スパッタ装置は、真空薄膜形成のカテゴリの中では物理蒸着法(PVD)に分類されるスパッタリング法を用いた成膜装置です。
スパッタ装置により生成される薄膜は、基板への優れた密着性、繰返し成膜する時の高い再現性、高融点材料や合金も作れる特徴を有しており、半導体や電子デバイスをはじめ機能性材料に欠かせない金属膜、絶縁膜はもちろん、酸化膜、窒化膜を製作することもできます。
菅製作所は長年に渡り大手真空装置メーカーの協力会社として培ってきた技術と厳しい品質基準を自社ブランドの装置にも適用し、お客様のニーズを反映させた扱いやすく、壊れにくい高品質なスパッタ装置を設計、製造しております。
【スパッタリング法の特徴】
- 基板に衝突する材料の衝突エネルギーが強いため、付着力の大きな薄膜ができる
- 材料はおよそ一定方向に直線的に飛ぶため、他の成膜方法と比較し基板以外への 膜の付着が少ない。ただし、凹凸部の側壁面に対しては膜が付きにくい
- 電源パワーや成膜時間等の各種条件の調節により膜厚の制御がしやすい
- 広い面積に均一な厚みの膜をつくることができる
- 高融点材料や絶縁膜の成膜も可能
- 合金をつくる時、材料を高温で溶融する蒸着装置と比べ、材料の組成変化が起きにくい
- 窒素、酸素、水素などを組み合わせた反応性スパッタでは化合物の成膜も可能
- 基板ホルダーへ高圧を印加すれば基板の成膜面をプラズマクリーニング(逆スパッタ)もすることも可能
- 蒸着法に比べると成膜スピード(成膜レート)は遅い
目次
菅製作所スパッタ装置【SSP3000Plus】の製品情報について
高性能、多機能型のスパッタ装置。
金属膜、絶縁膜、電導膜、絶縁膜、保護膜、反射膜、合金、触媒、コーティング、回路、電池、MEMS、新素材開発などの分野に対し、研究開発から少量生産まで幅広い局面で活躍します。
また、Plusシリーズの装置と連結することで実現するALD装置での積層や、アニール装置による加熱処理やガス置換処理等と組み合わせた高度な薄膜製造プロセスが可能です。
【特徴1】高品質な成膜
φ2インチマグネトロンカソード3基(シャッター付)を搭載し、φ100mm以内の膜厚分布±3%以下と国内装置トップクラス(当社調査による)を実現しました。
単層、積層、合金の成膜も可能な装置です。
【特徴2】高温基板加熱
膜質を左右する基板加熱の機能について、標準仕様MAX300℃に対し、オプションでMAX800℃(モニター温度)の輻射式ヒーターによる加熱が可能です。
実基板の表面温度は出荷前検査で確認した上で出荷することが可能です。
【特徴3】RF電源
パルス発振機能付き高周波RF電源を採用しているため異常放電が起きやすい絶縁材料のターゲットに対しても安定した成膜が可能です。
【特徴4】拡張性
本体側面に拡張用ポートを備えており、トランスファーユニットSTR2000と連結することで、ロードロック機能室が備わります。
また、Plusシリーズのスパッタ装置、ALD装置、アニール装置、蒸着装置と複合化ができるため基板を大気に曝さず多様な成膜が可能です。
【特徴5】操作性の工夫
タッチパネルを仰角に配置し、視認性と操作性に配慮した設計にしています。
プログラムはオペレーターが直感的に理解できるGUI(Graphical User Interface)方式を採用し、動作状態を含めた各種ステータスに関する視認性とバルブや設定項目の調整が容易な操作性を兼ね備えています。
その他に各種インターロックやアラーム機能も完備した操作性と安全性を両立したタッチパネルプログラムです。
日々変化する研究内容や装置側の改造に応じて、プログラム自体を改造しやすい設計することで、プログラム変更時の設計費用を抑える工夫もしています。
【特徴6】本体と制御部一体型のデザイン
成膜室と排気系を搭載した本体と、電気制御系の架台が1つにまとまったデザインを採用。
本体と制御架台が分離した装置と比較して、装置背面に余計な配線が露出せずスッキリとした外観です。導入後の移設作業や室内レイアウト変更の際にも作業工数(=支出)を抑えることができます。
【特徴7】豊富なオプション群
SSP3000Plusは様々なオプションを付加することが可能です。
お客様が必要とする性能や膜質に応じて導入時または導入後の改造で対応致します。導入後の改造が対応できない組み合わせもありますので詳しくはお問い合わせください。
トランスファーユニットSTR2000を介したALDやアニール装置との連結は、ご納入後に容易にできる構造となっております。
