半導体製造における「イオン注入」とは?原理や目的・プロセスまで解説

半導体製造における「イオン注入」とは?原理や目的・プロセスまで解説

半導体の性能を決める“心臓部”ともいえる工程が、ウエハー内部へ不純物(ドーパント)を精密に注入する「イオン注入」です。

トランジスタのしきい値電圧やスイッチング速度など、デバイスの動作を左右する重要な特性は、この工程の精度によって大きく変わります。

イオンを電場で加速し、狙った深さ・位置にピンポイントで打ち込む高度なプロセスにより、微細化が進む最新デバイスでも均一で再現性の高い電気特性を実現できます。

本記事では、イオン注入の仕組み、目的、装置の原理から工程の流れ、メリットまでわかりやすく解説します。

半導体技術に関心をお持ちの皆様に、基礎から学べる情報をお届けしたいという思いから、本連載を開始いたしました。

「これから半導体について学びたい」「技術の背景を理解したい」とお考えの方に向けて、できる限り平易で役立つ内容を発信してまいります。

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本連載が、半導体に関する疑問の解消や、さらなる理解への一助となることを願っております。

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イオン注入とは?

 イオン注入とは、電場で加速したイオンをウエハー表面に打ち込み、材料内部へ所定量の不純物(ドーパント)を精密に注入する技術です。

イオンはエネルギー量に応じて一定の深さまで進み、そこで停止します。

この仕組みにより、濃度・深さ・位置を高精度に制御でき、微細化が進む最新デバイスでも均一で再現性の高いドーピングが可能になります。

イオン注入装置の基本原理

イオン注入装置は、必要な種類のイオンを作り、選び、狙った場所へ打ち込むための仕組みを備えています。

  1. イオン源で原料ガスに電磁界をかけ、プラズマ化させてドーパントとなるイオンを生成する。
  2. 質量分析器で目的のイオンだけを選別し、不要な成分を取り除く。
  3. 加速管で高電圧をかけてイオンにエネルギーを与え、偏向器や走査器で向きと位置を調整しながらウエハーへ注入する。

これにより、必要な元素を狙った深さ・領域へ正確に届けることが可能になります。

イオン注入の目的と半導体製造における役割

イオン注入の目的は、ウエハー内部に不純物(ドーパント)を必要な量と深さで正確に注入し、半導体の電気的特性を自由に調整することにあります。

これにより、デバイスの動作に欠かせないn型・p型領域を形成でき、トランジスタのスイッチング性能・しきい電圧を最適な状態に仕上げることが可能です。

さらに、電圧で注入の深さを細かく制御し、イオン電流の計測によって注入量を定量的に管理できるため、微細化が進む現代の集積回路(IC)製造では欠かせない高精度なドーピング技術といえるでしょう。

イオン注入工程の流れ

イオン注入は、イオンの生成から選別、加速、走査、注入、そして最後の熱処理まで、いくつもの精密な工程によって成り立っています。

これらの工程により、狙った濃度・深さ・位置への高品質なドーピングが可能になります。ここでは、その一連の流れを順を追ってわかりやすく解説します。

イオン源

イオン注入は、まずイオン源で原料ガスをプラズマ化し、ドーパントとなるイオンを取り出すところから始まります。

電磁界を加えて原子を電離させ、注入に必要な荷電粒子を安定して生成する工程です。

不純物イオンの分離

生成されたイオンはそのままでは混在しているため、質量分析器で必要な種類だけを選別します。

目的のイオンのみを通過させることで、意図しない不純物の混入を防ぎ、ドーピングの精度を高めます。

イオンビームの加速

選別されたイオンは、加速管で高電圧をかけられ、ウエハー内部へ届くためのエネルギーを与えられます。

加速電圧を調整することで、イオンが到達する深さを細かく制御できます。

イオンビームの走査

加速されたイオンビームは、偏向器や走査器によって向きや位置を制御されます。

これにより、ウエハー表面を均一に照射でき、ムラのないドーピングが可能になります。

イオン注入

走査されたイオンビームがウエハーに照射され、内部にイオンが打ち込まれます。

イオンはエネルギー量に応じて内部で停止し、狙った領域に正確にドーパントを配置できます。

熱処理(活性化アニール)で結晶を回復

注入後のウエハーは結晶が乱れているため、アニールと呼ばれる熱処理で構造を回復します。

同時に、注入されたドーパントを電気的に活性化し、トランジスタとして機能させる重要な工程です。

イオン注入の特徴・メリット

イオン注入は、ドーピングの精度と再現性を大きく高められる点が最大の特徴です。

深さや注入量、位置の制御だけでなく、不要な不純物を取り除けるため、高品質な半導体特性を実現できます。

ここからは、代表的なメリットを具体的に見ていきましょう。

イオン注入の深さを制御できる

イオン注入では、加速電圧を調整することでイオンが到達する深さを精密にコントロールできます。

高い電圧ほど深く、低い電圧ほど浅い位置で停止するため、必要な層だけにピンポイントで不純物を注入可能です。

これにより、微細化が進むデバイスでも狙った領域に最適なドーピングを施せます。

注入量を均一に測れる

イオン注入では、照射中のイオン電流をリアルタイムで計測することで、注入量(ドーズ)を正確に把握できます。

電流値と照射時間から注入量を定量的に算出できるため、ウエハー全体で均一なドーピングが可能になります。

これにより、デバイスごとの性能ばらつきを抑え、高い再現性がある点が大きなメリットです。

狙った位置へのドーピングが可能

イオン注入では、イオンビームの方向や走査範囲を細かく制御できるため、必要な位置だけにドーパントを正確に注入できます。

マスクパターンと組み合わせることで、微細な領域にもピンポイントにドーピングでき、不要な部分への影響を最小限に抑えられます。

これにより、設計通りの電気特性を安定して実現することが可能です。

不要な物質を除去し、高純度な注入ができる

イオン注入では、質量分析器によって目的のイオンだけを選別し、不要な不純物を取り除くことができます。

注入前に高純度なイオンビームへ精製されるため、意図しない元素が混ざるリスクが低く、安定した電気特性を得られます。

結果として、デバイス性能のばらつきを抑えられ、高信頼なドーピングが可能です。

まとめ 

イオン注入は、半導体デバイスの性能を左右する電気特性を、高精度にコントロールできる重要なプロセスです。

一連の工程により、狙った深さと位置へ均一で再現性の高いドーピングが可能になります。

微細化が進む現代の製造現場で、イオン注入が欠かせない理由と仕組みを理解することで、半導体技術の核心がより鮮明に見えてくるはずです。

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この記事を書いた人

株式会社菅製作所

北海道北斗市で、スパッタ装置やALD装置等の成膜装置や光放出電子顕微鏡などの真空装置、放電プラズマ焼結(SPS)による材料合成装置、漁船向け船舶用機器を製造・販売しています。
また、汎用マイコン・汎用メモリへの書込みサービスも行っています。

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