2023年3月、新たな電池の開発に成功したというニュースがありました。その名も「酸素イオン電池」
この記事では、数々の電池を紹介している「菅製作所」が最新の電池である酸素イオン電池についてわかりやすく解説します。
未だ実用化の目処は立っていない、研究段階の電池はありますが、今後大きな期待が持てる電池でもあるので一つひとつ見ていきましょう。
目次
酸素イオン電池は2023年に開発に成功した電池
ウィーン工科大学は、2023年3月に酸素イオン電池の開発に成功したと発表しました。セラミックを使用し、希少元素を使わない電池であることから、現存する高価なバッテリーの代替品としての期待が持たれている電池です。
ただし、まだ実用化までは遠い電池であるため今わかっている段階の情報をお届けします。
酸素イオン電池の仕組み
ウィーン工科大学が研究しているセラミック材料は、二価の酸素イオンを吸収・放出できます。セラミック材料からセラミック材料へ移動する時に電流が発生するというわけです。
仕組みとしては、リチウムイオン電池に近く、リチウムイオンの代わりに酸素イオンが電子を運びます。
リチウムイオン電池の仕組みを知るとよりイメージがしやすいかと思います。以下の記事で解説しているのでご覧ください。
酸素イオン電池の3つの長所
現在判明している特徴から、現段階で期待される酸素イオン電池の長所について紹介します。
1.長寿命が期待されている
先ほどお話したように、酸素イオン電池では酸素イオンが電子を運びます。
リチウムイオン電池ではリチウムが足りなくなるとバッテリー容量が低下し、最終的には使えなくなることがあります。
しかし、酸素が足りなくなったとしても空気中から補充できるためバッテリーを使い続けられるというわけです。
2.比較的安全
仕組みはリチウムイオン電池と似ていますが、セラミックスが不燃材料であるため発火事故のリスクが比較的低いこともメリットの一つです。
特に大型の装置であればある程、発火した時の被害が大きくなります。その面、酸素イオン電池であれば巨大な電池として使用したとしても安全性が高いと言えます。
3.環境にやさしい
素材に希少元素を使用していないため、持続可能な電池で、環境に優しいのも特徴です。
値段が安くなることも期待したいですが、電解質に高価な材料を使用しているためコストダウンはあまり期待できません。
酸素イオン電池の2つの短所
酸素イオン電池には短所も発見されています。
1.常温で使用できない
今段階の酸素イオン電池は、動作温度が200℃〜400℃と限られた温度内でしか動作しません。
そのため、現在リチウムイオン電池が使用されているスマホや電気自動車の代替バッテリーにはならないということです。
ただし、太陽光発電や風力発電などで生まれた大規模なエネルギーを、一時的に貯蔵する場所としては有効な可能性があります。
2.エネルギー密度が低く、容量が少ない
理論上リチウムイオン電池の⅓ 以下のエネルギー密度と言われています。
エネルギー密度は、どれだけ電気を貯蓄できるかという目安で、同じサイズのバッテリーでもエネルギー密度が低いとバッテリー容量も小さくなってしまいます。
まとめ
今回は酸素イオン電池について解説しました。最後にポイントを振り返りましょう。
- 酸素イオン電池は、2023年ウィーン工科大学で開発された新しい電池
- 現在研究段階で、改善が期待される
- 仕組みはリチウムイオン電池に近く、酸素イオンが電子を運ぶことで電流が起きる
- 現段階での長所は「長寿命」「安全」「環境にやさしい」
- 現段階での短所は「常温で使用できない」「容量が少ない」
酸素イオン電池はまだまだ発展途上の電池です。今後も新たな情報が発表され次第、情報を追加していこうと思います。
菅製作所ではその他の電池についても多くの情報を掲載しています。詳しくは以下の記事にまとめてありますので、あわせてご覧ください。
参考サイト