アニール処理とは?半導体分野の方式とメリット・デメリットをわかりやすく解説

「アニール処理っていまいちよくわからない、何に使われているの?」

アニール処理そのものはプラスチックの製造などで耳にする言葉かもしれません。一般的にはあまり知られていませんが、半導体分野でも使用されるんです。

そこで今回は、アニール装置を製造する菅製作所が、半導体に関するアニール処理についてわかりやすく解説します。

特に難しい部分は言い換えて説明しますので、アニール処理のイメージを掴みたい人の参考になれば幸いです。

半導体分野のアニール処理は、熱で化学反応や物理的な現象を促進させる

アニール処理は熱処理の一種で、熱で化学反応な物理的な現象を促進させることです。ここでは、半導体の製造過程を元に解説しましょう

半導体は、高密度かつスイッチングの速度の高速化が求められます。そのためには、薄い半導体層を作る必要があり、この過程でアニール処理が必要となるのです。

半導体層を作るため、シリコンウエハーに不純物(異種元素)を注入、壊れた結晶構造を回復させるためアニール処理(熱処理)を行い、フラッシュアニールは表面のみ熱処理を施すことで極めて薄い半導体層を実現できます。

アニール処理の種類

ここでは、半導体分野におけるアニール処理の種類の一例を見ていきましょう。

アニール処理の種類には大きく「バッチ式」と「枚葉式」と呼ばれる方法があります。

バッチ式

バッチ式は、一度に複数枚のウエハーを同時に熱処理する方法で、一気に熱処理できることから大量生産に向く方法です。

石英でできた炉心管にウエハを配置して、外側からヒーターで加熱することでアニール処理を行います。

枚葉式

一枚ずつウエハーを加熱する方法です。シリコンは赤外線を吸収しやすい特性を持つため、赤外線ランプを照射することでウエハを加熱します。

近年では微細化が進み、先端プロセスにおいては「枚葉式RTA(Rapid Thermal Aneeal)」が用いられることもあります。

アニール処理(バッチ式)のメリット・デメリット

ではまず、バッチ式のアニール処理におけるメリット・デメリットを見ていきましょう。

バッチ式のメリット:一度に大量のウエハーを処理可能

バッチ式のメリットはやはり大量のウエハーを一気に処理できることです。その数なんと100枚前後。

以前は横型炉を使用しており、均一性に乏しいものでしたが、近年では縦型炉が使用され、均一性は高く、さらにパーティクルも良好な上、物理的なスペースを取らない形になりました。

バッチ式のデメリット:時間が取られる

一度に処理できるバッチ式ですが、その分ウエハーを入れる時に時間がかかり、炉の温度を上昇させるため時間がかかるといった、時間的なコストが取られるデメリットもあります。

また、回復熱処理には向かないため、回復熱処理目的でアニール処理したい場合は枚葉式を使うのが一般的です。

大量生産には向いているけれど、小回りが効かない方式になっています。

アニール処理(枚葉式)のメリット・デメリット

次に、枚葉式のアニール処理についてメリット・デメリットを見ていきましょう。

枚葉式のメリット:一枚あたりの処理がスムーズ

枚葉式は、ウエハーを一枚あたり数十秒で処理できます。短時間での熱処理により、不純物分布を崩すことなく回復熱処理が可能で、一枚ずつ処理することから少ない量で多くの種類を生産したい時に向いている方法です。

枚葉式のデメリット:大量生産には向かない

枚葉式は一枚ずつ処理する方式なため、多くの枚数を処理しようとすると膨大な時間が取られます。大量生産には向かない方式であるため、バッチ式との棲み分けが重要になってくることを覚えておきましょう。

菅製作所のアニール装置

最後に、私たち菅製作所で製造しているアニール装置を紹介させてください。

SAN1000:簡単操作でエントリーにおすすめなモデル

卓上型の比較的小型サイズのアニール装置。急速昇温と急速冷却が可能であり、処理後の基盤を短時間で取り出せるハッチ式を採用しているため、効率良くアニール処理を行えます。

また、操作が簡単な点も特徴の一つ。事前に設定した昇温条件に従って、自動処理も可能になっています。

安全性も高く、場所も取らないことからエントリーにおすすめのモデルです。

SAN2000plus:比較や複数人で使う時におすすめのモデル

こちらは拡張性が高く、ALD装置、スパッタ装置などの複合装置としてカスタム可能です。

1パターンあたり最大19ステップのプログラムも可能で、最大30種類のプログラムパターンが設定できます。条件を比較したい時や、別用途で使用した後にもすぐに切り替えが可能、研究室を跨いだ使用でも毎回設定することなくご使用いただけます。

まとめ

今回はアニール処理について解説しました。最後にポイントを振り返りましょう。

  • アニール処理は熱処理の一種
  • 半導体分野のアニール処理には「バッチ式」と「枚葉式」がある
  • バッチ式は大量生産に向く
  • 枚葉式は少量多種類の生産に向く

菅製作所では、電池や触媒などテクノロジーに関する情報を多く発信しています。わかりにくい部分をわかりやすく伝える記事を多く掲載しておりますので、参考書がわりにご覧ください。

関連記事

参考サイト

【半導体製造プロセス入門】熱処理の目的とは?(固相拡散,結晶回復/シリサイド形成/ゲッタリング)

半導体のアニール(熱処理)

半導体のアニール工程:装置の種類と特徴

アニール処理について

④3dアニール処理の話

寸法精度とアニール処理

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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