
半導体の微細化が進む今、回路の形状を精密に作るために欠かせないのがエッチング工程です。
ウエハーに成膜された材料を、必要な部分だけ正確に残し、不要な部分を削り取るこのプロセスは、デバイス性能を左右する重要なステップです。
本記事では、エッチングの基礎から、2つの手法による違い、等方性・異方性の考え方までわかりやすく解説します。
エッチング工程の全体像を押さえたい方や、技術選定のポイントを知りたい方にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までお読みいただき、理解を深めていきましょう。
半導体技術に関心をお持ちの皆様に、基礎から学べる情報をお届けしたいという思いから、本連載を開始いたしました。
「これから半導体について学びたい」「技術の背景を理解したい」とお考えの方に向けて、できる限り平易で役立つ内容を発信してまいります。
当社「菅製作所」は、研究開発用途の真空装置を製造・販売しております。
現場で培ってきた知見をもとに、皆様の学びに少しでも貢献できれば幸いです。
本連載が、半導体に関する疑問の解消や、さらなる理解への一助となることを願っております。
長年の経験と独自の技術で、大学や研究機関での導入実績も多数。
研究目的に応じたカスタマイズや、導入前のテスト成膜も可能です。
装置のご検討やその他ご相談は、ぜひ当社までお問い合わせください。
お問合せはこちら目次
半導体製造に欠かせない「エッチング」とは
エッチングとは、ウエハー全面に成膜された膜を、露光で描いたパターンに合わせて必要な部分だけ残し、不要な部分を削り取る工程を指します。
微細な配線やトランジスタの形状を正確に作り込むために欠かせないプロセスであり、半導体製造の中でも特に精度が求められる工程です。
近年はデバイスの微細化や材料の多様化が進み、膜の種類・厚み・構造に応じたエッチング方式の選定がますます重要になっています。
適切な方法を選ぶことで、パターン形状の再現性や生産歩留まりを大きく左右するため、製造技術の要ともいえるでしょう。
エッチング手法2つの特徴
半導体製造で用いられるエッチングには、薬液で膜を溶かす「ウェットエッチング」と、プラズマを使って精密に削る「ドライエッチング」の2種類があります。
目的によって適した手法は異なるため、それぞれの特徴を理解して選ぶことが重要です。
ウェットエッチング
ウェットエッチングは、薬液(酸・アルカリなど)を用いて不要な膜を化学的に溶かして除去する方法です。
装置構成がシンプルで処理速度も速く、古くから使用されているエッチング方式です。
一方で、微細加工では制御の難しさもあり、用途に応じた選定が求められます。
ウェットエッチングのメリット
- 装置の構成がシンプル
- 導入コスト・ランニングコストが比較的低い
- 処理速度が速く、生産性を確保しやすい
ウェットエッチングのデメリット
- 膜が横方向にも溶けるため、微細形状の精度が出にくい
- 高アスペクト比の加工が難しい
ドライエッチング
ドライエッチングは、プラズマなどの反応性ガスを用いて膜を除去する方法で、化学反応と物理的な衝撃を組み合わせて加工します。
ウェット方式に比べて加工精度が高く、微細化が進む半導体製造において主流となっているエッチング技術です。
ドライエッチングのメリット
- 垂直方向に深く加工できるため、微細なパターンでも形状を正確に再現しやすい
- 加工のばらつきが少なく精度が高いため、最新デバイスの加工にも対応しやすい
ドライエッチングのデメリット
- 装置が高価で、導入・維持コストが大きい
- 装置の構造が複雑で、最適化に高度な技術が必要
半導体製造におけるエッチング工程の流れ
エッチング工程は、ウエハーに不要な膜を正確に取り除くための一連のプロセスです。
前後の処理と密接に関わっており、各工程の精度が最終的なパターン形状や歩留まりを左右します。
ここでは、エッチングがどのような流れで行われるのか、ステップごとに解説します。
ウエハーの洗浄
エッチング前に、ウエハー表面の微細なゴミや有機物、金属汚染を除去します。
洗浄が不十分だと、膜の密着不良やパターン欠陥につながるため、工程全体の品質を左右する重要な前処理です。
フォトレジストの塗布・露光
ウエハーにフォトレジストを均一に塗布し、回路パターンを露光で転写します。
必要部分だけフォトレジストを残すことで、エッチング時に削る場所と保護する場所を明確にする役割があります。
エッチング実行
露光で形成されたパターンに従い、不要部分の膜をウェットエッチングまたはドライエッチングで除去します。
方式により加工精度や形状制御性が異なるため、材料や目的に応じた適切な手法が選ばれます。
フォトレジスト除去・ウエハーの洗浄
エッチング後、残ったフォトレジストを完全に除去し、ウエハー表面を再度洗浄します。
レジスト残渣があると次工程に影響するため、確実な除去と洗浄が品質確保のポイントです。
評価
加工されたパターンが設計どおり再現されているか、寸法や形状、欠陥の有無を検査します。
評価により工程の安定性や歩留まりを確認し、必要に応じて条件を微調整します。
「等方性エッチング」と「異方性エッチング」の違い
エッチング方式を選ぶ際には、「等方性」と「異方性」という二つの概念を理解しておくことが欠かせません。
等方性はあらゆる方向に均一に削れる状態、異方性は特定方向に優先して加工が進む状態を指します。
微細化が進む現在では、不要な広がりを抑えて精密に加工できる異方性エッチングが重要性を高めています。
等方性エッチング
等方性エッチングは、薬液による化学反応を使って膜を均一に溶かす方式で、上下左右すべての方向に同じ速度でエッチングが進む点が特徴です。
そのため加工面が丸く削れやすく、微細パターンのエッジがやや広がる傾向があります。
一方で、大面積の膜を一度に処理しやすく、装置構成もシンプルなためコストパフォーマンスに優れています。
精密な形状制御が不要な工程では効率的に活用される手法です。
異方性エッチング
異方性エッチングは、垂直方向と水平方向でエッチング速度が異なる方式で、特に垂直方向(深さ)を優先的に削ることができる点が特徴です。
プラズマを用いたドライエッチングで実現されることが多く、微細パターンの側壁をまっすぐに形成できるため、最新デバイスに求められる高アスペクト比加工に適しています。
形状の再現性や寸法精度が高く、微細化が進む半導体製造には欠かせない技術となっています。
まとめ
半導体製造におけるエッチングは、微細なパターンを正確に作るための重要な工程です。
ウェットエッチング・ドライエッチングの特徴や、等方性・異方性の違いを理解することで、より最適なプロセス設計が可能になります。
工程の前後処理まで含めて正しく制御することが、歩留まり向上と高性能デバイス実現の鍵となります。
本記事で解説したポイントを押さえ、製造技術の精度向上につなげていきましょう。
長年の経験と独自の技術で、大学や研究機関での導入実績も多数。
研究目的に応じたカスタマイズや、導入前のテスト成膜も可能です。
装置のご検討やその他ご相談は、ぜひ当社までお問い合わせください。










