窒化膜はシリコン窒化膜とも呼ばれ、半導体分野をはじめとした多くの分野で使用されています。しかし、日常的に耳にしない分イメージがつきにくいのも事実です。
そこで本記事では、窒化膜の特性や成膜方法、最新の技術動向から成膜可能な装置の紹介までわかりやすく解説します。
窒化膜は特に半導体分野で重要な役割を持ちますので、半導体に興味をお持ちの方はぜひご覧ください。
目次
窒化膜とは?
窒化膜は、主にシリコン窒化膜のことを指します。シリコン窒化膜は、主に保護膜や酸化膜をエッチングする際のストップ層として用いることが多い薄膜です。
保護膜として、酸化膜が使われる場合もありますが、窒化膜の方が化学安定性や耐摩耗性に優れています。さらに、マスク材料、絶縁膜、水分バリア膜、酸化バリア膜など幅広い用途で使用されることもあります。
窒化膜の成膜方法
窒化膜にはいくつかの成膜方法があります。ここでは、代表的な「熱窒化法」「スパッタリング法」「CVD法」を紹介しましょう。
熱窒化法
熱窒化法は、シリコンウエハーを窒素雰囲気中で高温加熱し、窒化膜を得る方法です。反応ガスにはN2、NH3、N2H4などを用い、加熱炉で700〜1200℃の高温で熱処理を行います。
酸素の混入を排除した熱窒化膜は、耐酸化性、不純物の拡散マスク性などに優れていますが、処理温度が1100℃以上必要と課題も残っているのが現状です。
また、シリコンウエハー上の酸化膜を熱窒化し、シリコン窒化酸化膜を得る方法もあります。
スパッタリング法
スパッタリングは、放電によるプラズマ中にできたイオン(通常Ar+イオン)を成膜材料の板(ターゲット)にぶつけて材料をはね飛ばし、薄膜を形成する手法です。
シリコンウエハーをターゲットとし、窒化物や酸化物を材料として選択すると、シリコン窒化膜になります。
CVD法
CVD法は化学的気相成長の略で、その名の通り化学反応を用いて成膜する方法です。気体に窒素を含んだガスを選択し、シリコンウエハーに対し反応させることでシリコン窒化膜を成膜できます。
窒化膜に関する最新の技術動向
株式会社ダイセルが発表した、「ナノひっつき虫™」は、シリコン窒化膜に強い親和性を示す吸着剤です。これにより、シリコン窒化膜のみに絞り樹脂膜を形成でき、保護膜として機能させられます。
性状が似ているシリコン酸化膜とシリコン窒化膜があっても、シリコン窒化膜だけに吸着し樹脂膜を生成するため、前例のない画期的な吸着剤になりました。
窒化膜を成膜可能な装置
最後に、窒化膜を成膜可能な装置について紹介します。
スパッタ装置(スパッタリング法):SSP1000
SSP1000は卓上型RFスパッタのエントリーモデルです。成膜方向を変更可能なため、成膜する製品ごとに効率の良い成膜を可能にしています。
操作についても簡単さを追求し、真空引きについては開始・停止ともにボタン1つで操作が可能です。複雑なプロセスの多くを自動化することで、機械操作に慣れていない方でもご使用いただけます。
詳細なスペックなどは以下のページで公開しておりますので、ぜひご覧ください。
まとめ
窒化膜とは、主にシリコン窒化膜のことで、保護膜や酸化膜エッチングの際のストップ層として用いられます。科学的安定に優れており、幅広い用途で使用可能です。
成膜方法には熱窒化法、スパッタリング法、CVD法などがあります。いずれも特化した装置を必要とするため、専門的な知識が必要です。
菅製作所では、この他にも薄膜をはじめとした、様々なテクノロジーの情報を公開しています。目に見えないけれど身近にある、毎日使っているものもありますので、ぜひご覧ください。
参考サイト
https://semi-journal.jp/basics/si-chem/sin.html