であり、その中でもバイポーラトランジスタは、増幅作用とスイッチング作用という2つの重要な機能を持っています。

この記事では、バイポーラトランジスタの基本的な仕組みや特徴、そしてMOSFETとの違いについて、わかりやすく解説していきます。

バイポーラトランジスタとは

バイポーラトランジスタ(BJT: Bipolar Junction Transistor)は、増幅とスイッチングの2つの主要な機能を持つ半導体素子です。

バイポーラトランジスタは、正孔と自由電子の両方が動作に関与する点が特徴です。このため、「バイポーラ」(双極性)と呼ばれます。

真空管の時代から、小型で消費電力の少ないトランジスタの登場は、電子機器の小型化、高性能化に大きく貢献しました。

初期のトランジスタは点接触型でしたが、すぐに現在のバイポーラトランジスタの原型となる接合型トランジスタが開発されました。

その後、集積化しやすいCMOS技術が主流になりますが、バイポーラトランジスタも今なお活用されています。

バイポーラトランジスタの2つの特徴

バイポーラトランジスタは、その二つの重要な特性、スイッチング特性と増幅特性により、電子回路において非常に重要な役割を果たしています。

①スイッチング特性

バイポーラトランジスタは、スイッチとして機能します。通常、エミッタとコレクタ間には電流が流れません(スイッチOFFの状態)。しかし、ベースにわずかな電流を流すと、エミッタとコレクタ間が導通し、電流が流れるようになります(スイッチONの状態)。

このスイッチング特性を利用することで、回路のON/OFFを自動化することができます。例えば、ある回路Aに電流が流れているときに、別の回路Bにも電流を流したい場合、回路Bにバイポーラトランジスタを組み込み、回路Aからの電流をベースに入力することで、回路BのON/OFFを制御することができます。

②増幅特性

バイポーラトランジスタは、増幅器としても機能します。ベースに流れる電流とエミッタ-コレクタ間に流れる電流は比例関係にあり、かつエミッタ-コレクタ間に流れる電流はベース電流よりも大きくなります。

この特性を利用することで、微小な信号を増幅することができます。例えば、マイクから入力された音声信号は非常に微弱ですが、バイポーラトランジスタで増幅することで、スピーカーを駆動するのに十分な大きさの信号にすることができます。

増幅の度合いは信号増幅率と呼ばれ、バイポーラトランジスタの性能を表す指標の一つとなります。

バイポーラトランジスタのしくみ

バイポーラトランジスタは、p型半導体とn型半導体を組み合わせて作られた半導体素子です。p型半導体は正孔(電子の抜け穴)を、n型半導体は自由電子を多く持っています。

バイポーラトランジスタには、PNP型NPN型の2種類があります。

構造と端子

バイポーラトランジスタは、エミッタ、ベース、コレクタの3つの端子を持っています。

エミッタキャリア(電子または正孔)を放出する役割
ベースエミッタから放出されたキャリアの流れを制御する役割
コレクタキャリアを受け取る役割

動作原理

バイポーラトランジスタの動作原理は、ベースに微小な電流を流すことで、エミッタ-コレクタ間の大きな電流を制御できることにあります。

NPN型トランジスタの場合
ベースに電流が流れない時エミッタとコレクタ間には空乏層ができ、電流は流れません。
ベースに電流が流れる時ベースから自由電子が供給され、空乏層が消滅します。これにより、エミッタからコレクタへ大量の自由電子が流れ込み、電流が流れます。
PNP型トランジスタの場合
ベースに電流が流れない時エミッタとコレクタ間には空乏層ができ、電流は流れません。
ベースに電流が流れる時ベースから正孔が供給され、空乏層が消滅します。これにより、エミッタからコレクタへ大量の正孔が流れ込み、電流が流れます。

電流の増幅作用

ベース電流は非常に小さくても、エミッタ-コレクタ間には大きな電流が流れます。これは、ベース電流がエミッタ-コレクタ間の電流を増幅する作用があるためです。この増幅作用が、バイポーラトランジスタの最も重要な特徴の一つです。

バイポーラトランジスタとMOSFETの違い

バイポーラトランジスタとMOSFETは、どちらもトランジスタと呼ばれる半導体素子ですが、その動作原理や特性にはいくつかの違いがあります。

バイポーラトランジスタMOSFET
動作原理電流駆動電圧駆動
入力インピーダンス低い高い
消費電力大きい小さい
スイッチング速度遅い速い
サイズ大きい小さい

まとめ

バイポーラトランジスタは、電流駆動で増幅とスイッチングの機能を持つ重要な半導体素子であり、様々な電子機器に利用されています。

この記事では、バイポーラトランジスタの仕組みや特徴、そしてMOSFETとの違いについて解説しました。

今回の記事を参考に、バイポーラトランジスタへの理解を深め、電子回路の世界をより深く探求してみてください。

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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