伝導帯とは何か?電気を通す仕組みを徹底解説

伝導帯とは何か?電気を通す仕組みを徹底解説。

金属は電気を通しやすく、ゴムは電気を通しにくい。

この違いを生み出す原因の一つが「伝導帯」です。

伝導帯とは、電子が自由に動き回れる場所のこと。

電子が伝導帯にいることで、電気が流れる仕組みを理解することができます。

この記事では、伝導帯の基本から、価電子帯との違い、そして導体・絶縁体・半導体における伝導帯の役割まで、わかりやすく解説します。

伝導帯の仕組みを知れば、電気の不思議がもっと身近に感じられるはずです!

伝導帯とは?

伝導帯とは、簡単に言うと「電子が自由に動き回れる場所」のことです。

私たちの身の回りにある様々な物質、例えば金属、プラスチック、ガラスなどは、電気の通しやすさがそれぞれ違いますよね。

この違いを生み出す原因の一つが、実は「伝導帯」(conduction band)なのです。

実際に、導体・絶縁体・半導体において、伝導帯は次のような働きをしています。

導体伝導帯と価電子帯が重なり合っているため、電子が常に自由に動き回ることができ、電気をよく通します。
絶縁体伝導帯と価電子帯の間に大きなエネルギーの壁(禁制帯)があるため、電子が伝導帯に移ることができず、電気を通しません。
半導体伝導帯と価電子帯の間の禁制帯が比較的狭いため、特定の条件(温度や光など)下でのみ電子が伝導帯に移ることができ、電気を通したり通さなかったりします。

以下に、伝導帯を理解するための前提を解説します。

電子とエネルギー

とても小さな粒である電子は、波のような性質も持っています。そして、原子の周りを回る電子は、決まったエネルギーを持った道筋(軌道)を通ります。この軌道は、原子核に近いほどエネルギーが低く、外側に行くほど高くなります。

エネルギーの帯

たくさんの原子が集まって結晶になると、電子の軌道はエネルギーの帯のようになります。この帯の中で、一番エネルギーの高い帯を「価電子帯」と呼びます。そして、その外側にある、まだ電子が入っていない帯を「伝導帯」と呼びます。

伝導帯で電子が自由に動く

電子は、普段は価電子帯にいて、原子核に強く引き付けられています。しかし、外部から熱や光などのエネルギーをもらうと、よりエネルギーの高い伝導帯に移ることができます。伝導帯に移った電子は、自由に動き回ることができるようになり、電気を通す役割を果たすのです。

伝導帯と価電子帯の違い

伝導帯と価電子帯は、どちらも物質内の電子のエネルギー状態を表す概念ですが、それぞれ役割が異なります。

伝導帯

  • 価電子帯よりも高いエネルギー準位にある、空のエネルギー帯
  • 外部からエネルギー(光や熱など)を与えられると、価電子帯の電子が励起されて伝導帯に移ることができる
  • 伝導帯に移った電子は、自由に動き回ることができ、電気伝導に寄与する

価電子帯

  • 原子核に最も近い軌道にある電子が存在するエネルギー帯
  • 通常、電子が完全に満たされている
  • 電子が価電子帯にあるときは、原子核に束縛され、自由に動けない
  • 電気伝導には寄与しない

伝導帯の有効状態密度

伝導帯の有効状態密度とは、半導体中で、伝導帯の電子密度や価電子帯の正孔密度を計算する際に用いられる概念です。

状態密度とは

固体中の電子は、様々なエネルギー状態を取ることができます。状態密度とは、単位エネルギー幅あたりに存在する電子の状態の数のことです。

伝導帯の状態密度は、伝導帯の底(最もエネルギーの低い部分)に近づくほど高くなります。

有効状態密度

伝導帯の電子密度を正確に計算するには、伝導帯全体の状態密度を積分する必要があります。しかし、実際には、伝導帯の底付近の状態密度が電子密度に大きく影響するため、伝導帯の底に仮想的な状態密度が集中していると仮定して計算を簡略化することができます。

この仮想的な状態密度が、伝導帯の有効状態密度です。

有効状態密度の重要性

有効状態密度は、半導体デバイスの特性を解析する上で非常に重要なパラメータです。

例えば、トランジスタの動作原理を理解したり、半導体メモリの記憶容量を計算したりする際に、有効状態密度が用いられます。

半導体と伝導帯の関係について

最後に、現代社会を支える半導体が、いかに深く伝導帯と関わっているかについて解説します。

というのは、半導体は、外部からのエネルギーによって伝導帯の電子を増減させることで、電気伝導性を制御することができるからです。

半導体は、通常の状態では伝導帯に電子がほとんど存在しないため、電気を通しません。

しかし、外部からエネルギー(光や熱など)を与えると、価電子帯(電子が通常存在するエネルギー準位)の電子が伝導帯に励起され、自由に動き回れるようになります。

伝導帯に電子が増えることで、半導体は電気を通すようになるのです。

この性質を利用して、様々な電子部品が作られ、現代社会の発展に大きく貢献しています。

ちなみに半導体には、主に以下の2種類があります。

  • 真性半導体:不純物を含まない純粋な半導体
  • 不純物半導体:不純物を添加することで電気伝導性を高めた半導体

さらに不純物半導体は、N型半導体とP型半導体に分けられます。

  • N型半導体:伝導帯に電子を供給する不純物(リンなど)を添加した半導体
  • P型半導体:価電子帯に正孔(電子の抜け穴)を供給する不純物(ホウ素など)を添加した

まとめ

この記事では、電気を通す仕組みの鍵となる「伝導帯」について解説しました。

伝導帯とは、電子が自由に動き回れる場所のこと。

電子は、普段は価電子帯にいますが、外部からエネルギーをもらうと伝導帯に移り、電気を流す役割を果たします。

導体は伝導帯と価電子帯が重なり合っているため常に電気を通し、絶縁体は伝導帯と価電子帯の間に大きな壁があるため電気を通しません。

そして半導体は、特定の条件下でのみ電子が伝導帯に移ることで、電気を通したり通さなかったりする性質を持ちます。

伝導帯の仕組みは、私たちの生活を支える様々な技術に応用されています。

この記事を通して、電気の不思議に少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

【参考】

「エネルギーバンド図」(TOSHIBA)

「半導体の性質」(HITACHI)

「伝導電子」(大阪電気通信大学)

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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