
自社の半導体製造工程において、最適な真空装置が分からず悩んでいませんか?
専門用語が多く、真空技術がなぜ半導体製造に必要なのか、具体的な関係性がイメージしづらいですよね。
実は、最先端の半導体の性能を決定づけているのは「真空技術」であり、その役割を理解することが最適な装置選定への近道です。
しかし、自身の目的に合わない装置を選んでしまうと、品質低下や不要なコスト増加に繋がる恐れがあります。
そこで今回は、半導体製造に真空が不可欠な理由から、主要工程ごとの役割、真空装置・ポンプ選びポイントまで網羅的に解説します。
この記事を読めば、真空技術と半導体製造の繋がりが明確に理解でき、ご自身の工程に最適な装置候補を見つけられるはずです。
ぜひ最後までご覧ください。
北海道北斗市に拠点を置く株式会社菅製作所は、独自の技術力を駆使し、幅広い分野で皆様の挑戦をサポートしています。スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。どのような研究開発でも一度ご相談ください。菅製作所が独自に培った技術力で皆様の創造をアシストします。
半導体製造に「真空」が不可欠な3つの理由
半導体デバイスの性能は、製造環境の清浄度に大きく左右されます。
なぜなら、目に見えない微細なゴミや不要なガス分子が、回路の性能を著しく低下させるからです。
ここでは、半導体製造の現場でなぜ「真空」が重要なのかについて解説します。
異物を極限まで排除し、クリーンな環境を保つため
半導体製造では、製品不良を防ぐためにクリーンな環境が求められます。
その最大の障害となるのが、空気中に浮遊する微細なゴミ(パーティクル)やガス分子です。
ナノメートル単位で作り込まれる半導体の回路にとって、これらは巨大な障害物となります。
パーティクルがウェハーに付着すれば、回路のショートや断線といった致命的な欠陥を引き起こし、歩留まりを大きく悪化させてしまうのです。
真空装置でプロセス空間の気体分子を排気することで、これらの異物を極限まで排除します。
これにより、清浄で安定したプロセス環境が実現し、半導体の品質と信頼性を高めています。
プラズマを安定生成させ、微細加工の再現性を高めるため
半導体の微細加工に欠かせない技術が「プラズマ」の利用です。
プラズマとは、気体がイオンと電子に分かれた状態を指し、エッチングや成膜プロセスで活用されます。
プラズマは、圧力が低い真空状態でなければ安定して生成できません。
大気圧下では、多すぎる気体分子がプラズマの発生を阻害してしまうからです。
真空装置によってチャンバー内の圧力を精密に制御することで、初めて狙い通りの特性を持つプラズマを生み出すことができます。
ガスの種類や流量をコントロールし、再現性の高い微細加工を実現するために、真空環境は不可欠な土台となっているのです。
物質の沸点を下げ、低温での高品質な成膜を可能にするため
水が富士山の山頂で低い温度で沸騰するように、物質は圧力が下がると低い温度で蒸発します。
この原理は、半導体製造における成膜プロセスで巧みに利用されています。
半導体デバイスは、熱に弱い材料で構成される層を多く含んでいます。
そのため、高温でのプロセスはデバイスに熱ダメージを与え、性能劣化を招くリスクがあります。
真空状態を作り出すことで、成膜材料の沸点を下げ、より低い温度で蒸発させることが可能になります。
これにより、デバイスへの熱負荷を最小限に抑えながら、高品質で均一な薄膜を形成できるのです。
デリケートな半導体を熱から守りつつ、性能を引き出すためには真空技術が欠かせません。
【工程別】半導体製造における真空装置の役割と目的
半導体は、成膜、エッチング、イオン注入といった多数の工程を繰り返すことで製造され、これらの多くが真空環境下で行われています。
それは、各工程で求められる目的や成し遂げたい加工が、真空でなければ実現できないからです。
ここでは、主要な半導体製造の工程を取り上げ、それぞれにおける真空装置の具体的な役割と目的を解説します。
成膜工程(CVD・スパッタリング):高品質な薄膜を均一に形成する
成膜工程では、ウェハー上に絶縁膜や金属膜などを均一に積層するために真空環境が必須です。
大気中には様々なガス分子が存在し、これらが不純物として混入すると、膜の品質や電気的特性が著しく劣化してしまいます。
真空装置でプロセス空間から不要な分子を排出し、成膜に必要なガスや粒子だけを供給することで、高純度な薄膜が形成できます。
例えばスパッタリングでは、ターゲットから叩き出された粒子がウェハーに届くまで、何にも衝突しない直進性を確保します。
これにより、設計通りの特性を持つ高品質な膜を作り込むことができるのです。
エッチング工程:反応ガスを制御し、微細な回路パターンを正確に刻む
エッチング工程は、プラズマを用いて回路パターン以外の不要な膜を削り取る作業です。
この微細加工を実現するために、真空環境が重要な役割を担います。
真空チャンバー内で特定のガスに高エネルギーを加えることで、反応性の高いプラズマを生成します。
もし大気圧下であれば、多すぎる気体分子がプラズマの安定生成を妨げ、狙った化学反応を起こせません。
真空状態にすることで、プラズマ中のイオンをウェハーに対して垂直に加速させ、ミクロンやナノの単位で回路をまっすぐ下に彫り進めることができます。