菅製作所スパッタ装置【SSP3000Plus】の標準仕様について
【SSP3000Plus】
菅製作所スパッタ装置【SSP3000Plus】のオプションについて
1.磁性体の成膜
鉄(Fe)などの磁性体材料で成膜する場合は、標準のマグネトロンカソードでは安定したプラズマ放電が得られません。
このため磁性体用カソードの仕様を選択が可能です。装置導入後も部品の付け替えにより磁性と非磁性の両方の材料を使い分けできます。
2.高温基板加熱
膜質を左右する基板加熱の機能について、標準仕様MAX300℃に対し、オプションでMAX800℃(モニター温度)の輻射式ヒーターによる加熱が可能です。
実基板の表面温度は出荷前検査で確認した上で出荷することが可能です。
3.薄型ターゲットへの対応
弊社のカソードはφ50.8mm×t3mmの形状を基本としていますが、高額な材料のターゲットを3mmの厚みで製作すると支出が大きくなることがあります。
ターゲットの支出を抑えたい場合や、最初から成膜の回数が少ないと分かっている場合は、1mm、2mm等の薄型ターゲット用のシールドとターゲット押さえを用意しておりますのでご使用になるターゲットのコストでお悩みの場合はお問い合わせください。
※材質によっては、薄型ターゲットでは、放電しにくいものがあります。
※薄型ターゲットを標準の3mm厚用のパーツと組み合わせてスパッタすると、ターゲットとシールド間にできた余分な隙間で異常放電が発生し成膜が成立しない可能性がありますのでご注意ください。
4.スパッタ電源
RF電源、DC電源を各1台ずつ増設できます。最大でRF電源2台とDC電源1台による三元同時放電スパッタが可能です。
同時放電は成膜レートの向上や合金の製造に活用されます。
5.整合器
RF電源の手動マッチングボックスをオートマッチングボックスに変更することで、最適な条件の放電を維持します。
また、レシピを組んだ全自動成膜が可能です。
6.逆スパッタ機構
逆スパッタ機構の追加により、成膜の前処理として基板表面に付着した酸化膜を飛ばして表面を清浄化することが可能です。
逆スパッタ用マッチングボックス
7.基板高速回転
基板回転速度を標準の5rpmから50rpmにアップさせることが可能です。
膜厚の均一性向上や多元同時スパッタによる合金の成膜時に効果が見込めます。
8.ガス導入系追加
プロセスガスの導入系を2系統追加し、最大3系統とすることが可能です。
酸素や窒素等の導入による反応性スパッタを行う際に追加が必要です。
9.ドライポンプへの変更
補助ポンプをロータリーポンプからドライポンプに変更可能です。クリーンルームへの設置条件では基本的にドライポンプが求められます。
当社は非接触式の多段ルーツ式ドライポンプを選定しているため、導入後は長期間に渡りメンテナンスフリーでクリーンな排気が得られます。
菅製作所スパッタ装置【SSP3000Plus】の修理・改造について
弊社装置に関わる保守サービスは、北海道の本社及び静岡県の拠点から技術者を派遣して対応致します。
また、改造・保守に関わる事前お打合せについては北海道と関東地区に駐在している営業担当者にて対応致します。
装置の導入後も安心して装置をご使用頂けるよう体制を整えております。
装置の御納入後の定められた保証期間内は、弊社が定める一定の条件(天災や誤った使用方法に起因する故障)に含まれない初期不良等の不具合に対しては無償による修理対応を行います。
詳細はお問い合わせください。
【修理メンテナンスメニュー例】
- 装置の定期メンテナンス、不具合時のサービス対応
- 装置の改造や機能追加、それらに伴うプログラムソフトの変更
- 装置の移設、レイアウト変更
- オペレーショントレーニング(ユーザー様の運用担当者の交代時など)
- 消耗品の購入
- シールド部品に付着した膜の洗浄及び再ブラスト処理
- メール、お電話等で解決するご質問
【改造】
装置の導入後でも、実験内容や使用条件の変更に伴う改造に関する業務を承ります。
◎改造事例◎
- トランスファーユニットを介した別装置との複合化(Plusシリーズ)
- 各種の機能追加変更や部品交換
- 特殊形状用サンプルホルダーの製作
- プログラムの改良、アップデート
- ガス導入系の追加
- ロータリーポンプからドライポンプへの置き換え
- 補助ポンプの大型化
- 冷却水循環装置(チラー)の追加
- その他、ご要望に応じた改造、現地サービス