
めっき工程では、前処理や水洗などに水を使用するため、工程に応じて排水が発生します。排水に含まれる物質によっては、適切な処理や管理が必要となり、設備・薬品・維持管理などの負担につながります。
こうした背景から、
「めっきの排水処理を減らしたい」
「排水処理設備の負担を抑えたい」
「そもそもめっき以外の表面処理に変更できないか」
と考える企業もあるでしょう。
めっき工程の環境負荷を低減する方法としては、既存工程の改善だけでなく、めっきそのものを別の表面処理へ置き換える方法も考えられます。
今回は、めっきで排水処理が必要になる理由から、排水を減らす方法、スパッタリングなどの乾式表面処理を代替候補として検討する際のポイントまで解説します。
めっきで排水処理が必要になるのはなぜ?
めっき工程では、めっきそのものだけでなく、前処理や水洗など複数の工程が組み合わされています。
そのため、工程構成や使用する薬品によって排水の発生状況や含まれる物質が変わります。
めっき工程では水洗などによって排水が発生する
めっきでは、前処理やめっき後の洗浄などで水洗工程が設けられることがあります。
水洗では、前工程から持ち込まれた成分などが洗浄水側へ移行するため、使用した水をそのまま排出するのではなく、工程に応じた排水処理が必要になります。
めっき工場の環境負荷について調査した田熊らの論文では、めっき工程における環境負荷の要因として、めっき工程で使用する原材料と排水に含まれる物質が挙げられています。
さらに、排水に関する環境負荷を低減する方法として、濃度の低減や汲み出し量の削減、回収槽の設置と液の返送などが示されています。[※1]
めっきの種類や工程によって排水に含まれる物質が異なる
めっき排水に含まれる物質は、すべてのめっき工程で同じというわけではありません。
めっきの種類や前処理・後処理によって、排水に含まれる物質は異なります。
和田氏の「めっき排水処理のポイント」でも、酸・アルカリ系、クロム系、シアン系の排水を分けて処理することが示されています。[※2]
まずは現在のめっき工程で何が使われ、どこから排水が発生しているのかを整理することが重要です。
めっきの排水処理を減らすには排水削減と代替がある
めっきの排水処理を減らす方法は、大きく分けると、現在のめっき工程を改善する方法とめっき自体を別の表面処理へ置き換える方法の2つがあります。
めっきを続けながら排水中の物質量を減らす方法
現在のめっき設備や工程を維持したい場合は、水やめっき液の使用量、工程間での持ち出しなどを見直す方法があります。
田熊らの研究では、めっき工程の環境負荷を低減する方法として、排水中の物質濃度の低減、汲み出し量の削減、回収槽を設置して液を返送する方法などが示されています。[※1]
こうした工程改善は、排水由来の環境負荷を抑えるだけでなく、原材料の使用量削減にもつながり、製造コストの削減にもつながる可能性があります。
めっき自体を別の表面処理へ置き換える方法
一方で、排水処理設備そのものの負担が大きい場合や、設備更新を機に工程を見直したい場合は、めっき以外の表面処理へ変更する方法も検討できます。
ただし、表面処理は単純に金属を付けられればよいというものではありません。
必要な膜厚、密着性、耐摩耗性、耐食性、外観など、製品に求められる性能によって適した成膜方法は変わります。
そこで、めっきの代替を検討する際には、PVDなどの乾式成膜も候補の一つになります。
めっきの代替にはPVDなどの乾式成膜がある
めっきの代替方法として検討できる表面処理の一つが、PVD(物理蒸着法)に分類されるスパッタリングです。
スパッタリングや真空蒸着はめっきの代替候補になる
めっきが水溶液を利用して金属を析出させるのに対し、スパッタリングや真空蒸着は、真空中で材料を基板表面に付着させて膜を形成する乾式の成膜方法です。
スパッタリングでは、プラズマ放電下でイオン化したArガスをターゲットへ衝突させ、その衝突によって叩き出されたターゲット原子を基板へ付着させます。株式会社菅製作所も、スパッタリングをPVD方式の薄膜形成装置として説明しています。[※3]
そのため、スパッタリングの成膜工程そのものは、めっきのようにめっき液を使って金属を析出させる工程とは異なります。
めっきと同じ性能が得られるとは限らないため用途に合わせて選ぶ
乾式成膜へ変更する場合に重要なのが、現在のめっきで実現している性能を整理することです。
