
真空技術を扱う研究や製造の現場では、「どの真空計を使うか」が測定精度や作業効率を大きく左右する重要な要素です。
本記事では、主な真空計の種類とそれぞれの原理、測定精度や耐久性を考慮した選び方のポイントまでわかりやすく解説します。
「何を測るための真空計なのか」という目的を起点に、自分の用途に最適な一台を選ぶための判断基準を整理していきましょう。
長年の経験と独自の技術で、大学や研究機関での導入実績も多数。
研究目的に応じたカスタマイズや、導入前のテスト成膜も可能です。
装置のご検討やその他ご相談は、ぜひ当社までお問い合わせください。
お問合せはこちら目次
真空計の種類と原理
ピラニ真空計
ピラニ真空計は、熱伝導の変化を利用して圧力を測定する真空計です。
内部に設けた加熱フィラメントが放つ熱が、ガス分子の多さによって冷却される度合いを検出し、圧力に換算します。
構造がシンプルで耐久性が高く、10⁰~10⁻¹Pa程度の中真空領域でよく使われます。
研究装置や工業用の真空ラインなど、幅広い分野で活躍する汎用的な真空計です。
隔膜真空計
隔膜真空計は、薄い金属膜(隔膜)の変形を利用して圧力を測定する真空計です。
圧力が加わると隔膜がわずかにたわみ、その変位量を電気信号として検出します。
構造がシンプルで応答性も良く、研究機器や産業装置の圧力モニタリングによく用いられます。
ブルドン管真空計
ブルドン管真空計は、金属の弾性変形を利用して圧力を測定するアナログ式の真空計です。
内部がカーブした金属管に圧力がかかると、その管がわずかに伸びようとする性質を利用して針の動きに変換します。
構造が頑丈で、電源を必要とせず扱いやすいのが特長です。
主に粗真空(大気圧に近い範囲)の測定に用いられ、ポンプの吸引状態や装置の立ち上げ確認などで活躍します。
冷陰極電離真空計
冷陰極電離真空計は、放電によってガス分子を電離し、その電流から圧力を求める真空計です。
内部で高電圧をかけ、電場と磁場を組み合わせて電子を加速させることで、気体分子を電離させます。
フィラメントを使わないため、汚染や焼損に強く、長寿命でメンテナンスも少ないのが特長です。
主に高真空(10⁻²~10⁻⁶Pa)領域の測定に使用され、研究装置や真空成膜装置などで幅広く利用されています。
熱陰極電離真空計
熱陰極電離真空計は、加熱したフィラメントから放出される電子でガス分子を電離し、その電流から圧力を測定する真空計です。
高感度で超高真空(10⁻³~10⁻⁷Pa)の測定が可能なため、研究用途や半導体製造装置などで広く使われています。
フィラメントが高温になるため汚染やガスの影響を受けやすく、取り扱いには注意が必要ですが、適切な運転と定期的なメンテナンスを行うことで、安定した測定が可能になるでしょう。
マクラウド真空計
マクラウド真空計は、気体を圧縮して体積変化から圧力を求める真空計です。
液体(水銀など)を使って密閉空間の気体を圧縮し、その体積変化を観察することで圧力を算出します。
主に他の真空計の校正基準として利用されますが、操作に手間がかかり、応答速度も遅いため、実験や研究での基準測定用として使われることが多いです。
真空計の選び方のポイント
測定する圧力範囲を明確にする
真空計を選ぶ際は、まず測定したい圧力範囲を明確にすることが大切です。
真空計には種類があり、粗真空・中真空・高真空など、それぞれ対応する範囲が異なります。
目的とする圧力領域を把握しておくことで、正確かつ安定した測定が可能になり、無駄のない機器選定に繋がるでしょう。
使用するガス環境を把握する
真空計の種類によっては、測定するガスの種類や性質によって精度が変わる場合があります。
たとえば、ピラニ真空計は熱伝導率の違いに影響を受けやすく、ガスの種類ごとに補正が必要です。
一方、電離真空計では反応性ガスや汚染性ガスを使うとセンサーの劣化を早めることもあります。
そのため、使用環境にどのようなガスが含まれるかを事前に把握し、適したタイプの真空計を選ぶことが重要です。
求める性能を決める
真空計を選ぶ際は、どの程度の精度や応答速度が必要かを明確にしましょう。
たとえば、研究開発や品質管理では高い正確度と再現性が求められますが、装置の状態確認など用途によっては簡易的な測定で十分な場合もあります。
また、圧力変化をすぐに把握したい場面では応答速度の速いタイプが便利です。
使用目的に応じた性能を見極めることで、過剰なコストを避けつつ効率的な運用ができます。
設置環境を確認する
真空計は設置環境によって性能や耐久性が大きく左右されます。
高温や振動の多い場所では、耐久性や耐熱性に優れたモデルを選ぶことが重要です。
また、温度変化や電磁ノイズによって測定誤差が生じることもあるため、温度が安定した場所に設置し、必要に応じてシールド処理された機器を選ぶとよいでしょう。
設置環境に合った真空計を選ぶことで、長期的に安定した測定が可能になります。
真空計は定期的な校正が必要
真空計は長期間使い続けるうちに、センサーの劣化や汚れによって測定値にズレが生じることがあります。
そのため、定期的な校正(キャリブレーション)が欠かせません。
校正とは、基準となる正確な圧力値と比較し、真空計の表示を正しい値に合わせる作業のことです。
年に1回程度を目安に実施することで、常に正確なデータを維持でき、装置の信頼性や安全性を保つことに繋がります。
まとめ
真空計を選ぶ際は、まず「何を測りたいのか」を明確にすることが重要です。
圧力範囲やガスの種類、設置環境によって最適な機種は異なります。
目的に合った真空計を選定し、正しい扱いと定期校正を行えば、信頼性の高い測定データを安定して得ることができるでしょう。
【参考文献】











