半導体製造に生かされる「薄膜」をわかりやすく説明します

半導体製造に生かされる「薄膜」をわかりやすく説明します

世界的な半導体不足は今や多くの企業が打撃を受けています。

高性能な電子機器が普及する中、自社製品に使用する半導体をめぐり奔走している状況。

不足となった理由の一つに、半導体の生産に時間がかかることも要因に。

半導体は通常、材料を投入してから製品ができあがるまでに3カ月以上の時間がかかります。

半導体を製造するには多数の工程を経て完璧に機能を果たすものが電子機器に使われています。

その工程に欠かせない技術が「薄膜」。

今回は、半導体の製造工程に重要な「薄膜」の技術、装置、方法などをわかりやすく紹介します。

半導体製造に必要な「薄膜」の基本

「薄膜(はくまく)」とは、薄い膜のことでガラスやシリコン基板などの上に、ごく薄く平滑に堆積した膜のこと。

薄膜は、狭い意味では、「真空成膜技術などで作った膜」のことをいい、広い意味では、めっきや塗装でつくった薄い膜も「薄膜」と呼ばれます。

とにかく薄い膜ほど「薄膜」といわれるのです。

半導体の製造では、細かい回路を作り、薄膜をパターン形状に加工して、積層させています。半導体は薄膜でできているといっても過言ではありません。

では、薄膜を形成するのにどのくらいの薄さが必要とされるのか説明します。

薄膜は、主に厚さが10μm(マイクロメートル)以下の膜のことをいいます。

身近な例で例えると、「紙」。紙の厚さはおよそ60〜70μm(マイクロメートル)。ちなみに、アルミホイルは、10〜60μm。

これに対して、薄膜の厚さは薄いものになると数nm(ナノメートル=1/1000マイクロメートル)というから驚き!

単位がよくわからない方は下記の単位換算表も参考にしてください。

1メートル1ミリメートル1マイクロメートル1ナノメートル
1m0.001m0.000001m0.000000001m
1,000mm1mm0.001mm0.000001mm
1,000,000μm1,000μm1μm0.001μm

薄膜を形成する用途

薄膜を形成する用途は半導体以外にもさまざま活用されているのでここで紹介します。

薄膜を形成する用途

物体の表面の強化や保護

製造業でよく使用する金型や工具は、その表面を固い薄膜で保護することがよくあります。

光の制御

金属製品の表面を薄膜によってさまざまに色付けしたりします。自動車のヘッドライト光源の周りにも光をよく反射する薄膜が使用されています。

テレビ、パソコン、スマートフォンの心臓部分である集積回路

集積回路(IC)は、複雑な電気回路を顕微鏡でしか見えないくらいの小さな世界に閉じ込めたものです。

真空を利用した薄膜加工技術で製造されています。

表示デバイス

ディスプレイパネルなどの表示デバイスは、一般的には薄膜作製技術がキーテクノロジーです。ここにはさまざまな薄膜が用いられています。

光ディスク

各種のコンパクトディスクや様々なデジタルディスクには、アルミニウムの反射膜が成膜されています。

太陽電池膜

シランガスという物質をプラズマ化学蒸着して得られるアモルファスシリコン膜が、太陽電池に使われています。

薄膜を作る方法と技術

薄膜を形成するには下図のようにいくつか種類があります。

薄膜の
作り方
詳細
蒸着法真空にした容器の中で、金属や酸化物などの成膜材料を蒸発させて、対向した基板表面に凝着させて薄膜を形成する手法です。
参考※1.2.3.4
イオンプレーディング(IP)法原理的には蒸着法とほぼ同じですが、蒸着粒子をプラズマ中を通過させることで蒸着材をイオン化させます。成膜させる基板にマイナスの電圧をかけ、イオン化させた蒸着材を加速させながら基板に衝突させることで薄膜を形成させます。イオン化、加速を行うことにより密着性の高い膜を作ることができます。
参考※1.5
スパッタリング法放電によるプラズマ中にできたイオン(通常Ar+イオン)を成膜材料の板(ターゲット)にぶつけて材料をはね飛ばします。はね飛ばされた成膜材料が基板へ飛んでいき薄膜を形成する手法です。スパッタリング法では、高融点金属や合金など、蒸着法では困難な材料でも、成膜が可能で、広範囲な成膜材料に対応できます。
参考※1.5.6
化学気相成長(CVD)法成膜したい元素を含む気体を基板表面に送り、化学反応、分解を通して成膜する方法。CVDの中にも基板を加熱させる熱CVD、反応管内を減圧し、プラズマを発生させるプラズマCVDなどの種類がある。
参考※1.7.8
原子層堆積(ALD)法CVDの1種と言われますが、2種類以上の原料気体(プリカーサー,前駆体)を交互に導入・排気を繰り返し,成膜表面に吸着した原料分子を反応させて膜化する方法を原子層堆積(ALD)といいます。
参考※8.9

参考文献:

※1 書籍「今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい真空の本」 p92-p93
※2 尾池工業株式会社
※3コトバンク
※4ウィキペディア
※5東邦化研株式会社
※6尾池工業株式会社
※7ウィキペディア
※8化学的気相成長法の基本 論文
※9ウィキペディア

成膜条件を決める様々なパラメータを制御して、適切な膜厚、膜の状態を実現する必要があります。

このように考えると、薄膜をつくるには、多くの設備を必要として、また技術ノウハウが大切になることが分かります。

まとめ

今回は「薄膜」の基礎的な知識について紹介しました。菅製作所は、薄膜を形成するのに欠かせない装置を製作しています。

真空装置であるスパッタ装置、ALD装置、蒸着装置などを取り揃えています。

製品の詳細についてはこちらをご確認ください。

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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