金属膜とは?形成方法・分類・応用分野をわかりやすく解説

金属膜は身近にありながら目にする機会はほぼなく、どういった特徴を持つのかわかりにくい薄膜かと思います。しかし、私たちの生活に欠かせない薄膜であることも事実です。

本記事では金属膜について理解を深めるため、わかりやすく解説します。形成方法から、一般的に使用されている金属膜、成膜可能な装置まで紹介しておりますので、金属膜に関心をお持ちの方はぜひご覧ください。

金属膜とは?

金属膜は、シリコンウエハーなどの表面に金属をコーティングした状態であり、薄膜の一種です。金属膜をコーティングすると、接合時の気密性・耐熱性・長期信頼性が上がります。

材料として主に使用されるのは、金、銀、アルミなどが多く、傷や酸化を防ぐために酸化ケイ素の保護膜と合わせてコーティングされることが多くあります。

金属膜の形成方法

金属膜の形成方法には、スパッタリング、CVD(化学気相成長法)、蒸着法などの技術が用いられます。

スパッタリング

スパッタリングは、放電によるプラズマ中にできたイオン(通常Ar+イオン)を成膜材料の板(ターゲット)にぶつけて材料をはね飛ばし、薄膜を形成する手法です。金属膜を成膜したい場合は、金属のターゲットを材料にします。

スパッタリング法では、高融点金属や合金など、蒸着法では困難な材料でも、成膜が可能で、広範囲な成膜材料に対応できることが特徴です。

CVD(化学気相成長法)

CVD(化学気相成長法)は、化学反応、分解を通して成膜する方法です。CVDの中にも基板を加熱させる熱CVD、反応管内を減圧し、プラズマを発生させるプラズマCVDなど手法により細かく種類が分かれます。

蒸着法

蒸着法では、真空雰囲気の中で金属材料を気化蒸発させ、薄膜を形成する方法です。蒸着物質の種類や用途に応じて様々な蒸着源が使われます。

材料の加熱方法はいくつか種類があり、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、ホローカソード蒸着法、高周波誘導加熱蒸着法などに分けられるのも特徴です。

金属膜の分類

金属膜は材料の金属により、特性が異なります。ここでは、代表的な金属膜を見ていきましょう。

ミラー用金属膜コーティング

鏡の反射率を上げるために、アルミや金をコーティングする方法があります。アルミは紫外域、金は近赤外や赤外域の反射率を高めるため、設置場所に合わせてコーティングされることが多いです。

ただし、通常のコーティングを施しただけでは傷に弱い、酸化しやすいなどのデメリットもあるため、保護膜のコーティングと合わせて運用されます。

半導体の金属膜コーティング

半導体では、配線工程という場面で金属膜のコーティングを多く行います。アルミニウムや銅が用いられ、電気抵抗が小さく安定している、低コストで製造可能などさまざまな条件を加味して選定されます。

金属膜の応用分野:Low-E金属膜

金属膜の中にはLow-E金属膜と呼ばれるものがあります。Low-Eとは、低放射という意味で、主にガラスに用いられる技術です。

Low-E金属膜をガラスの内側に張ることで、室内から外へ向かう熱放射を防ぎ、断熱性が得られます。北海道などの寒い地域で人気のガラスで、室内を快適に過ごせるアイテムの一つです。

このように、一見関係ないように見える製品にも金属膜が使われている場合があります。

金属膜を加工可能な装置

金属膜はスパッタ装置、CVD装置などで成膜可能です。ここでは、菅製作所の装置の中から加工可能なものを紹介します。

スパッタ装置:SSP1000

SSP1000は卓上型RFスパッタのエントリーモデルです。成膜方向を変更可能なため、成膜する製品ごとに効率の良い成膜を可能にしています。

操作についても簡単さを追求し、真空引きについては開始・停止ともにボタン1つで操作が可能です。複雑なプロセスの多くを自動化することで、機械操作に慣れていない方でもご使用いただけます。

詳細なスペックなどは以下のページで公開しておりますので、ぜひご覧ください。

SSP1000の詳細を見てみる

蒸着装置:SEV2000Plus

真空蒸着法を用いて、金属膜を成膜できる装置です。タッチパネルによる排気操作を自動で行え、膜厚計により膜圧管理可能なモデルになっています。

主に研究開発に用いられることが多く、弊社のALD装置、スパッタ装置、アニール装置などと容易に複合化できる特徴を持ちます。

詳細なスペックなどは以下のページで公開しておりますので、ぜひご覧ください。

SEV2000Plusの詳細を見てみる

まとめ

金属膜はシリコンウエハーなどに対し形成した金属の薄膜であり、材料となる金属によってさまざまな効果をもたらします。

スパッタリングやCVD、蒸着法などにより成膜可能で、半導体分野やガラス・ミラーなどに用いられることが多い薄膜です。

成膜するためにはスパッタ装置や蒸着装置など、特化した装置が必要になるため、専門的な知識を必要とします。

菅製作所では、この他にも薄膜をはじめとした、様々なテクノロジーの情報を公開しています。目に見えないけれど身近にある、毎日使っているものもありますので、ぜひご覧ください。

参考サイト

https://www.geomatec.co.jp/column/metallize.html

https://www.ocj.co.jp/products/tabid/149/Default.aspx

https://nihon-polymer.co.jp/2023/02/06/4038/

https://semi-journal.jp/basics/process/deposition.html

https://onukikougaku.co.jp/topics/1023.html

https://www.optosigma.com/jp_jp/support/tutorial/optics-and-optical-coatings/technical-referance/optical-coatings

https://www.asahiglassplaza.net/gp-pro/knowledge/vol3.html

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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