真空技術が、高精細な回路パターンを正確に刻むための土台となっているのです。
イオン注入工程:イオンビームの直進性を確保し、不純物を精密に打ち込む
イオン注入は、半導体に特定の電気的特性を持たせるため、目的の元素(不純物)をイオン化し、加速してウェハーに打ち込む工程です。
この工程は、イオンビームの正確なコントロールが求められるため、高真空環境下で行われます。
もしチャンバー内に空気などの残留ガスがあれば、高速で飛ぶイオンがそれらと衝突し、軌道がずれたりエネルギーを失ったりします。
それでは、狙った深さに正確な量の不純物を打ち込めません。高真空状態を保つことで、イオンが何にも邪魔されずにウェハーまで直進することができるのです。
これにより、半導体の性能を決定づける精密な不純物ドーピングが実現します。
洗浄・乾燥工程:ウェハー表面の汚染や自然酸化膜の発生を防止する
半導体製造では、各工程間で付着したパーティクルなどを除去するため、繰り返し洗浄が行われます。
特に洗浄後の乾燥工程で、真空技術が重要な役割を果たします。
洗浄したウェハーを大気中で乾燥させると、空気中の酸素や水分と反応して意図しない自然酸化膜が表面に形成されたり、微粒子が再付着したりするリスクがあります。
また、液体の表面張力で微細な回路パターンが倒壊する恐れもありますが、真空乾燥では、これらの問題を解決できます。
真空中で水分を低温蒸発させることで、パターンの倒壊を防ぎ、汚染や自然酸化膜の発生を抑制し、ウェハーの清浄度を保つのです。
真空装置・ポンプを選ぶ際に考慮すべき4つのポイント
半導体製造の品質は、真空装置、特に真空ポンプの選定に大きく左右されます。
しかし、ポンプには多種多様な種類があり、ご自身の工程に最適な一台を見つけるのは難しいかもしれません。
オーバースペックなものを選べば無駄なコストがかかり、逆にスペックが不足していれば求める品質を担保できません。
ここでは、自社の目的やプロセスに合った真空装置・ポンプを選ぶ上で、必ず考慮すべき4つの重要なポイントを解説します。
これらのポイントを押さえることで、より的確な機材選定が可能になるでしょう。
必要な真空度
まず最も重要なのが、ご自身のプロセスで「どれくらいの真空度が必要か」を明確にすることです。
真空度は、低真空から超高真空まで幅広い領域に分かれており、プロセスによって要求されるレベルが異なります。
例えば、ロードロック室のような単純なガス置換であれば低〜中真空で十分ですが、スパッタリングやCVDでは高真空が、EUV露光やイオン注入などではさらに清浄度が求められる超高真空が必要です。
各工程の目的を達成するために必要な真空度を把握し、その領域を効率よく達成できるポンプ(例えば、ドライポンプ+ターボ分子ポンプなど)の組み合わせを選定することが第一歩となります。
排気速度
排気速度は、一定時間内にどれだけの体積の気体を排出できるかを示す能力で、「L/s」などの単位で表されます。
この数値が大きいほど、より速く真空状態に到達させることができます。
ただし、単純に速ければ良いというわけではありません。
チャンバーの容積、プロセス中に放出されるガスの量(アウトガス)、そして目標とする真空度までの到達時間(タクトタイム)のバランスを考慮する必要があります。
例えば、大きなチャンバーを素早く排気したい場合や、プロセスガスを大量に流すエッチング工程などでは、高い排気速度を持つポンプが求められます。
クリーンさ
半導体製造において、真空環境の「クリーンさ」を維持できるかどうかが極めて重要な要素です。
特に注意すべきは、真空ポンプからの油蒸気の逆流(オイルバック)による汚染です。
油回転ポンプなどのウェットポンプは、潤滑油が蒸気となって真空チャンバー内に侵入し、ウェハー表面を汚染するリスクがあります。
菅製作所では、ロータリーポンプ使用時におけるオイルバック問題を根本的に解決する独自の電磁ロータリーポンプバルブを提供しています。
長年の真空装置開発で培ったノウハウを持つ私たちが、自信をもって提供する一台です。
詳細についてはぜひ下記のリンクをご覧ください。
電磁ロータリーポンプバルブコスト
真空ポンプの選定では、コストも重要です。
ただし、見るべきは装置の購入費用である「イニシャルコスト」だけではありません。
長期間にわたって使用する生産設備だからこそ、消費電力やメンテナンス費用、消耗品の交換費用といった「ランニングコスト」も合わせた「トータルコスト」で評価することが不可欠です。
例えば、イニシャルコストが安価でも、消費電力が大きくメンテナンス頻度が高いポンプは、結果的に高くつく可能性があります。
省エネ性能や耐久性、メンテナンスのしやすさなども含めて、長期的な視点でコストパフォーマンスを判断しましょう。
まとめ
本記事では、半導体製造における真空の重要性と、装置選定のポイントについて解説しました。
この記事で得た知識が、貴社の製品の品質向上や生産性改善につながる、最適な真空装置選びの一助となれば幸いです。
菅製作所は、長年の実績と信頼に基づき、研究開発の現場で新しい知見を生み出す高品質な真空装置を提供しています。高度な成膜・真空技術に関するご質問やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。