スパッタ装置で成膜するのに欠かせないアルゴン。
あまり耳にしたことのない言葉かも知れませんが、私たちの日常はアルゴンに支えられているといっても過言ではありません。
そんなアルゴンについてわかりやすく解説します。
群れない一匹狼のようなアルゴン
元素同士がくっつくことを化学反応といいますが、アルゴンは化学反応がほとんど起きない特徴をもつ元素です。
例えば、鉄。
燃やすと焦げて黒い色の酸化鉄になります。
これは、鉄と酸素が結びついて化学反応が起こったからです。
空気中に鉄を長年放置したり、水で濡らして放置すると鉄に赤い色のサビがつきます。
これも鉄と酸素が燃やした時よりゆっくり結びついた結果、つまり化学反応が起こったからです。
空気中に含まれる酸素などは化学変化が起きやすいのですが、アルゴンはなかなか他の元素と結びつかない性質があります。
アルゴンの名はギリシャ語で「不活発な」という意味に由来(ウィキペデイアより)するのも、他の元素と違いなかなか化学反応を起こさないことからきています。
アルゴンは、まるで一匹狼のような孤高の元素とも言えます。
アルゴンの他にも窒素が化学反応を起こしにくい性質がありますが、窒素は高温では化学反応しますが、それに比べてアルゴンは高温でも化学反応しにくい特徴があります。
大活躍のアルゴン
アルゴンは、孤高な一匹狼の性質を活かして工業的に大活躍しています。
例えば、街などで時々みかけるブロンズ像。
溶かした銅を鋳造する際、空気中だと銅に酸素や窒素が触れて、酸素や窒素と結びつくことを防ぐため、溶かした銅をアルゴンガスで覆う(シールド)します。
アルミニウムやステンレス鋼を溶接する際、溶接面をアルゴンで覆う(シールド)することで、酸素や窒素が結びついて表面が変色することを防ぎ、美しい状態で保つことができます。
チタンやシリコンなどの精錬の際も、空気中ではなくアルゴンをガスにした中で行うことで酸化や窒化を防いでいます。
このほかにも、蛍光灯や電球に使われるなど、幅広い分野でアルゴン(ガス)が使われています。
アルゴンガスはほとんど化学反応をしない性質を活かし、様々な場面で大活躍しています。
アルゴンガスはスパッタ装置にも使用
成膜するためのスパッタ装置にもアルゴンガスが使われています。
スパッタ装置の仕組みについて、超簡単に説明すると、アルゴンガスの原子をものすごい勢いでターゲットに当て、ターゲットから飛び出した原子で膜を作る装置なのですが、アルゴンガス以外の物を使うと化学反応が起こってしまいます。
しかし、アルゴンガスの場合だと、ターゲットにぶつかっても、化学反応しないので、ターゲットの原子がそのまま膜になるという訳です。
ちなみにアルゴンは、私たちが息をする度に吸い込んでいる空気の中にも微量ながら含まれています。
実は、私たちの日常生活に欠かせない存在のアルゴン。
その特性を活かしてスパッタ装置で成膜しています。