小型スパッタ装置とは?特徴・従来型との違いと活用事例について。

小型スパッタ装置

現代の科学技術の進歩において、薄膜作製技術は不可欠な役割を果たしています。

特に、スパッタリング技術は、高品質な薄膜を精密に作製できることから、研究開発や産業分野で広く利用されています。

しかし、従来の大型スパッタ装置は、設置場所やコスト、操作性などの面で課題がありました。そこで注目されているのが、小型スパッタ装置です。

本記事では、小型スパッタ装置の基本原理から、小型化によるメリット、具体的な用途と実用例までを詳しく解説します。

研究開発者や装置選定担当者の方々にとって、小型スパッタ装置の導入を検討する上で役立つ情報を提供します。小型スパッタ装置の多岐にわたる可能性を、ぜひご確認ください。

小型スパッタ装置とは?特徴について

①スパッタリング技術の基本原理

そもそもスパッタリングとは、真空中でイオン化したアルゴンなどのガスをターゲット材料に衝突させ、その衝撃でターゲット材料の原子を飛び散らせて基板上に薄膜を形成する技術です。

この技術は、物理蒸着(PVD)の一種であり、高品質な薄膜を精密に作製できるため、研究開発や産業分野で広く利用されています。

スパッタリングを行う装置を一般的に「スパッタ装置」とも呼んでいます。

②小型化するメリットと用途

それでは、スパッタ装置を小型化するメリットはなんなのでしょうか。

小型スパッタ装置は、従来の大型スパッタ装置に比べて、設置場所、コスト、操作性、研究開発における柔軟性において優位性があります。これらのメリットにより、小型スパッタ装置は、研究開発や試作などの分野で広く活用されています。

従来の大型スパッタ装置と比較すると、以下のようなメリットがあります。

  • 小型化により、研究室や実験室などの限られたスペースにも設置可能です。
  • 卓上型など、よりコンパクトなモデルも存在します。
  • 軽量なモデルが多く、装置の移動やレイアウト変更が容易です。
  • 一般的に、大型装置に比べて導入コストが低く抑えられます。
  • 消費電力やメンテナンスに必要な部品のコストも比較的低く、維持費を削減できます。
  • シンプルな操作系を備えたモデルが多く、初心者でも扱いやすいです。
  • 自動制御機能を搭載したモデルもあり、操作の効率化が図れます。
  • 小型ながらも、様々な材料の薄膜作製に対応するモデルがあります。
  • 研究開発や試作など、多様な用途に活用できます。
  • 小型であるため、実験の準備や段取りが迅速に行えます。
  • 試行錯誤を繰り返す研究開発において、効率的な実験が可能です。
  • 装置によっては、成膜方向を自在に変えられるため、様々な実験構成に対応できます。

▶まとめ

従来の大型スパッタ装置は、主に量産ラインで使用されることを想定して設計されており、高い処理能力と均一な成膜品質を追求しています。そのため、装置自体が大きく、設置には広いスペースと専門的な設備が必要です。また、導入コストや維持コストも高額になる傾向があります。一方、小型スパッタ装置は、研究開発や試作などの小規模な薄膜作製に特化しており、省スペース、低コスト、操作性、多用途性などのメリットがあります。

小型スパッタ装置の用途と実用例

小型スパッタ装置は、そのコンパクトさと多用途性から、研究開発から小規模生産まで幅広い分野で活用されています。

①新材料開発

新しい薄膜材料の組成や構造を変化させながら、その特性を評価するために使用されます。例えば、次世代太陽電池や燃料電池の電極材料、高機能性コーティング材料などの開発に貢献しています。

異なる材料を積層した多層膜の作製も可能であり、新しい機能性材料の創出に繋がっています。

②デバイス試作

半導体デバイス、センサー、MEMS(微小電気機械システム)などの試作品を作製するために使用されます。小型であるため、設計変更や試作を迅速に行うことができ、開発サイクルを短縮できます。

特に、研究室レベルでの試作において、多様な材料や成膜条件を試すことができるため、研究開発の効率化に貢献します。

▶一例

  • 半導体薄膜、誘電体薄膜、金属電極などの作製。
  • センサー、太陽電池、LEDなどのデバイス試作。

③表面改質

材料の表面に薄膜を形成することで、耐摩耗性、耐食性、光学特性などを向上させるために使用されます。例えば、医療機器の表面コーティングや、光学レンズの反射防止膜の作製などに利用されています。

④基礎研究

薄膜の成長メカニズムや物性に関する基礎研究に利用されます。小型であるため、様々な実験条件を容易に設定でき、基礎研究の推進に貢献します。

⑤小規模生産

少量多品種生産や試作品の生産に利用されます。例えば、電子部品、光学部品、装飾品などの製造に活用されています。

大型のスパッタ装置に比べて、導入コストや維持コストを抑えられるため、中小企業やベンチャー企業にとって導入しやすいというメリットがあります。

▶一例

  • 反射防止膜、誘電体多層膜、光学フィルターなどの作製。
  • 光学レンズ、光ファイバーなどの光学部品の製造。

⑥品質管理

製品の表面状態や膜厚を評価するために使用されます。製品の品質向上や安定化に貢献します。

⑦教育分野

大学や研究機関での実験や実習に利用されます。学生が薄膜作製技術を習得するための教育ツールとして活用されています。

まとめ

小型スパッタ装置は、従来の大型スパッタ装置と比較して、設置場所の柔軟性、コスト削減、操作性と利便性、研究開発における優位性など、多くのメリットがあります。これらのメリットにより、小型スパッタ装置は、研究開発から小規模生産、教育分野まで、幅広い分野で活用されています。

特に、新材料開発やデバイス試作においては、小型スパッタ装置の導入により、実験の効率化や開発サイクルの短縮が期待できます。また、中小企業やベンチャー企業にとっては、導入コストや維持コストを抑えながら、高品質な薄膜を作製できるため、競争力強化に繋がります。

今後、小型スパッタ装置は、さらなる技術革新により、より高性能かつ多機能になることが期待されます。薄膜作製技術の発展とともに、小型スパッタ装置の活用範囲はますます広がっていくでしょう。

【参考】

菅製作所「小型スパッタ装置なら狭い研究所でも設置可能!配置変更も出来る卓上型のオススメポイントをご紹介。小さいのに、すごいんです。

菅製作所「スパッタリングとは?基礎的内容をわかりやすく解説!

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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