ステップカバレッジ(段差被覆性)とは?良好にするための成膜方法も解説

ステップカバレッジ(段差被覆性)とは?良好にするための成膜方法も解説

本記事では、ステップカバレッジ(段差被覆性)に焦点を絞り解説します。用語そのものだけでなく、なぜカバレッジを気にする必要があるのかまで解説しておりますので、成膜の基礎を知りたい方はぜひご覧ください。

また、カバレッジを良好にするための方法についても解説しております。

ステップカバレッジ(段差被覆性)とは?

ステップカバレッジ(段差被覆性)とは?良好にするための成膜方法も解説

ステップカバレッジとは、成膜する際、基板の表面にある微細な段差部に対し、どこまで成膜できているかの状態のことです。

ステップカバレッジを求めるには、以下の式を使用します。

  • 最も薄い部分の膜厚/平坦部分の膜厚=ステップカバレッジ

ステップカバレッジが良好であるということは、側面や底部、凹凸部に均一な膜厚で成膜できている状態であるということです。影になっている部分まで成膜可能か、と言い換えることもできます。

では、なぜステップカバレッジを気にする必要があるのか?次の項目で、近年の製品の特徴とともに解説します。

なぜステップカバレッジ(段差被覆性)を気にする必要があるの?

ステップカバレッジ(段差被覆性)とは?良好にするための成膜方法も解説

ステップカバレッジは、製品の質に影響を与えます。例えば、影の部分が成膜されていない製品は強度や導電性に難があり、製品としての不具合につながります。

また、段差だけでなくボトムカバレッジ(底面被膜性)、サイドカバレッジ(側面被膜性)も重要です。

近年のトランジスタなどは、高性能化しています。強度を保ちながら性能を上げるには、小さくて深い孔の中に配線を埋め込む必要があります。

つまり、薄膜も孔の中に入り込ませる必要があり、カバレッジの問題は避けて通れません。このような背景から、カバレッジに対する対抗策が練られてきました。次の項目で解説します。

ステップカバレッジ(段差被覆性)を良好にするための方法

ステップカバレッジを良好にするためには、いくつかのポイントがあります。

1.低圧スパッタリング

低圧でスパッタリングを行うことで、飛翔する原子やイオンのエネルギーが増加し、表面に対する垂直入射が増加します。これにより、段差の側壁にも効率よく成膜され、被覆性が向上が期待できます。

2.斜入射スパッタリング

基板を傾けたり、ターゲットと基板の位置関係(配置)を工夫する方法です。斜めからの入射角度を調整し、段差部分への成膜を改善します。

3.回転基板ホルダーの使用

基板を回転させることで、全方向から均一に成膜することができ、段差部分への被覆性が向上します。特に複雑な形状の基板に対して有効です。

4.中間層の導入

複数の層を順次成膜することで、段差部分の被覆性を段階的に改善します。例えば、最初に段差部分を埋めるための中間層を形成し、その上に目的の薄膜を成膜する方法です。

5.スパッタガスの調整

スパッタリングガスの種類や圧力を調整することで、成膜粒子のエネルギーや促進性を制御し、段差部分への成膜効率を向上させます。

上記の方法を選択、組み合わせて使用することで、スパッタリング成膜における段差被覆性を良好にしていきます。具体的なプロセスや条件は、使用する材料や装置に依存するため、ステップカバレッジに課題をお持ちの方は、ぜひ菅製作所へお問い合わせください。

まとめ

ステップカバレッジは、基板表面の微細な段差に対し、どれほど成膜できているかということです。ステップカバレッジが良好であれば、製品に望んだ効果を付与できます。

近年では、トランジスタなどが高性能化し、深い孔を開ける必要が出てきました。孔の中には配線があるため、ボトムカバレッジやサイドカバレッジの良好さも求められます。

菅製作所では、このほかにも専門的な知識をわかりやすく解説する記事を公開しています。参考書が難しい、これから成膜を学んでみたいという方にとって、読み進めやすい記事ですのでぜひご覧ください。

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参考サイト

参考書籍

  • トコトンやさしい薄膜の本
  • 「薄膜」のキホン
  • 絵とき薄膜基礎のきそ
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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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