「酸化銀電池」をご存知でしょうか？意外と身近にあるため、あなたも知らずに使ったことがあるかもしれません。
そこで今回は、酸化銀電池池について解説します。
発電の仕組みや、身近な活用例についても解説しているので、ぜひご覧ください。最後にはコラムとしてボタン電池の「SR」と「LR」の違いについても紹介しています。
目次
酸化銀電池とは？
酸化銀電池は主にボタン電池として使用されることが多く、時計、補聴器、医療機器、電子機器などの小型携帯機器に広く使用されています。
電圧が安定していることが特徴で、長寿命と使い勝手の良い点が特徴で、乾電池が使えないような小型製品でも使える電池のため、現在でも使用されることの多い種類の電池となっています。
酸化銀電池の仕組み
酸化銀電池では、銀の電極（正極）と亜鉛の電極（負極）がアルカリ性電解液に浸されています。電池が放電すると、酸化還元反応（亜鉛が酸化され、銀化合物が還元される）ことで電気エネルギーが生成されます。
化学式で表すと以下の通り。
陽極（正極）反応: Ag2O + H2O + 2e- → 2Ag + 2OH-
陰極（負極）反応: Zn + 2OH- → ZnO + H2O + 2e-
全体反応: Zn + Ag2O → ZnO + 2Ag
酸化銀電池の3つの長所
ここでは、酸化銀電池の代表的な3つの長所を紹介します。
電圧が安定している
放電中に電圧が安定しているため、機器の動作も安定します。アルカリ電池は時間と共に電圧が低下するため、同じパフォーマンスを発揮し続ける必要がある場面では酸化銀電池が採用されます。
長寿命
酸化銀電池は比較的長い寿命を持っています。この理由は、エネルギー密度が高く、電池内の化学反応の効率が高いためです。
液体が漏れにくい
一般的に酸化銀電池は密封性が高く、液体が漏れにくいものが多いです。そのため、機械への損傷の可能性が低いのも長所となります。
酸化銀電池の3つの短所
酸化銀電池には短所もあります。それぞれ見ていきましょう。
高コスト
酸化銀電池には、名前の通り銀を使用しています。銀は希少金属であり、酸化銀電池のコストは他の電池に比べて高くなります。
電流が低く、使える機器が限られる
酸化銀電池は高いエネルギー密度を持っていますが、通常の乾電池などと比較すると電流容量が比較的低いため、高い電流を必要とする機器には不向きです。
大型のものには使用できない
酸化銀電池はボタン電池のような小型のものに使用されます。大型のものに使用できない点は短所になるでしょう。
理由としては、大型の電池になるとより高いエネルギー密度が必要になること、銀の必要量が増えコストに見合わないことなどが挙げられます。
酸化銀電池の活用例
酸化銀電池は意外と身近に使われています。レトロなアイテムにも使用されていたため、あなたも知らず知らず使っていたかもしれません。それぞれ見ていきましょう。
腕時計（クォーツ時計）
クォーツ時計などは酸化銀電池が使用されています。クォーツ時計はかなり精度が高い正確な時計であり、一定の電圧かつ長寿命が求められるため、酸化銀電池が適しているのです。
余談ですが、日本で最初に発売されたのは1969年で、今現在でも販売されています。
フィルムカメラ
フィルムカメラにも酸化銀電池が使用されてます。アルカリボタン電池では電圧が安定せず、明るさが安定しないという難点があり、安定した酸化銀電池のボタン電池が採用されていました。
ですが、カメラ界隈でも最近ではデジタル一眼レフが主流になり、リチウムイオン電池が一般的になっています。
補聴器
補聴器にも酸化銀電池が多く使用されます。補聴器は小型かつ長い寿命が求められるため、酸化銀電池の長所と相性が良いのです。
コラム：ボタン電池のSRとLRの違い
ボタン電池には「SR」や「LR」といった表記があります。実は、以下のような違いがあるんです。
SR：酸化銀電池
LR：アルカリボタン電池
アルカリボタン電池は、酸化銀電池と比べ寿命が短いですが生産コストが低いため、長寿命が必要とされないオモチャや防犯ブザー、LEDライトなどに使用されています。
余談ですが、LR44はゲーム&ウォッチやたまごっちなど小型のゲーム機に使用されていました。当時は高く、中々買ってもらえなかった電池だったのです。
まとめ
今回は酸化銀電池について解説しました。最後にポイントを振り返りましょう。
- 酸化銀電池はボタン電池に使用されることが多い
- 銀の電極と亜鉛の電極による酸化還元反応により発電する
- 長所は「電圧が安定」「長寿命」「液体が漏れにくい」こと
- 短所は「高コスト」「電流が低い」「大型のものに使えない」
この他にも電池には多くの種類が存在します。身近なリチウムイオンから、マニアックなニッケル水素電池まで以下の記事で解説しているので、電池に興味がわいた方はご覧ください。
参考サイト
酸化銀電池「SR」/アルカリボタン電池「LR」｜一次電池｜Biz.maxell – マクセル
【2023年版】酸化銀電池 メーカー6社一覧 | Metoree
