今回は酸化ハフニウムについて解説します。聞き馴染みの無い化合物かもしれませんが、意外と身近なものにも使われているので、ぜひご覧ください。
特に強誘電体メモリという種類のメモリがキーワードになってきますので、一緒に紐解いていきましょう。
酸化ハフニウム(ハフニア)とは
酸化ハフニウムは、ハフニウムの化合物の一種で、比較的安定な化合物です。
酸化ハフニウムという名前の通り、ハフニウムと酸素が結合して生成されます。
紫外域用の高額部品にも使われる化合物ですが、他の汎用酸化物に比べるとコストが高く使用用途は限られます。
最近では、酸化ハフニウムナノ粒子によりcGAS-STING経路活性化を改善することが判明し、がん治療の医療分野でも注目を集めている化合物でもあります。
屈折率が高いため、薄膜を作る際基板との密着性が高く、耐摩耗性も高いことが特徴で、絶縁膜として使用されることもあります。
酸化ハフニウム(ハフニア)の歴史
酸化ハフニウムは様々な分野で注目を集めた化合物です。ここではその一例をお話ししましょう。
酸化ハフニウムは特に「強誘電体メモリ」の業界で注目を浴びた化合物です。従来のメモリではサイズの問題があり、機能を保ったまま小型化することが難しい状態でした。
そんな中、ドイツの研究機関が酸化ハフニウムとシリコンをわずかに混ぜた強電導体の酸化ハフニウム薄膜を完成させます。
これまでのメモリでは実現できなかった「薄くて高機能なメモリ」が、酸化ハフニウムの力で実現。従来の10分の1ほどの薄さになりました。
では、そこまで薄くなった強誘電体メモリはどこに使われているのでしょうか?実は、あなたも使っているかもしれません。
酸化ハフニウム(ハフニア)の社会での活用方法
酸化ハフニウムを用いた、強誘電体メモリは身近なものに使用されています。Suicaなどの「交通系ICカード」です。
強誘電体メモリには「低電圧で動作する」「高速で動作する」「書き換え回数が多い」といった特徴があります。
改札を通る時にあの速度で決済できるのも、セブン銀行のATMでチャージできるのも、長い機関使い続けられるのも酸化ハフニウムがあってこそなのです。
酸化ハフニウムはALD装置でも使用されている
また、酸化ハフニウムはALD装置でも使用されます。ALD装置とは、薄膜を生成(成膜)する装置の一種で、研究開発用の装置としての使用が主です。
ALD技術により、トランジスタのリーク電流を抑えるためにハフニウム酸化膜を使用するなど、現代のテクノロジーを支えるものになっています。
菅製作所で作成しているALD装置にも、酸化ハフニウムを使用しての成膜が可能です。詳しいスペックなどは以下のページにまとめてありますので、関心をお持ちの方は一度ご覧いただけますと幸いです。
まとめ
今回は酸化ハフニウムについて解説しました。メモリ業界の厚さの問題を一気に解決した化合物で、交通系ICにも使用される有用なものです。知らず知らずのうちに使っているけれど、紐解くと意外な化合物だったということはよくあります。
菅製作所では、この他にも化合物についてや元素について、各種電池についてなど専門的な内容をわかりやすく紹介する記事を多く公開しています。「興味はあるけれど専門書は難解過ぎてわからない」「ネット上に情報が少なくて困っている」などお困りのことがありましたらぜひ一度ご覧ください。
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参考サイト
https://www.titech.ac.jp/news/2016/036092
https://www.toishi.info/pro/seimaku/hfo2.html
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201902248058824902
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01267/00046/
http://www.shinwa-bussan-kaisha.co.jp/product_hafnium_oxide.html
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/741709.html
http://www.hyoka.koho.titech.ac.jp/eprd/recently/research/60.html