スパッタ成膜と基板温度の関係
スパッタリング成膜の際、成膜される基板も加熱されてしまうのはご存じでしょうか?
スパッタリングはAr等の不活性ガスで満たされた空間で、ターゲット材料に高電圧をかけ放電することでArが原子化しターゲットに衝突、それにより原子がはき出され、対向基板に付着し薄膜を形成させる成膜方法です。
その際、Arイオンがターゲットにぶつかり熱が発生するため、ターゲット材料裏面に冷却水を流すことにより常にターゲットを冷却しています。
しかしながら、成膜される基板は周辺が真空という断熱材に囲われた状態で50~300Wのプラズマが約50~70mmの目の前にある環境に置かれています。(対象:弊社SSPシリーズ)成膜すればするほど基板温度が上がり、基板の種類によっては制限温度を超えてしまう可能性があるので注意が必要です。
一般的にプラズマの例として蛍光灯があげられますが、家庭でよく使われる40W相当の蛍光灯でも触るとやけどしそうになるくらい熱くなる経験をされた方もいらっしゃるかと思います。
50~300Wの蛍光灯が約50~70mmの目の前にあると想像して下さい。基板の位置にある顔がどれだけ熱せられるかイメージが湧くと思います。
スパッタ成膜と基板温度の関係実測結果(SSP1000キュービックスパッタ装置)
成膜時に成膜される側が何℃になるか気になるお客様向けに社内のキュービックスパッタ装置 SSP1000*を使って温度測定してみたことがあります。
成膜される基板のサイズによって温度の差異は生じますが、下記の図の通り温度上昇のイメージがつかめると思います。また成膜時の温度上昇を抑える目的で、基板ホルダー冷却機構を備えたSSP3000/SSP3000Plusスパッタ装置もご用意しております。
*SSP1000: スパッタリング成膜のエントリーモデルにつき基板水冷機構は備わっていません。
成膜条件
- 機種:SSP1000 キュービックスパッタ装置 社内デモ機
- ターゲット:AL(アルミニウム)
- スパッタ方向:デポダウン
- 温度測定方法:Kシース熱電対
- TS距離(ターゲット-サブスト間距離)=55mm、65mm
- 放電圧力:0.5Pa
- Ar流量:約11sccm
- チラー温度:18℃
- RF電源の投入電力を変更して約60分後の基板付近温度
- 50Wの時に約45℃
- 100Wの時に約60℃
- 200Wの時に約85℃