真性半導体と不純物半導体の比較:電気特性の相違と応用について

半導体は、その電気伝導率が導体と絶縁体の中間にある物質として知られています。中でも、真性半導体は純粋な半導体であり、不純物を一切含まないことが特徴です。

しかし、電子機器に利用するためには、この真性半導体に手を加える必要があります。そこで登場するのが、不純物を意図的に添加した不純物半導体です。

本稿では、真性半導体と不純物半導体の違い、そして不純物半導体の種類や働きについて詳しく解説します。

真性半導体とは純度の高いシリコン結晶

真性半導体とは、不純物を一切含まない、純粋な半導体のことです。シリコンやゲルマニウムなどが代表的な例として挙げられます。

真性半導体の特徴

  • 純粋さ:ほぼ100%の純度で構成されており、不純物が極めて少ないです。
  • 電子と正孔の数:電子と正孔の数が等しく、電気的に中性です。
  • 電気伝導率:室温では電気を通しにくく、絶縁体に近い性質を持ちます。
  • 温度依存性:温度が上がると、電子が価電子帯から伝導帯へ励起され、電気伝導率が上昇します。

真性半導体では、絶対零度においては全ての電子が価電子帯を満たしており、伝導帯には電子が存在しません。

そのため電気は流れません。しかし、温度が上昇すると、一部の電子が価電子帯から伝導帯へ励起され、電子と正孔が生成されます。この電子と正孔が、それぞれ負の電荷と正の電荷として働き、電気伝導に寄与します。

真性半導体の応用

真性半導体そのものは、電気伝導率が低いため、そのまま電子部品として利用されることは少ないです。

しかし、真性半導体に不純物を意図的に添加することで、電気伝導率を制御し、様々な電子部品を作ることができます。そのときにできた半導体を「不純物半導体」と呼びます。

真性半導体は、半導体の基礎となる物質です。その純度の高さは、半導体デバイスの性能を大きく左右します。真性半導体に不純物を加えることで、n型半導体やp型半導体などの様々な種類の半導体が作られ、現代の電子機器の基盤となっています。

以下で詳しくみてみましょう。

不純物半導体

あらためて定義すると、「不純物半導体」は、真性半導体に特定の不純物を意図的に添加することで作られる半導体です。

スマートフォン、パソコン、テレビ、自動車。不純物半導体は、私たちの生活に欠かせないあらゆる電子機器の中に使用されています。

真性半導体は、その純度が高いため、室温付近では電気を通しにくい性質を持っています。

しかし、電子機器の動作には、より高い電気伝導率が求められます。そこで、不純物を添加することで、半導体の電気伝導率を意図的に変化させるのです。

添加する不純物の種類によって、「n型半導体」と「p型半導体」の2種類に大別されます。

n型半導体リン (P)、ヒ素 (As)、アンチモン (Sb) などの5価の元素を添加することで、余分な電子が生じ、電子が多数キャリアとなります。
p型半導体ホウ素 (B)、アルミニウム (Al)、ガリウム (Ga) などの3価の元素を添加することで、電子が不足し、正孔が多数キャリアとなります。

n型半導体とp型半導体を接合することで、様々な電子部品を作ることができます。

例えば、ダイオードは一方向にしか電流を通さない素子であり、トランジスタは電流を増幅したり、スイッチングしたりする素子です。これらの素子は、私たちの身の回りの電子機器に広く利用されています。

不純物添加(ドーピング)の方法:熱拡散とイオン注入

ドーピングには、主に「熱拡散法」と「イオン注入法」の2つの方法があります。

近年は、半導体デバイスの微細化が進み、より高精度なドーピングが求められており、現在はイオン注入法が主流となっています。

しかし、熱拡散法も、大ロット生産など、特定の用途においては依然として重要な役割を担っています。

①熱拡散法

高温の炉内で、半導体ウエハーに不純物ガスを接触させることで、不純物をウエハー内部に拡散させていく方法です。

【メリット】

  • 大量のウエハーを一度に処理できるため、生産効率が高い
  • 大量生産に向いており、コストを抑えたい場合に適している

【デメリット】

不純物濃度や深さの制御が難しく、微細なパターン形成には不向き。高温処理が必要となるため、ウエハーに熱応力がかかり、変形や割れが発生する可能性がある。

②イオン注入法

不純物をイオン化し、高エネルギーで半導体ウエハーに打ち込む方法です。

【メリット】

  • 不純物濃度や深さの制御が非常に高精度
  • 微細なパターン形成が可能
  • 高精度なドーピングが必要な場合や、微細なパターン形成が必要な場合に適してる

【デメリット】

  • イオンビームの照射により、結晶構造が損傷するため、熱処理による修復が必要
  • 装置が複雑で高価

まとめ

以上みてきたように、真性半導体は、その純度が高いため、室温付近では電気を通しにくいという特徴があります。

しかし、不純物を添加することで、電気伝導率を制御し、私たちの生活を支える様々な電子機器を実現しています。

不純物半導体は、n型半導体とp型半導体に大別され、それぞれの特性を生かして、ダイオードやトランジスタなどの電子部品が作られています。

これらの部品が、コンピューター、スマートフォン、テレビなど、現代社会に欠かせない電子機器の心臓部として機能しているのです。

【参考】

『半導体に不純物が入ると?材料による違いは?』

「半導体にも種類がある? 不純物半導体と真性半導体の違い」(Rittal-The System)

「何をどれだけ含めば不純物半導体?真性半導体との違いや純度の話」(日本ポリマー)

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
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