SPS焼結の具体的な応用事例についてご紹介します!
応用事例紹介 ~ 株式会社菅製作所 ~
短時間焼結、均質焼結、微細構造制御、温度傾斜焼結等様々な特長を持ったSPS焼結法ですが、そんなSPS焼結の具体的な応用事例についてご紹介したいと思います。
従来焼結法との比較、微細構造制御の例等々、以下の分類で事例をご紹介いたします。
個々の具体的例は分類のご紹介後にそれぞれについて行いたいと思います。
(a) 従来焼結法との比較・改善
急速昇温、ON/OFFパルス通電等の効果により、従来焼結法と比較してより強度、硬度等の優れた焼結体が得られます。また、SPSで焼結することで、従来得られなかった性能を有する焼結体の作製が可能となっています。
(b) ネットシェイプ、ニアネットシェープ焼結
焼結したあと、加工を必要とせず、完成品に仕上げることを、ネットシェイプ (Net shape) と、完成品に近い状態に仕上げることを、ニアネットシェイプ (Near net shape) と言います。どちらも焼結後の後加工を削減あるいは完全になくすことができますので、コストダウン、品質の安定化、材料歩留まりの良さといった効果があり、環境に配慮する生産手法として注目を集めています。
(c) 切断・研削工具への応用
ダイヤモンド等の高硬度材料を用いた切断・研削工具では焼結時の高温によるダイヤモンド等の劣化が切断・研削性能に直結します。SPSの短時間焼結の特長を生かして、ダイヤモンド等の硬質材料が劣化させずに緻密化することで、切断・研削性能の優れた工具を製造することができます。
(d) 微細構造制御焼結
誘電体等の機能性材料では、粒径が特性に大きく関わる場合があります。
粒径が小さすぎても、大きくても必要な特性とならない、適度な粒径が求められるチタン酸バリウムの誘電特性の例では、1-2ミクロンの粒径が最適であり、SPSの短時間焼結を活かして昇温速度・保持時間を適度にすることで、求める粒径の焼結体、必要な誘電特性を得ることができます。
(e) 傾斜機能材料の焼結例
自然界を見れば、竹、貝殻、わたしたちの皮膚など傾斜機能材料に溢れていますが、
従来の材料では達成できない革新的な性質や機能を実現するための新しい概念として
傾斜機能材料 (Functionally Graded Materials: FGMs) が日本の材料研究者から提言され、熱応力緩和型傾斜機能材料を中心に、研究開発が行われるようになってきています。
例えば、片面は金属であるSUS340Lの健全な組織・性質を有するステンレス鋼材で反対側の面はZrO2の健全な組織・性質を有するセラミックスというステンレスージルコニア系傾斜機能材料等があります。
(f) 多数個同時焼結
大量生産、低コストを実現するのに欠かせない重要な技術の一つといえます。
焼結体を焼結型の中で縦に複数個焼結する多層焼結、焼結体を平面上に並べたマルチキャビティ焼結、それらを組み合わせた複合型多数個取りがあります。
いずれの方法でも、均質な焼結体を得るための、温度・圧力の均質化が求められます。
特に温度の均質化のためには、複数点の温度測定と測定した温度の制御への多様化等の工夫がされています。
(g) 焼結以外の接合・材料合成
SPS焼結法を用いて、焼結以外の用途に応用している例があります。
例えば、接合。接合方法には、固体 / 固体、固体 / 粉体、固体 / 粉体 / 固体、粉体 / 粉体等のバリエーションがあり、同材料同士、異種材料との接合の組合せがあります。
一般的に行われる溶接・ロー付けと違い、面全体での接合であり、ロー付けの様に接合材を使用しないので、耐熱性が高く、接合面の高強度が得られます。
実施例では、接合強度が材料強度を上回っていることもあります。
接合以外では、材料合成の応用例があります。
単結晶材料の合成に成功したドイツのマックスプランク研究所の特許に代表される単結晶材料の合成の他、共晶体の合成、ポリイミド樹脂粉末の固化成形等の応用例があります。
次回以降は応用事例のそれぞれの具体例について述べたいと思います。