原子力電池とは?発電の仕組み、長所や短所をわかりやすく解説します

原子力電池は主に宇宙探査で使用される電池で、危険ですがその分長所もあります。

そこで今回は、原子力電池・発電の仕組み、長所や短所をわかりやすく解説します

普段目にすることは無い電池ですが、これからの未来を支える電池でもあるため、一緒に学んでいきましょう。

原子力電池とは?

原子力電池は、放射性同位体の崩壊によって発生する熱エネルギーを電力に変換する電池です。宇宙探査機や遠隔地の無人施設など、電源供給が困難な場所での長期間の使用が可能と実用性の高い特徴を持ちます。

しかし、その分危険性も高く製造、使用には厳しい規則がある、運用には注意が必要といった他の電池よりも活用しにくい点も目立ちます。

原子力電池の仕組み

原子力電池は、放射性同位体が自然崩壊する際に発生する熱を使い、熱電発電素子などを利用して電力に変換します。

熱電発電素子を使った発電の仕組みについては、以下の記事で解説していますのでご覧ください。

熱電池とは?発電の仕組み、長所や短所をわかりやすく解説します【熱をエネルギーに変える魔法の電池】

原子力電池の3つの長所

原子力電池は他の電池と大きく異なる長所があります。それぞれ見ていきましょう。

寿命が数十年単位と長い

原子力電池は、放射性同位体の半減期に応じて長寿命であり、長期間にわたって電力を供給することができます。

その寿命はなんと数十年。実際に探査機に積まれ45年以上稼働しているものがあります。

環境条件に左右されない

原子力電池は、放射性同位体の自然崩壊によって熱を発生させるため、気温や天候などの環境条件に影響されません。そのため、極地や宇宙空間など、厳しい環境下でも使用することができます。

メンテナンスがほぼ不要

原子力電池は、機械的な部品が少なく、化学電池のように電解液の補充や交換が必要ないため、メンテナンスがほとんど不要です。これにより、遠隔地やアクセスが困難な場所での利用が容易になります。

宇宙に打ち上げるとメンテナンスにも莫大な手間がかかるため、これは大きな長所と言えるでしょう。

原子力電池の3つの短所

原子力電池は便利な反面、短所も強烈なものが多いです。一つひとつ見てみましょう。

放射線のリスクがある

原子力電池は放射線を発生するため、使用時や廃棄時に適切な管理を行わないと放射線を浴びてしまう危険な電池です。

使用用途が限られる

原子力電池はその危険性から、使用できる用途が限られます。具体的には、宇宙探査や遠隔地での使用に限られ、日常生活で使えるものではありません。

国際規制がある

放射性物質の使用と取り扱いには国際規制があり、運用が制限される場合があります。日本国内でも、製造や輸送、保管、廃棄について厳しい基準が設けられており、簡単には作れない、使えないものとなっています。

原子力電池の活用例

原子力電池は、主に惑星探査機など宇宙関係の機材に使用されています。中でも、「ボイジャー」と呼ばれる惑星探査機が興味深いので紹介します。

ボイジャー1号・2号(惑星探査機)

1977年に未知の惑星を発見すべく、ボイジャーという惑星探索機が打ち上げられました。驚くことに、2023年5月現在でも動き続けています。

原子力電池は現実的に数十年持つという証明になりました。ボイジャーの現在の活動状況はNASAの公式ページで公開されていますので、興味をお持ちの方はぜひ検索してみてください。

まとめ

今回は原子力電池について解説しました。最後にポイントを振り返りましょう。

  • 原子力電池は放射性同位体の崩壊による熱を利用して発電する
  • 長所は「長寿命」「環境条件に左右されない」「メンテナンスがほぼ不要」
  • 短所は「放射線のリスク」「使用用途が限られる」「国際制約がある」
  • 原子力電池は主に宇宙探査系の機材に使用されている

この他にも電池には多くの種類が存在します。身近なリチウムイオンから、マニアックなニッケル水素電池まで以下の記事で解説しているので、電池に興味がわいた方はご覧ください。


参考サイト

ボイジャー1号の主な成果は? 今どこに? | アストロピクス

発電のしくみ(火力発電と原子力発電)|九州電力

【高校物理】 原子12 放射性同位体の崩壊 (14分)

原子力電池の原理とは?地上でも宇宙でも省エネは重要課題

とにかく長寿命、驚異の「原子力電池」とは?|TOKYO MX+(プラス)

驚異の原子力電池、次世代蓄電池の本命となるか

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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