注目すべき最先端トレンドのSPS技術を紹介します!
技術解説 ~ 株式会社菅製作所 ~
今回はSPSの応用事例の紹介を予定していましたが、今後3-5年後の新材料開発に大きな影響を与える可能性を秘めた、注目すべき最先端トレンドのSPS技術を紹介することにいたします。(予定していた応用事例は次回掲載いたします。)
超高圧SPS技術は、その名称の通り、加圧焼結であるSPS焼結の加圧力を超高圧とするSPS技術です。一般的なSPSの加圧力範囲はグラファイトを使用した標準型構造で数MPa~200MPa、特殊グラファイト材料、複合型構造、超硬材料の焼結型の場合でも~1GPaが圧力限界と考えられています。超高圧SPS技術では6~8GPaの超高圧を材料に加えて焼結します。
超高圧材料合成技術は1960年代ころから、c-BN等の超硬質材料の合成装置として使用されており、工業用ダイヤモンドの生産手法としても用いられています。この超高圧材料合成技術とSPSのパルス通電加熱を組み合わせた超高圧SPS技術が近年開発されています。超高圧のSPSでは、SPSの持っている特長をさらに際立たせて従来の焼結法、および標準のSPS技術では到達できない材料の焼結が可能となります。
超高圧SPS技術の利点としては、
- ① 超高圧とすることで、低い焼結温度で材料を緻密化することが可能です。
- ② 温度感受性の高い組成物の低温緻密化焼結(ex. HAp)
- ③ 高密度低温相材料の焼結(ex. Anatase-TiO2)
- ④ 高圧下安定構造の材料の焼結(ex. Diamond)
- ⑤ 超高圧を適用することにより、より高密度焼結体が得られます。
- ⑥ 超高圧を適用することにより、化学反応性が向上します。(ex. Borides, Nitrides, Carbides.)
SPS焼結では従来焼結法より低温で焼結できることが特長でしたが、さらに低温化することが可能で、粒成長の抑制が可能となり、ナノ構造制御焼結の効果を発揮します。
この超高圧SPS技術はフランスの国立科学研究センター・CNRSのボルドー(ワインで有名なフランス南西部の港湾都市)にある物質科学研究所(ICMCB / Institut de Chimie de la Matière Condensée de Bordeaux)の研究者が開発しました。論文はこちら
CNRSは、1939年設立のフランス最大の政府基礎研究機関で、教職員総数31,637人(うち正規教職員24,552人、正規研究者11,137人、博士課程学生1,639人)日本の最大国立研究機関である産業技術総合研究所(AIST)が常勤職員2945名(研究職員2258名、事務職員687名)、契約職員3135名、役員7名)のほか、企業・大学・外部研究機関等から約5000人(令和2年度受入延べ数)の外来研究者、と比較してかなり規模が大きいことがわかります。
CNRSでは、研究所だけでなく、大学を含めた共同研究ユニットを構成している例が多く、
ボルドー物質科学研究所も大学を含めた共同研究ユニットとなっています。
超高圧SPS技術は将来的に工業化/生産手法としてその応用が期待されていて、私たち菅製作所も超高圧SPS技術の将来性を見据えて2018年にICMCBとパートナーシップ契約を締結しています。近年そのニーズがますます高まってきており、なるべく早くこの将来性のあるトレンド技術を皆さんに紹介したほうが良いと思い、掲載記事の順番を早めてこの記事を執筆しています。
CNRSと当社の契約は、超高圧の開発についてはICMCBを, 超高圧SPS装置の設計・製作および工業界へのアプローチについては菅製作所を主たる担当とし、両者が協力して超高圧SPS技術の技術開発の促進、産業界への超高圧SPS技術の浸透を行うという内容となっています。
CNRSボルドー研究所と菅製作所との直接の契約である点についても、ご注目ください。
CNRSボルドーの研究者が当社の技術力・開発力を高く評価してくれている証明ともいえると思います。
この記事をご覧になられて、超高圧SPS技術の応用、製品の生産等々のご興味をお持ちになられた方は、是非私たちにご連絡ください。フランス最大の研究機関であるCNRSのICMCBの研究者、技術者とともに、皆さんの製品の研究、生産のお手伝いをいたします。
皆さんは以下の支援を得ることが可能です。
- ICMCBでの実践的なデモンストレーション
- ICMCBでのHP-SPS実験による材料の実験試験
- アプリケーション向けにHP-SPSプロセスを最適化
- 高圧下でのSPS装置の技術開発
- ニーズに合わせた他の技術応用の検討
SPSと高圧技術に関する専門知識を組み合わせたICMCBのHP-SPS装置を使用して、
この技術に関心のある皆さんに適切なソリューションを提案することができます。
次回は予定していましたSPS焼結の応用事例について述べたいと思います。
放電プラズマ焼結装置(SPS)