熱陰極電離真空計とは?原理や特徴・注意点までわかりやすく解説

熱陰極電離真空計とは?原理や特徴・注意点までわかりやすく解説

真空技術の世界で広く使われている「熱陰極電離真空計」は、極めて高い真空度を正確に測定できる装置です。

真空中のわずかなガス分子を検出するために、フィラメントを加熱して電子を放出し、ガスを電離させて圧力を算出するという独自の原理を持っています。

本記事では、熱陰極電離真空計の仕組みや構造、測定のしくみをわかりやすく解説。

さらに、使用時の注意点も紹介します。

「そもそもどんな原理で圧力を測っているのか?」という疑問から、実際の運用で気をつけるべき点まで、これ一つで基礎から理解できる内容です。

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熱陰極電離真空計(ホットカソードゲージ)の原理と仕組み

熱陰極で電子を放出し、ガス分子を電離させて圧力を測る

熱陰極電離真空計では、フィラメント(熱陰極)を加熱して電子を放出し、その電子を加速してガス分子に衝突させます。

衝突によってガス分子が電離し、生成されたイオンが集め電極に引き寄せられて電流が流れます。この電流の大きさが真空中のガス分子の量、つまり圧力に対応しています。

目に見えないほど少ないガス分子を「電気信号」に変えて測定する仕組みです。

電流値と圧力の関係

熱陰極電離真空計では、電離によって発生したイオンの数が真空中のガス分子の量に比例します。

圧力が高い(真空度が低い)ほどガス分子が多く、電離によって流れるイオン電流(集電電流)も大きくなり、逆に圧力が低い(真空度が高い)ほど電流は小さくなります。

この電流値と圧力の比例関係を利用して、真空度を数値として読み取るのです。

高真空でも測定できる理由

熱陰極電離真空計は、電子を利用してガス分子を電離させる仕組みのため、わずかな分子しか存在しない高真空の状態でも測定が可能です。

加熱したフィラメントから放出された電子が加速され、広い範囲を飛び回ることで、ごく少量のガス分子にも衝突して電離を起こします。

その結果、極めて小さな電流変化を検出でき、10⁻⁸Paといった超高真空領域でも正確な圧力測定が行えるのです。

熱陰極電離真空計の測定範囲

熱陰極電離真空計(ホットカソードゲージ)では、およそ10⁻³〜10⁻⁷Paの高真空領域を精度高く測定することができます。

一般的なピラニ真空計などでは測定が難しい、ガス分子がほとんど存在しないレベルの真空でも、電離によって発生する微小な電流を検出して圧力を算出します。

特に、半導体製造装置や電子顕微鏡、真空蒸着装置などの分野で幅広く利用されています。

ただし、10⁻³Paより高い圧力(低真空)ではフィラメントが過熱し損傷するおそれがあるため、測定範囲を超えないよう注意が必要です。

熱陰極電離真空計を扱う際の注意点

熱陰極電離真空計は、非常に高い精度で真空度を測定できる優れた装置ですが、その性能を十分に発揮するには正しい扱いが欠かせません。

内部構造が繊細なため、わずかな誤操作や汚染でも測定結果に影響を及ぼすことがあります。

ここでは、装置を安全かつ安定的に使用するために知っておきたい注意点を紹介します。

高精度だが取り扱いに注意が必要

熱陰極電離真空計は、非常に高い精度で真空度を測定できる一方で、扱いには注意が必要です。

内部のフィラメントを加熱して電子を放出するため、誤った操作や急激な圧力変化があるとフィラメントが焼損することがあります。

また、使用中の過電流や突入電流にも弱く、繊細な構造を持つため慎重な取り扱いが求められます。

正しい操作手順と十分な予熱・冷却時間を守ることが、安定した測定精度を保つポイントです。

汚染やガス放出の影響を受けやすい

熱陰極電離真空計は、フィラメントを加熱して電子を放出する構造のため、内部が汚れると正確な測定ができなくなることがあります。

ガスや油蒸気などが付着すると、電極が汚染されて電流値が変化し、誤差の原因となります。

また、長期間の使用で電極からガスが放出される「ガス放出現象」も起こりやすく、真空度を低下させてしまいます。

安定した測定を保つためには、定期的なクリーンアップや適切なベーキング処理を行うことが重要です。

まとめ

熱陰極電離真空計は、高真空を高精度に測定できる優れた装置です。

その一方で、フィラメントの焼損や汚染による誤差など、繊細な構造ゆえの注意点もあります。

原理や仕組みを正しく理解し、適切なメンテナンスを行うことで、安定した測定を保つことが可能になります。

装置の特性を知り、真空計の性能を最大限に引き出しましょう。

【参考文献】

熱陰極電離真空計

高安定性と長寿命を実現した熱陰極電離真空計 「G-TRAN シリーズ ST2」*1

種々の真空計とそれぞれの計測原理

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