透明導電膜とは?主な種類や社会での活用例をわかりやすく解説

透明導電膜と聞いても、何に使われているかイメージがつきにくいですよね。しかし、意外と身近に使われているものなのです。

この記事を読めば、透明導電膜の主な種類から、身近な実用例まで具体的なイメージがつきます。専門用語を極力使用せず、噛み砕いて解説していますので、専門書が苦手な方もぜひご覧ください。

また、技術者向けの研究結果についても触れているため、参考にしていただけると幸いです。

透明導電膜とは、透明でありつつ電気を通す薄膜のこと

透明導電膜とは?主な種類や社会での活用例をわかりやすく解説

透明導電膜とは、電気を通す性質を持ちつつ、透明(可視光を透過する)な性質を持つ薄膜のことです。ガラスやフィルム上に成膜することで、見た目の透明性を保ちつつ導電性を付与できます。

主にITO薄膜が使用されていましたが、近年では他の透明導電膜が使用されるケースもあります。詳しくは次の項目で見ていきましょう。

透明導電膜の主な種類

透明導電膜とは?主な種類や社会での活用例をわかりやすく解説

透明性導電膜の主な種類について紹介します。

ITO(酸化インジウムスズ)

ITOは、液晶ディスプレイからタッチパネルまで幅広い用途で使用されます。成膜方法は主に電子ビーム蒸着やスパッタリング法などです。

しかし、材料の一つであるインジウムは貴重な金属(レアメタル)です。高価なだけでなく、安定した供給が得られない問題もあります。

このような背景から、現在ではITO薄膜に代わる材料の開発が行われています。

ZnO(酸化亜鉛)

酸化亜鉛は、一部の太陽電池の窓層(透明電極)などに使用されます。ITOが稀少金属であることから、枯渇しにくい酸化亜鉛が代替品として注目されている現状です。

今回紹介する中では発展途上の材料ですが、今後に大きな期待が寄せられている材料でもあります。

FTO(フッ素ドープ酸化スズ)

フッ素ドープ酸化スズは、酸化スズにフッ素を添加させた材料です。主に色素増感型太陽電池やペロブスカイト太陽電池の透明電極に用いられます。

薄膜にした時に高い透明性と電気伝導度を示し、耐熱性も高いことが特徴です。酸化亜鉛同様、ITOの代替品として利用価値が高まってきている材料でもあります。

IGZO(インジウムガリウム亜鉛酸化物)

IGZOは、インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素により構成される人工的な酸化物半導体です。独自の結晶により、安定した性能が発揮できること、従来の20~50倍もの電子移動度の高さを誇り、多くの電流を流せるなど数多くのメリットがあります。

消費電力の低減や、タッチパネルの操作性向上など、スマートフォン・タブレットとの相性が良い点もポイントです。

IGZOは、日本のシャープが、世界で初めての量産化に成功したことでも話題になりました。

透明導電膜の社会での活用

透明導電膜とは?主な種類や社会での活用例をわかりやすく解説

透明導電膜は、意外と身近にあります。例えば「スマートフォンのディスプレイ」「透明ヒーター」「水位センサー」などです。

スマートフォンのディスプレイ

スマートフォンの透明なディスプレイにも、透明導電膜が使われています。スマホのタッチパネルには静電容量方式が使用されており、この静電容量方式に透明導電膜が採用されているのです。

スマホに限った話ではなく、タブレットPCやカーナビなどタッチパネルを使用する製品の多くに透明導電膜は使われています。

透明ヒーター(車のフロントガラスなど)

透明導電膜は透明ヒーターとしても使用できるものもあります。成膜した面に、均一な熱を供給可能で、車のフロントガラスに使用すれば曇り防止として役立ちます。

近年注目を集めているもので、メガネ・ゴーグルなどのアイウェアの曇り防止、固定カメラの氷・雪の除去などへの応用が期待されている分野です。

水位センサー

水位を測定するセンサーにも、透明導電膜は有効です。この技術は、医療現場で応用され、点滴バッグの水位減少を測定できる装置として使用されています。

また、身近なところだと浴槽に設置されている場合もあり、お湯が溜まるとセンサーが作動し、自動でお湯が止まるようになっています。

透明導電膜の最新研究や動向

透明電動フィルムの中でも、特に高い透明性と導電性を両立したフィルムが2023年末に開発されました。日本印刷株式会社とマイクロ波化学株式会社の共同開発であり、2023年12月にサンプル提供が開始されたばかりのものです。

銀ナノワイヤーにマイクロ波を照射し、ナノメートルレベルを実現、新たな透明電動フィルムが生まれました。今後両社は、光学フィルムと組み合わせた各種センサー用途での提供を目指すとのことです。

また、この開発により、寒冷地などでも安全な自動運転の開発に繋がります。新しいテクノロジーは、こういった研究の積み重ねで生まれていきます。

まとめ

透明導電膜とは、透明でありながら電気を通す薄膜のことです。主にITO(酸化インジウムスズ)が薄膜として使用されていましたが、インジウムの希少性による問題で、近年は代替可能な材料が使用されつつあります。

また、透明導電膜はタッチディスプレイや透明ヒーター、水位センサーなど身近なものにも使用されており、近年の技術の進化を支えている薄膜です。

今現在も多くの研究と、新たな材料開発が行われている分野で今後ますますの進化が期待できます。

菅製作所では、この他にも薄膜をはじめとした、様々なテクノロジーの情報を公開しています。目に見えないけれど身近にある、毎日使っているものもありますので、ぜひご覧ください。

参考サイト

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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