本記事では、酸化膜の成膜方法や最新のニュース、成膜可能な装置までわかりやすく解説します。特に成膜方法については、代表的な方法とそれぞれのメリットについても触れているため、参考にしていただければ幸いです。
酸化膜は半導体分野において重要な役割を担っていますので、半導体分野について知識を深めたい方はぜひご覧ください。
目次
酸化膜とは?
酸化膜は、酸化皮膜(被膜)とも呼ばれるもので、主にシリコンウエハーの表面を保護するための膜です。化学的に安定しているため、多くの半導体製品に使用されています。
また、酸化膜は良好な電気絶縁物でもあり、多層配線間の層間絶縁膜として使用されることもあります。絶縁膜について詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
また、金属面に自然発生するサビも、酸化膜の一種です。サビも保護膜として働きますが、電導性の面で悪影響を与えることが多いため、半導体の製造などでは除去します。塩酸や酸化皮膜除去剤と呼ばれるもので除去することが多いです。
酸化膜の成膜方法
酸化膜の成膜方法についても見ていきましょう。酸化膜の成膜方法は以下の2つの方法で成膜されることが多いです。
- 熱酸化法
- スパッタリング法
熱酸化法
熱酸化法は、その名の通り熱を用いて酸化膜を成膜する方法です。具体的には、酸素雰囲気中のシリコンウエハーを700〜1200℃で加熱することで、シリコン酸化膜が成膜されます。
熱酸化法の中にも、ウェットプロセスやドライプロセスなど細かいプロセスに分かれており、酸化膜の成長速度や厚さにより方法を選択します。
ウェットプロセスは、酸化膜を急速に成長させられますが、均一性・密度が低くなり、制御が難しく、水素などの副生成物も生成してしまうなど難点がある方法です。
ドライプロセスは、高温の酸素を使用してウエハーと直接反応させる方法です。酸化膜の成長速度が遅く、コントロールしやすい特徴があります。
スパッタリング法
スパッタリングは、放電によるプラズマ中にできたイオン(通常Ar+イオン)を成膜材料の板(ターゲット)にぶつけて材料をはね飛ばし、薄膜を形成する手法です。
シリコンウエハーをターゲットとし、酸化物を材料として選択すると、シリコン酸化膜になります。熱酸化法と異なり、物理的な方法での成膜で、付着力が強い、膜圧の制御がしやすい、比較的広い面積に成膜可能などのメリットがある方法です。
酸化膜に関する最新の技術動向
酸化膜におけるナノレベルの成長機構は、今まで謎に包まれた部分もありました。しかし、2022年の原子力機構の研究により、シリコン酸化膜の成長メカニズムが解明されています。
具体的には、酸化膜とシリコンウエハーの界面にある血管で、酸素分子が反応する際、電気の電動に寄与する電子や正孔が関与しているとのこと。この解明により、半導体デバイスの更なる省電力化や小型化、信頼性の向上が期待されています。
酸化膜を成膜可能な装置
酸化膜の成膜は、先述した通り「スパッタリング法」を用いることが多いです。ここでは、スパッタリング法を使用できるスパッタ装置を紹介します。
スパッタ装置(スパッタリング法):SSP1000
SSP1000は卓上型RFスパッタのエントリーモデルです。成膜方向を変更可能なため、成膜する製品ごとに効率の良い成膜を可能にしています。
操作についても簡単さを追求し、真空引きについては開始・停止ともにボタン1つで操作が可能です。複雑なプロセスの多くを自動化することで、機械操作に慣れていない方でもご使用いただけます。
詳細なスペックなどは以下のページで公開しておりますので、ぜひご覧ください。
まとめ
酸化膜は主にシリコンウエハーの保護膜として成膜されることが多い薄膜です。また、良好な絶縁物であるため、層間絶縁膜として多層配線間に用いられることもあります。
成膜方法は熱酸化法・スパッタリング法が用いられることが多く、それぞれ特化した装置が必要です。熱酸化法は酸化膜の成長速度や厚さによりウェットプロセス、ドライプロセスなどを選択して成膜します。
菅製作所では、この他にも薄膜をはじめとした、様々なテクノロジーの情報を公開しています。目に見えないけれど身近にある、毎日使っているものもありますので、ぜひご覧ください。
参考サイト
https://www.chemicoat.co.jp/column/detail_8.html
https://www.st-link.co.jp/technical-removal01.html
https://www.takesugi.co.jp/glossary/058
https://news.mynavi.jp/techplus/article/semicon_equipment-2/