STM(走査型トンネル顕微鏡)は、SPM(走査型プローブ顕微鏡)の一種です。SPMについて知りたい方は以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
この記事では、STMはどのような仕組みで試料を観測しているのか、わかりやすく解説していきます。
普段から原子に関わる仕事をしている「菅製作所」だからお伝えできる情報をお届けしますので、参考にしていただけると幸いです。
それでは、早速見ていきましょう。
目次
STM(走査型トンネル顕微鏡)とはトンネル電流を利用した顕微鏡
STMは、金属探針と導電性試料の間にあるトンネル電流を検出して、表面の凹凸を検出する顕微鏡です。
STMの中には多探針走査型トンネル顕微鏡というものがあり、2〜4本の針を使用しナノスケールの試料の特性を測定することができるものもあります。
また、表面の測定だけでなく、原子1つ1つを加工できる特徴も持ち合わせており、試料表面をナノメートルレベルで加工することができるようになりました。
欠点としては、トンネル電流を用いているため、電流を通さない物質は測定できないという点です。導電性物質の測定にはAFM(原子間力顕微鏡)が使用されます。
STM(走査型トンネル顕微鏡)の仕組み
STMの探針を装着するカンチレバーには、ピエゾ素子が使用されています。ピエゾ素子に電圧を加えることで歪ませ、針と試料の距離を調整することで試料表面の凹凸を検出できるという仕組みです。
試料と針の距離が遠ざかるほど、トンネル電流が弱くなり、近づくほどトンネル電流が強くなります。この電流の強さに対し、初期位置に戻すことで表面の大きさを計測する、といった方法になります。
STM(走査型トンネル顕微鏡)の実像サンプル
STMであれば、原子を一粒サイズまで見ることができます。
実像サンプルを見ると、原子同士のつながりを確認でき、教科書などでイメージ図で示されているものがくっきりと見ることができます。
実像サンプルについては以下のページに掲載されておりますので、ご覧ください。
走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope: STM)
STM(走査型トンネル顕微鏡)の歴史
STMは走査型プローブ顕微鏡という種類の中で、最も古く開発された顕微鏡です。1981年、IBMチューリッヒ研究所の「ゲルト・ビーニッヒ」博士と「ハインリッヒ・ローラー」博士により開発されました。
表面の測定だけでなく、原子の加工もできる革命的な顕微鏡でしたが、導電性物質を測定できないという欠点も。この欠点は、後のAFM(原子間力顕微鏡)の開発の種となります。
まとめ
今回はSTM(走査型トンネル顕微鏡)について解説させていただきました。最後にポイントを振り返りましょう。
- STMとは、金属探針と導電性物質の間に発生するトンネル電流を利用して試料表面の凹凸を測定する顕微鏡
- 他探針走査型トンネル顕微鏡では、特性も測定することができる
- 表面の測定だけでなく、原子1つ1つを加工することができる
- 導電性物質のみしか測定できないという欠点もある
- STMは1981年に開発された
STMはSPM(走査型プローブ顕微鏡)の一種であると冒頭にお話ししました。SPMについて詳しくは以下の記事で解説しておりますので、あわせてご覧ください。
参考サイト
走査型トンネル顕微鏡
HOW TO サイエンス (5)原子を見て操る方法
走査トンネル顕微鏡発明史の光と影に見る 先端科学技術研究における成功要因
走査型トンネル顕微鏡によるナノ塑性加工