電気抵抗の基本:オームの法則、抵抗率、身近な応用、そして半導体

私たちは、電気の力なしに生活することはできません。

しかし、電気とは一体何なのでしょうか?

電気を理解する上で欠かせない概念の一つが、「電気抵抗」です。

電気抵抗は、電流の流れにくさを表すもので、私たちの身の回りの様々な電気製品に利用されています。

この記事では、電気抵抗の基本から、オームの法則、抵抗率、そして身近な応用例まで、わかりやすく解説します。

さらに、電気抵抗と密接な関係にある半導体についても触れます。

電気抵抗とは

「電流の流れにくさ」を示したものを電気抵抗といいます。電気抵抗の数値が大きいほど、電流が流れにくくなります。

電気抵抗を理解するには、「オームの法則」と「抵抗率」を知っておく必要があります。

1. オームの法則

【R = V / I】

  • R:電気抵抗(単位:Ω(オーム))
  • V:電圧(単位:V(ボルト))
  • I:電流(単位:A(アンペア))

オームの法則は、電気回路の基本的な関係を表す式です。電圧Vを電流Iで割ることで、電気抵抗Rを求めることができます。

2. 抵抗率の式

【R = ρ ・ (L / A)】

  • R:電気抵抗(単位:Ω(オーム))
  • ρ:抵抗率(単位:Ω・m)
  • L:導体の長さ(単位:m)
  • A:導体の断面積(単位:m²)

抵抗率の式は、導体の材質、長さ、断面積から電気抵抗を求める式です。抵抗率ρは、物質固有の値であり、電気の通しやすさを表します。

電気抵抗器のしくみ

電気抵抗器は、抵抗率の高い材料(例えば、炭素や金属の薄膜)を一定の形状に加工することで、一定の電気抵抗を持つように作られています。

抵抗器に電流が流れると、抵抗体内で電気エネルギーが熱エネルギーに変換され、電流の流れが制限されます。

【電気抵抗器の用途】

  • 電流制限:回路に流れる電流を制限する。
  • 電圧分割:電圧を分割する。
  • 信号減衰:信号の強さを減衰させる。
  • 温度検出:温度を検出する。

電気抵抗器の種類

抵抗器は、電気回路において電流の流れを制限する部品であり、その種類は多岐にわたります。

【機能による分類】

  • 固定抵抗器:回路に組み込まれ、抵抗値が固定された状態で使用されます。
  • 半固定抵抗器:回路の微調整に使用され、抵抗値を調整できますが、頻繁な調整は想定されていません。
  • 可変抵抗器:ラジオのボリュームのように、抵抗値を自由に変えて使用できます。

【形状による分類】

  • リード付きタイプ:リード線を持つ抵抗器で、基板に挿入して使用されます。
  • 面実装タイプ:リード線を持たない小型の抵抗器で、基板表面に実装されます。角形と円筒形があります。

【抵抗体材質による分類】

  • 炭素皮膜抵抗器(通称カーボン)
  • 金属皮膜抵抗器(ニクロムなど)
  • 酸化金属皮膜抵抗器
  • メタルグレーズ抵抗器

電気抵抗と金属

金属は電気を通しやすい「導体」の代表例ですが、電気抵抗はゼロではありません。

金属中を移動する自由電子が、電気を流した際に原子と衝突することが原因です。

衝突するたびに自由電子、つまり電流の流れが妨げられるため、電気抵抗が発生します。

金属は自由電子の存在により電気を通しやすい物質ですが、金属の中でも電気を通しにくいように成分を調整した材料を「抵抗材料」といいます。

金属の電気抵抗は一般的に、温度が上昇するにつれて大きくなります。

金属格子の振動(フォノン)が、その理由の一つです。

絶対零度以外の温度では金属格子が常に振動しており、温度が高くなるにつれて振動が大きくなります。

温度が上昇すると金属中を移動する自由電子と大きく振動している原子がぶつかる回数が多くなり、電気が流れにくくなるのです。

反対に、温度を下げると原子の振動が小さくなり、自由電子が移動しやすくなるため抵抗も小さくなります。

金属の中には、絶対零度付近まで温度を下げると突然電気抵抗がゼロになるものがあり、この現象は超電導と呼ばれます。

電気抵抗の身近な応用

電気抵抗は、私たちの身の回りの様々な電化製品や技術に応用されています。以下に、具体的な例を挙げながら、電気抵抗がどのように活用されているかを解説します。

1. 熱を生み出す:電熱器

電気抵抗は、電流が流れる際に熱を発生する性質を持っています。この性質を利用したのが、電熱器です。

  • ヘアドライヤー:ニクロム線などの抵抗線に電流を流し、発生した熱で髪を乾かします。
  • 電気ポット:抵抗線で水を温め、お湯を沸かします。
  • トースター:抵抗線でパンなどを焼き上げます。
  • 電気ストーブ:抵抗線で空気を温め、暖房器具として利用します。

2. 光を放つ:照明器具

白熱電球は、電気抵抗の高いフィラメントに電流を流すことで光を発生させます。近年では、LED照明が普及していますが、LEDも電気抵抗を利用して光を発生させる仕組みを持っています。

3. 電子回路の縁の下の力持ち:電子機器

電子機器には、様々な種類の抵抗器が組み込まれています。抵抗器は、電流の大きさを調整したり、回路の電圧を分圧したりする役割を果たしています。

  • スマートフォン:内部の回路で、電流や電圧を適切に制御するために抵抗器が使われています。
  • パソコン:マザーボードや各種基板に、無数の抵抗器が搭載されています。
  • テレビ:映像信号や音声信号の処理に、抵抗器が利用されています。

4. 変化を感知する:センサー

電気抵抗は、温度や圧力などの変化によって値が変化する性質を持っています。この性質を利用して、様々なセンサーが開発されています。

  • 温度センサー:温度変化を電気抵抗の変化として検出し、温度を測定します。
  • 圧力センサー:圧力を電気抵抗の変化として検出し、圧力を測定します。
  • 歪みセンサー:物体の歪みを電気抵抗の変化として検出し、歪みを測定します。

これらのセンサーは、自動車や医療機器など、様々な分野で活用されています。

電気抵抗と半導体

半導体は、導体と絶縁体の中間的な電気抵抗率を持つ物質です。

半導体は、現代社会において、なくてはならない存在です。

スマートフォン、パソコン、インターネットなど、情報通信技術は、半導体によって支えられています。高速で大容量のデータ処理、安定した通信、小型化・低消費電力化など、半導体の進化が情報通信技術の発展を可能にしました。

むろんAI、IoT、自動運転など、最先端技術の開発にも半導体が不可欠です。

さてそんな半導体ですが、導体と絶縁体の中間的な電気抵抗率を持つため、外部からの刺激(光や熱など)によって電気抵抗率を変化させることができます。

この性質を利用して、トランジスタやダイオードなどの半導体素子が作られ、現代のエレクトロニクス社会を支えています。

まとめ

この記事では、電気抵抗の基本、オームの法則、抵抗率、そして身近な応用例について解説しました。

電気抵抗は、私たちの生活に欠かせない様々な電気製品や技術に利用されています。

また、電気抵抗と密接な関係にある半導体は、現代のエレクトロニクス社会を支える重要な存在です。

この記事を通して、電気抵抗について理解を深め、電気をより身近に感じていただけたら幸いです。

【参考】

「電気抵抗を分かりやすく解説│抵抗が生じる原因や金属の電気抵抗率一覧」(株式会社 特殊金属エクセル)

「電気の基本:電圧・電流・抵抗」(パナソニック)
「抵抗器の基礎知識」(ROHM)

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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