SPM(走査型プローブ顕微鏡)とは、表面形状観察に使用される顕微鏡です。いくつかの種類があり、それぞれ特徴が異なります。
この記事では、SPMそのものや種類から、社会でどのように活用されているか、いつ頃から使用されているかの歴史まで解説させていただきます。
普段から原子に関わる仕事をしている「菅製作所」だからお伝えできる情報をお届けしますので、参考にしていただけると幸いです。
それでは、早速見ていきましょう。
目次
SPM(走査型プローブ顕微鏡)とは、新しい顕微鏡の総称
SPMとは、微小な針(プローブ)を利用して試料表面の凹凸を検出する際に利用される顕微鏡の総称です。
2022年現在では大きく「光学顕微鏡」「電子顕微鏡」「SPM(走査型プローブ顕微鏡)」の3種類が多く使用されています。(その他にもX線顕微鏡や超音波顕微鏡がありますが、こちらはまだまだ限定的な使い方)
SPMが総称であることから分かるように、細かい分類があります。一般的に多く使用されるのはSTM(走査型トンネル顕微鏡)とAFM(原子間力顕微鏡)の2種類。それぞれの違いについては次の項目で紹介します。
SPM(走査型プローブ顕微鏡)の種類
一般的に活用されるSPMには大きくSTM、AFMの2種類があります。それぞれご紹介しましょう。
STM(走査型トンネル顕微鏡)
STMはトンネル電流を利用し、試料の凹凸を検出する顕微鏡です。SPMの中で最も古い歴史を持ち、1981年に開発されて以来、現在でも使用されている顕微鏡の一つです。
詳しくは以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
トンネル電流を使用することから、導電性物質しか測定できないという欠点があります。そこで開発されたのが、次に紹介するAFM(原子間力顕微鏡です)
AFM(原子間力顕微鏡)
AFMはトンネル電流の代わりに、原子間力を利用して試料の凹凸を検出する顕微鏡です。導電性物質も測定できるようになり、SPMの可能性を大きく広げた顕微鏡の一つです。
詳しくは以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
その他にも、以下のような種類がSPMにはあります。
SPM(走査型プローブ顕微鏡)の社会での活用方法
SPMはナノレベルでの測定が可能です。具体的には以下の分野で活用されます。
DNAの観察
SPMはナノレベルでの測定ができるため、DNAの観察に使用できます。DNAを観察することで、医療分野では疾患などの解明に役立ち、食品分野では品種の表示事項の真偽を確認することもできます。
意外と身近な所に、SPMの活用が役立っているんです。
半導体などの表面粗さの精密測定
SPMは半導体などの表面粗さの精密測定時にも使用されます。
部品の加工面の凹凸は「表面粗さ」と呼ばれます。表面粗さが大きい部品はザラザラとした手触りであり、光の反射が鈍くなります。
また、見た目や手触りだけでなく、摩耗量や機密性にも表面粗さが影響するため、表面粗さを正しく計測することは重要なのです。
SPM(走査型プローブ顕微鏡)の歴史
SPMは1981年、IBMチューリッヒ研究所の「ゲルト・ビーニッヒ」博士と「ハインリッヒ・ローラー」博士により発明された比較的新しい顕微鏡です。
1981年にSTM(走査型トンネル顕微鏡)が発明され、表面の測定だけでなく原子1つ1つを加工できる革命的な発明でした。その結果、1986年に両名はノーベル物理学賞を受賞。
しかし、STMは導電性物質を測定できないという欠点から、1986年、「ゲルト・ビーニッヒ」博士、「カルヴァン・クアート」博士によりAFM(原子間力顕微鏡)が発明され、現在に至ります。
まとめ
今回はSPMの原理と種類についてお話しさせていただきました。最後にポイントを振り返りましょう。
- SPMとは、新しい顕微鏡の総称で、針(プローブ)を利用して試料表面の凹凸を観察する顕微鏡
- 主に「STM(走査型トンネル顕微鏡)」「AFM(原子間力顕微鏡)」の2種類があり、AFMの方が使用されることが多い
- SPMは「DNAの観察」や「半導体などの表面粗さの機密測定」に使用できる
- 1981年STMが開発され、1986年にAFMが開発された
参考サイト
走査型プローブ顕微鏡の原理と応用
AFMの歴史 : 日立ハイテク
走査トンネル顕微鏡発明史の光と影に見る 先端科学技術研究における成功要因
「表面粗さ」とは | ココが知りたい!形状測定 | キーエンス
食品のDNA鑑定 | バイオDNAくらぶ活動 | みんなのバイオ学園