
光電子顕微鏡(Photoemission Electron Microscopy:PEEM)は、材料研究において重要な役割を担う顕微分光技術の一つです。
放射光を励起光源として用いることで、試料表面から放出される光電子の空間分布を、100nm以下の高い空間分解能で直接的に可視化することができます。
光電子顕微鏡(PEEM)の基本原理
PEEMは、電子顕微鏡の一種であり、試料表面に励起光を入射すると光電効果によって放出される光電子を利用します。放出された光電子は、電子レンズによって拡大投影され、最終的にスクリーン上に像として結像されます。
①光電子放出
試料に励起光(放射光など)が入射されると、光電効果により試料表面から光電子が放出されます。光電効果は、光のエネルギーが試料の仕事関数を超える場合に起こります。
②光電子の加速と集束
放出された光電子は、引き出し電極によって加速され、電子レンズによって集束されます。PEEMのレンズには、電場レンズと磁場レンズがあり、磁場レンズの方がエネルギー収差を抑えることができるため、高い位置分解能を実現できます。
③像の形成
集束された光電子は、投影レンズによってさらに拡大され、最終的にスクリーン上に試料表面の電子放出分布像が形成されます。この像を観察・解析することで、試料表面の情報を得ることができます。
PEEMと他の電子顕微鏡との違い
PEEMは、LEEMと同様に表面観察を目的とした電子顕微鏡ですが、励起光源として光を用いる点が異なります。TEMやSEMが電子線を用いるのに対し、PEEMは光を用いるため、試料に与えるダメージが少なく、元素選択性や磁気情報解析能に優れています。
PEEMの特徴
高い空間分解能 | PEEMは、電子レンズを用いることで、数十nmの高い空間分解能を実現できます。 |
表面敏感な分析 | PEEMで検出される光電子の運動エネルギーは数eV程度であるため、試料表面の情報を選択的に得ることができます。 |
元素選択性 | 放射光を用いることで、元素選択的な励起が可能となり、元素マッピングや多層膜の層分解測定などが行えます。 |
磁気情報解析 | 円偏光や直線偏光放射光を用いることで、磁性体の磁区構造を解析することができます。 |
オペランド測定 | デバイス動作中の挙動解析など、オペランド測定に有用です。 |
PEEMの応用
PEEMは、材料科学、物理学、化学など、幅広い分野で利用されています。
ナノ磁性材料の研究 | 磁性多層膜の磁区構造や磁化ダイナミクスなどの研究に利用されています。 |
二次元材料の研究 | グラフェンの電子状態や電気伝導特性などの研究に利用されています。 |
触媒の研究 | 触媒表面の反応過程や活性サイトの解析などに利用されています。 |
半導体デバイスの研究 | 半導体デバイスの微細構造や動作機構の解析などに利用されています。 |
地球惑星科学 | 隕石などの磁気履歴の復元などに利用されています。 |
まとめ
PEEMは、ナノテクノロジーや材料科学の発展とともに、ますます重要な役割を担うと考えられます。今後は、空間分解能や時間分解能のさらなる向上、オペランド測定技術の発展、新しい励起光源の開発など、PEEMの性能と応用範囲を拡大するための研究開発が活発に進められるでしょう。
【参考】