放電プラズマ焼結法の特長について解説します!
技術解説 ~ 株式会社菅製作所 ~
SPS焼結法は次の構造・加熱機構の特徴を有しています。① 熱と圧力を同時に加える加圧焼結であること、② 型あるいは材料粉末に大電流を直接通電すること、③ ON/OFFパルス通電であること、④ 大電流による電磁場焼結であること、⑤ 型を用いた焼結であること。これらの構造・機構上の特徴から以下の焼結体への効果があると言われています。
(1)短時間焼結・・・粒成長抑制効果、微細構造制御可能
(2)均質な焼結
(3)局所的な急速昇温・急速冷却・・・従来の焼結と特性の異なる焼結体が得られる
(4)緻密化・高密度化
(5)難焼結材料が焼結可能
(6)低温焼結
(7)対象材料が広範囲
(8)高効率・省エネ効果が得られる
(9)温度傾斜焼結・・・セラミックスと金属のFGMに等の複合材料が可能
また、焼結条件を変えると特性が変化するため、焼結条件を変化した試験計画と焼結体の評価を行う、または繰り返すことで、必要な特性を持った焼結体を得ることが可能で粉末冶金の経験と知識がなくても、材料の開発が行えるといったメリットもあります。
実際のSPS焼結法の加熱機構(大電流パルス通電)とこれらの効果発現の原理の解明、現象のリアルタイムでの観察等は、型内部の粉体間での現象で短時間であることなどから十分にはできていない部分が数多くあります。
しかし、SPS法で作製した焼結体が、上記の効果により、従来焼結法で得られる焼結体より性能が向上した、あるいは従来法では作製できなかった焼結体が作製できたという例は枚挙にいとまがないくらい数多くの報告があります。
記載した効果以外にも、プラズマ発生による粉体表面の清浄化・活性化、電解拡散の促進、緻密化理論式での初期速度が大きい等の報告も含めて、SPSプロセスに興味を待った大学・研究所の研究者が研究しており、あるいはSPS装置メーカーとの共同研究等により、原理の解明、効果発現の条件等々が行われていくものと考えられます。
例えば、Spark Plasma Sintering のSpark Plasma(放電プラズマ)については、東北大学金研である条件で放電の発生が報告され、産総研中部センターでは別の条件で放電は発生しなかったというレポートが出てきています。また、SPS焼結中の電磁場の影響についての報告がカリフォルニア大学からされています。このように現象・効果の発現の条件等々も徐々に解明されていくのだろうと考えられています。
このようにたくさんの特長を持ったSPS焼結法ですが、問題点ともいえる側面も少なからず存在しています。次回はこの問題点について学んでいきたいと思います。
放電プラズマ焼結装置(SPS)