「パラジウム触媒って結局何なの?身近にあるの?」
そのような疑問にお答えしたく、この記事を書かせていただきました。
今回は、普段から元素に関わっている「菅製作所」が、パラジウム触媒について噛み砕いてご説明した後、身近な例を出しながらわかりやすく解説させていただきます。
記事を読み終わる頃にはパラジウム触媒のイメージがついていると思いますので、ぜひ参考にしていただけると幸いです。
それでは、早速見ていきましょう。
目次
パラジウム触媒とは
パラジウム触媒とは、パラジウムを含む化合物を触媒として製造したものです。水素化、酸化などの触媒として利用され有機合成には欠かせない存在となっています。
中でも「クロスカップリング合成」に使用され、基礎研究や工業的製造法として使用される方法です。
クロスカップリング合成とは、二つの分子を一つの分子に結合させること
クロスカップリング合成とは、異なる構造をもつ二つの分子を結合させ、一つの分子にする化学反応のこと。パラジウム触媒では「ヘック反応」「根岸カップリング反応」「鈴木カップリング反応」などが用いられています。
パラジウム触媒の社会での活用例
パラジウム触媒は、社会で「ガソリン車のガス浄化」「IHグリル(パナソニック)のフィルター」「医薬品」などに使用されています。一つひとつ見ていきましょう。
ガソリン車のガス浄化
パラジウムは昔からガソリン車の自動車触媒に使われています。具体的には、有毒ガスの浄化をする触媒コンバーターにロジウム、プラチナと共に含まれており、触媒反応によって無毒化します。
- HC(炭化水素)→酸化→H2O + CO2(水と二酸化炭素)
- CO(一酸化炭素)→酸化→CO2(二酸化炭素)
- NOx(窒素酸化物)→還元→N2 + O2(窒素、酸素)
IHグリル(パナソニック)のフィルター
焼き魚などの調理で使用するパナソニック製のIHグリルにも、パラジウム触媒は使用されています。「脱煙・脱臭」のためのフィルターとして使用され、白金触媒と組み合わせたパラジウム触媒により、煙の主成分である炭化水素を水と二酸化炭素に分解します。
やっていることはガソリン車のガス浄化とほぼ同じですね。
医薬品(血圧降下薬・抗がん剤など)
医薬品にも、パラジウム触媒を用いたクロスカップリング合成が使用されています。例えば、血圧降下薬のロサルタン、抗がん剤であるイマチニブなどなど。
分子の解明や触媒性能の解明はこういった医療分野でも役に立つのです。
コラム:パラジウム触媒と自動車の歴史
パラジウム触媒は元々ガソリン車に使用されていました。プラチナ触媒は、元々ディーゼル車に多く使用されており、比較するとプラチナ触媒の方が性能が高いものになります。
ではなぜパラジウム触媒が採用されたのか?その背景には金額がありました。当時パラジウムはプラチナに比べ安価であり、ガソリン車であれば性能も十分であったためパラジウムが採用。
しかし、当時は安かったパラジウムも、ガソリン車の需要増加により価格が高騰。2023年現在ではプラチナ、ゴールドよりも高いものになってしまっています。
そのため、現在ではガソリン車でも多くのプラチナ触媒が含まれ、ロジウム、プラチナ、パラジウムが含まれた触媒コンバーターが使用されることが多いです。
自動車触媒については以下の記事でも解説しているので、興味が湧いた方はぜひご覧ください。
まとめ
今回はパラジウム触媒について解説させていただきました。最後にポイントを振り返りましょう。
- パラジウム触媒は水素化、酸化などの触媒として利用され、特に有機合成の場面で使用される
- 社会では「ガソリン車のガス浄化」「IHグリルのフィルター」「医薬品」などに使われている
- 現在は価格が高騰している
その他の触媒については、以下の記事でも紹介しておりますので参考にしていただけると幸いです。
参考サイト
有機合成におけるパラジウム 触媒クロスカップリング反応
パラジウム炭素触媒
【ビルトインIH】グリルの「煙・ニオイフィルター」の「白金パラジウム触媒」とは何ですか。 – IH調理器/IHクッキングヒーター – Panasonic
パラジウムと有機合成