触媒の中でも最近特に注目を集めている「光触媒」。ニュースなどで取り上げられることも多いため、聞いたことがある方も多いと思います。
しかし、説明が難しく理解しにくいことも特徴の一つ。そこで今回は、普段から原子など化学分野に関わる「菅製作所」が、高校生向けにわかりやすく解説させていただきます。
複雑な所は図や動画を用いて解説しますので、光触媒とは何か、社会でどのように使われているか気になる方はぜひご覧ください。
それでは、早速見ていきましょう。
目次
光触媒とは光(紫外線)により反応する触媒のこと
光触媒とは、一般的に二酸化チタンを成分としたコーティング剤のことを指します。光(紫外線)が当たると表面に「酸化還元反応」が起き、有害物質を分解したり、汚れを防止する効果を持ちます。
※人工物のコーティング剤だけでなく、植物の光合成など自然の中にも光触媒反応は存在します。
光触媒には「強力な酸化力を生む」「超親水性」という性質があり、6つのはたらきとして利用できます。
光触媒の6つのはたらき
光触媒には6つのはたらきがあります。
- 大気浄化:待機中のNOxやSoxなど有害物質を酸化分解する
- 防汚:汚れを浮かす
- 脱臭:ニオイ成分を酸化分解する
- 防曇:親水性の高さを利用して曇りにくくする
- 抗菌:ウイルスの外膜を酸化分解する活性を抑制する
- 浄水:活性酵素を利用して水中のヒ素や6価クロムなどを分解する
これだけ見てピンと来る人は多くないと思いますので、社会でどのように使われているか紹介します。
光触媒の社会での活用例
光触媒は「日立製の一部の冷蔵庫」「外壁塗装(光触媒塗料)」「消毒のためのコーティング(ドアノブなど)」「光触媒空気清浄機」などで使用されています。一つひとつ見ていきましょう。
日立製の一部の冷蔵庫
日立製の一部の冷蔵庫では、一部光触媒が使用されているものがあります。具体的には野菜を冷蔵する「新鮮スリープ野菜室」に、LED光源と光触媒を設置。エチレンガスやニオイ成分を分解し、炭酸ガスを生成することで野菜を眠らせるように保存することが可能とのこと。
現在では、光触媒の代わりにプラチナ触媒を使用しているモデルもあります。プラチナ触媒を使用したものについては以下の記事で紹介しているので、冷蔵庫選びの参考にしてください。
外壁塗装(光触媒塗料)
一時期、外壁塗装に光触媒を用いる家が増えました。セルフクリーニング効果を持つ光触媒を利用することで、外壁をキレイに保ち、耐久性の高い外壁を実現すべく塗装されています。
- 太陽光で汚れを浮かせる
- 雨で汚れを洗い流す
- 外壁がキレイになる
ただし、日の当たらない部分では効果が発揮されない、塗装の金額が高いなどのデメリットもあるため、一般的には賛否両論あるようです。検討の際はご注意を。
消毒のためのコーティング(ドアノブなど)
外壁塗装以外にも、消毒のためドアノブなどに光触媒がコーティングされることもあります。
仕組みとしては、光触媒作用により発生した「活性酸素種」が、ウイルスの外膜を酸化分解することでウイルスの活性を抑制するという仕組みです。
ただし、主に表面でしか抗ウイルス作用が発生しないとのことで、空気中へのウイルスを不活性化する効果は期待できないとのこと。つまり、接触感染は防げる可能性がある、ということですね。
光触媒は、コロナウイルス対策として注目を集めた触媒でもあります。現在までの研究で以下のことがわかっています。
- ドアノブなどに塗布することで、酸化反応によりウイルスの分解が期待できる
- 空間に漂うウイルスを不活性化する効果は期待できない
光触媒空気清浄機
空気清浄機にも光触媒が使用されているものがあります。「光触媒フィルター」を使用した空気清浄機は、有害物質や悪臭成分を化学反応で分解し、キレイな空気として吐き出します。
ショッピングセンターやスポーツセンター、旅館などで使用されているなど、近年徐々に人気を高めている光触媒空気清浄機です。
では、光触媒として代表的な酸化チタンを例に、光触媒の仕組みを見ていきましょう。
光触媒の仕組みと化学式の例
光触媒は、主に酸化チタンに紫外線が当たって反応するものを指します。図の方がわかりやすいのでまずは図を見ていきましょう。
言葉で説明すると以下の通りです。
- O2 + e- →O2-(スーパーオキシドアニオンラジカルになる)
- H2O + h +→・OH + H +(ヒドロキシルラジカルになる)
ラジカルは電子を奪うため、強い酸化力を持つということになる。
光触媒の歴史
実は光触媒は日本オリジナルの技術なんです。発明は1972年、水中の酸化チタン単結晶に紫外線を当てると、水が分解され酸素と水素に分解されることを発見したことが光触媒の発明に繋がります。
特に酸化チタンは安定的、安価、再利用が可能と使い勝手が抜群に良かったため一気に広まり、研究が進みます。そして1980年頃、有機物の分解に成功したことから研究範囲が広がり、先ほど紹介したニオイ成分の分解に繋がるんです。
1990年代〜2000年代にシックハウス症候群が問題になった時代に、家庭用の光触媒空気清浄機が誕生。現在では病院やホテルなど多くの場所で使用されています。
そして新型コロナウイルスにより消毒分野でも光触媒が注目されました。実は触媒の中でもかなり身近な存在なんです。
まとめ
今回は光触媒について解説させていただきました。一見難しそうな言葉に見えますが、実は身近なものだということがお分かりいただけたでしょうか。最後にポイントを振り返りましょう。
- 光触媒とは光(紫外線)により反応する触媒のこと
- 光触媒には「強力な酸化力を生む」「超親水性」という性質を利用して社会で活用している
- 光触媒は「日立製の一部の冷蔵庫」「外壁塗装(光触媒塗料)」「消毒のためのコーティング(ドアノブなど)」「光触媒空気清浄機」などで使用されている
- 光触媒は日本オリジナルの技術で、最近でも注目されている。
光触媒以外にも世の中には多くの触媒があります。詳しくは以下の記事で紹介しているので、触媒について興味をお持ちの方はぜひご覧ください。
参考サイト
光触媒って何?【S13-2】
日立,光触媒で食材の鮮度を守る冷蔵庫を発売 | OPTRONICS ONLINE オプトロニクスオンライン
カルテック
光触媒とは?光触媒を室内で使用するメリット・デメリットを紹介
https://cmaj.jp/check/?privfile=47-50-48-49-57-47-48-51-47-49-49-45-49-46-112-100-102&catfile=all
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