SECM(走査電気化学顕微鏡)は、SPM(走査型プローブ顕微鏡)の一種です。
SPMについて気になる方は以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
この記事ではSECMの仕組みの一例から使用場面について解説させていただきます。
普段から原子に関わる仕事をしている「菅製作所」だからお伝えできる情報をお届けしますので、参考にしていただけると幸いです。
それでは、早速見ていきましょう。
目次
SECM(走査電気化学顕微鏡)とは微小電極を使用して計測する顕微鏡
SECM(走査電気化学顕微鏡)とは、探針として微小電極を利用し、試料表面の化学物質の反応像、反応速度の定量を行うための顕微鏡です。
SECMはSPM(走査型プローブ顕微鏡)の一種であり、主に腐食防食化学から酵素安定性の研究などのジャンルで使用されます。
SECM(走査電気化学顕微鏡)の仕組みの一例
SECMにはいくつかのモードがありますが、ここでは他のSPMと比較しやすい「プローブ走査法」における例を見ていきましょう。
SECMのプローブ走査法には2つのモードがあります。
- 高さ一定モード:比較的単純に行える(特殊な電極やフィードバック制御と必要としない)
- 距離一定モード:数十ナノメートル程度まで接近させ、解像度とコントラストの高いイメージングが可能
よく使用されるのは比較的単純な「高さ一定モード」での測定です。高さ一定モードは電極と試料間の高さを一定に保つことで表面の形状を測定する方法になります。
しかし、電極の先端をイメージング範囲内における最高点以上に設置しないと、正確な凹凸をイメージングできないなどの弱みもあります。
そのため、より高い解像度で正確な形状を取得したい、電気化学活性も同時に検出したい場合は距離一定モードが使用されます。距離一定モードは従来のSPMの電気版といった方法です。
SECM(走査電気化学顕微鏡)の実像サンプル
フェロセンアンモニウム溶液中で直径100ミクロンの白金ディスク電極上を走査することで得られたSECM像です。白金の部分の電流が大きくなるため、山のように写し出されます。
実像サンプルについては以下のページで公開されていますので、ご覧ください。
SECM(走査電気化学顕微鏡)の歴史
微小電極による測定は1980年頃から行われていました。そして、SPMの技術を発展させて、1989年、A.J.バードらによりSECMが報告されます。SPMの側面と電気化学測定の側面を持つSECMは、近年でも使用され続ける顕微鏡の一つとなりました。
まとめ
今回はSECM(走査型電気化学顕微鏡)についてお話ししました。最後にポイントを振り返りましょう。
- SECM(走査電気化学顕微鏡)とは微小電極を使用して計測する顕微鏡
- SECMのプローブ走査法には、「高さ一定モード」と「距離一定モード」がある
- SECMは、SPMの発展とともに1989年に開発され、今現在でも使用されている
SECMはSPM(走査型プローブ顕微鏡)の一種であると冒頭にお話ししました。SPMについて詳しくは以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
参考サイト
SECM-470 走査型電気化学顕微鏡 | 東陽テクニカ | “はかる”技術で未来を創る | 物性
ALS900シリーズ走査型電気化学顕微鏡
プローブ法(1) 走査型電気化学顕微(SECM)・ 走査型振動電極法(SVET)
SECM走査電気化学顕微鏡法 | プリンストンアプライドリサーチ社
走査電子顕微鏡SU3800 / SU3900
走査型電気化学顕微鏡を用いた細胞内および細胞表面タンパク質の単一細胞レベル経時測定に関する研究
走査型電気化学顕微鏡によるクロム基合金の耐食性評価 松本 佳久 1・安部 麻衣子 2・坂本 由香