例えば、金属光沢などの外観を重視しているのか、必要な膜厚が決まっているのか、硬度や耐摩耗性、耐食性、密着性、電気的な特性などが求められているのかによって、適した成膜方法は変わります。また、製品の形状によっては、目的とする箇所へ均一に成膜できるかどうかも確認する必要があります。
スパッタリングは、金属膜だけでなく、絶縁膜や導電膜、保護膜、反射膜、合金など、さまざまな薄膜形成に利用できます。
SSP3000は3基のφ2インチマグネトロンカソードを搭載し、φ100mm以内で膜厚分布±3%以下を特徴とするスパッタ装置です。研究開発から少量生産まで幅広い用途が想定されています[※4]
めっきの代替方法を選ぶときに確認したいこと
めっきから乾式成膜へ変更する場合は、排水処理の有無だけで判断するのではなく、製品仕様や生産条件まで含めて検討しましょう。
素材・めっきの種類・必要な性能を整理する
まず確認したいのが、何に、どのような目的でめっきをしているのかです。
例えば、
「樹脂部品に金属光沢を持たせたい」
「金属部品の表面に耐摩耗性を持たせたい」
「電気を通すために導電膜を形成したい」
など、目的によって必要な膜や材料は変わります。
そのため、現在のめっきについて、基材の材質・現在のめっきの種類・必要な性能などを整理しておくと、代替方法を検討しやすくなります。
製品サイズや生産量も含めて成膜方法を検討する
もう一つ重要なのが、製品の大きさと生産量です。
研究開発や少量生産では適した方法でも、大量生産になると成膜時間や搬送方法、装置サイズなどが課題になる場合があります。
反対に、まずは少量の製品で性能を確認し、その結果をもとに量産設備を検討するという進め方もあります。
特にめっきから別の成膜方法へ変更する場合は、設備をいきなり導入するのではなく、まず実サンプルで成立性を確認しておくと、設備選定時の判断材料を増やせます。
めっきからの移行を検討するなら、まずは相談を
めっきの代替としてスパッタリングを検討する際は、現在のめっきで求められている性能と製品の条件を整理することが大切です。膜を形成できても、膜厚や密着性、製品形状への対応などが異なれば、そのまま置き換えることはできません。
相談する際は、次の情報を伝えると、適した成膜方法を検討しやすくなります。
- 基材の材質と製品のサイズ・形状
- 現在のめっきの種類と膜厚
- 必要な密着性、耐摩耗性、耐食性などの性能
- 想定している生産量
菅製作所では、スパッタリングなどの乾式成膜について相談を受け付けています。めっきからの置き換えを検討している場合は、現在の製品仕様や課題をお聞かせください。
お電話でのお問い合わせ(弊社営業部)
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(受付時間 8:30~17:00、定休:土日祝)
お問い合わせフォームからのご相談
まずは文面で内容を整理してから相談したい場合は、お問い合わせフォームをご利用ください。ご希望の成膜方法、基板の材質・サイズ、膜の材料・膜厚、ご希望の数量などを合わせてお伝えいただくと、その後のやり取りがスムーズです。
まとめ
めっき工程では、水洗などを含む工程構成によって排水が発生し、使用する材料や薬品によって排水処理の対象も変わります。
排水処理の負担を減らす方法としては、下記のような方法が考えられます。
- めっき工程そのものを改善して排水量を削減する
- 排水やめっき液の回収・循環を検討する
- めっき自体を別の表面処理へ置き換える
その中でも、スパッタリングのようなPVD方式の乾式成膜は、めっきの代替候補の一つです。
ただし、すべてのめっきをそのまま置き換えられるわけではなく、基材・必要な膜性能・製品形状・生産量などを踏まえて検討する必要があります。
めっきからスパッタリングへの変更を検討する場合は、現在のめっきで必要としている膜厚や性能、基材・製品形状、生産量を整理することが大切です。
菅製作所では、スパッタリングなどの乾式成膜について相談を受け付けています。めっき排水の処理負担をなくすために工程の置き換えを検討している場合は、現在の製品仕様や課題をお聞かせください。
参考記事
- [※1]田熊 保彦,森久保 諭,榎本 大佑,安藤 恵理,西田 葵,小坂 幸夫「めっき工場の環境負荷要因と工程改善による排水由来の環境負荷の低減」(2023年)
- [※2]和田 洋六「めっき排水処理のポイント」(2023 年 74 巻 8 号 p. 378-386)
- [※3]菅製作所「PVDコーティング(物理気相成長法)とは?仕組みや種類、身近に使われているものを製作会社が解説」
- [※4]菅製作所「SSP3000」







