SPS焼結の応用具体的事例 ①従来焼結法との比較・改善について

前回の記事で、「SPS焼結の応用事例について」として7つの分類を紹介させていただきました。

今回は、その中から「従来焼結法との比較・改善」について、より具体的な内容をお伝えします。

従来焼結法との比較・改善


急速昇温、ON/OFFパルス通電等の効果により、従来焼結法と比較してより強度、
硬度等の優れた焼結体が得られた例として、以下を紹介します。

従来焼結法のホットプレスとの比較の例 (注) ですが、

Fig. 1 に各焼結温度の影響を示します。

加圧力30 MPa、保持時間5 分の条件下での炭化ケイ素セラミックスの緻密化に関するスパーク プラズマ焼結とホットプレスの比較です。

ホットプレスの場合、焼結温度は1800℃以下の成形体の相対密度は90%以下でしたが、焼結温度2000℃では相対密度が98%以上となっています。 一方、放電プラズマ焼結は1700℃、1750 ℃では、それぞれ約 70% と約 90% の相対密度が得られました。


ホットプレスよりも約200℃低い1800℃で焼結すると、相対密度98%という緻密な焼結体が得られました。このように、放電プラズマ焼結法は炭化ケイ素セラミックスの緻密化にホットプレス法よりも大きな効果が認められました。これは粒子間の微小な放電による自己発熱、粒子表面の活性化、高速物質移動などが有効に作用したためと考えられます。 

放電プラズマ焼結とホットプレスによる炭化ケイ素セラミックス焼結体をX線回折法により調査しました。1700℃でホットプレスした焼結体では、β – SiC、Al203、Y203 の出発原料と同様の物質が検出されています。

β – SiC,Al2O3,イットリウムアルミニウムガーネット (YAG; Y3Al5O12) とβ -SiC,イトロアルマイト (YA; Y3Al5OI2) をそれぞれ1800〜1900℃と2000℃で観察した。 一方、放電プラズマ焼結では、β – SiC、Al2O3、Y2O3は1600℃、1700℃で観察された。β – SiC,YAG および YA は 1750 〜 1850 ℃で観察された。 YA相は、1970℃付近でYAG相から転移して現れる。

上記の結果は、放電プラズマ焼結においては、焼結体の内部温度が実際には測定温度よりも高い可能性があることを示唆しています。  

Fig. 2試験片の室温における曲げ強さ

 ホットプレスの場合、曲げ強度は焼結温度とともに増加していますが、2000℃の高温の焼結温度でも約630MPaの強度しか得られませんでした。

    一方、放電プラズマ焼結ではホットプレスと同様に焼結温度の上昇とともに強度が増加し、1700℃以上で焼結すると急激に強度が増加します。 1800℃の焼結温度では平均強度850MPaが得られ、2000℃で30分間ホットプレスした焼結体の強度である730MPaを超えています。

    焼結体の緻密化度は、1800℃での放電プラズマ焼結は、2000℃でホットプレスして得られる焼結体とほぼ同等ですが、曲げ強度は図2に示すように大きく異なり、放電プラズマ焼結ではホットプレスを遥かに超えた強度を示しています。

(注) 参考資料 
Effect of Spark Plasma Sintering on Densification and Mechanical Properties of Silicon Carbide / Nobuyuki TAMARI, Takahiro TANAKA, Isao KONDOU, J of Ceramics Soc. Japan, 103 740 – 742 (1995)

次回は炭化ケイ素セラミックスのホットプレスと放電プラズマ焼結のビッカース硬度の比較について、紹介します。

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株式会社菅製作所

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